2020年はスポーツ界の話題もひたすら新型コロナウイルスの余波に尽きるだろう。おそらく学校の教科書にそれとして記載される出来事だろうが、このランキングは「独断と偏見」ゆえ、その話題は極力排除したい。よって新型コロナ余波により東京五輪が延期され、ひょっとしたら中止か…という誰でも思いつきそうな話題には触れない。あらかじめご理解のほどを。
では、例年どおり次点から。
目次
次点 東京マラソン、エリート部門のみで開催 市民ランナー参加を取り止め
東京マラソン初代広報ディレクターとしては非常に気をもむニュースだった。新型コロナウイルス蔓延を予見し、3月1日に行われた同大会は市民ランナーの参加を中止、エリートランナーだけのレースとして開催された。
旧知のレースディレクターである早野忠昭氏がそれほど大胆な判断に関与するとは思われないので東京都からの指示による決定と推察するが、直前でエリートランナーのみに絞っての開催は英断だった。
本件については、相変わらずSNSなどを中心に「市民ランナーを走らせろ」だの「参加費返納せずとはけしからん」など、くだらない延髄反応しかしない烏合の衆の非難が相次いだ。しかし、年末の今振り返っても極めて正しい判断だったと再評価したい。
その後、さらなる新型コロナウイルスの蔓延により非難の声は雲散。烏合の衆など所詮何の責任も追わないゆえ、無視するに限る。
なお、レースでは大迫傑が、自身2018年のシカゴマラソンで記録した2時間5分50秒を21秒更新、2時間5分29秒の日本新記録で東京五輪マラソン代表の座を確実にした。
財団は2021年大会を通常開催とし、日程を2021年10月17日に設定。2020年大会で出走権を持つ市民ランナーは、本大会への優先的出走権を持つ。機会ある方は、ぜひ「東京がひとつになる日」を楽しんでもらいたい。
次点 スーパーラグビー、サンウルブズが解散
国際ラグビー・スーパーリーグに2016年シーズンから参戦していた日本のサンウルブズが、今シーズンを限りにリーグから除外され6月1日をもってチーム解散となった。昨年2月、国際統括団体ワールドラグビーとのドバイでの会議に出席した際、日本関係者が「まずい」としきりに困惑していた事実は、記憶に新しい。
サンウルブズは5年前の参戦以来、目覚ましい戦績を挙げてきたわけではない。しかし、2019年W杯での日本代表躍進の陰には、メンバーが同国際リーグでもまれ続けた経験が確実に活かされていた。極東の島国にとって、英国連邦を中心とした国際団体における地位向上の必要性を認識させる出来事だった。
日本ラグビー界の資産ともなっただけに、解散はあまりにも残念。
次点 コートの妖精、マリア・シャラポワが現役を引退
WTAツアー・シングルスで36勝を挙げた元世界ランキング1位マリア・シャラポワが2月26日、現役を引退した。ベラルーシ人の両親の下、ロシアで生まれたシャラポワはロシア選手として活躍、グランドスラムで5勝。その容貌から「コートの妖精」と形容されモデルやファッションアイコンなどコート内外で、その活動が注目された。
肩の故障に苦しみ、2016年にはドーピング問題で出場停止にも追い込まれた。復帰後はやはり故障により精彩に欠き、思うような成績も残せず、引退を余儀なくされた。
長身から繰り出される強烈なサービスとパワフルなストロークで一時代を築き上げただけに、テニスファンとしては寂しい限り。私個人としても、ニューヨーク在住時代は毎年観戦していた全米オープンも、今のところ2006年の彼女の優勝試合が最後の観戦となっているだけに非常に感慨深い。ダスビダーニャ、マリア。
次点 ボクシング界のレジェンド、マイク・タイソンがエキシビジョンマッチで復帰

(C)Getty Images
1980年代に「最強」と謳われた元WBA・WBC・IBF世界ヘビー級統一王者マイク・タイソンが11月28日、元4階級王者ロイ・ジョーンズ・ジュニアとのエキシビションマッチでリングに復帰。2分8ラウンド制という変則ながら実戦を披露、往年を彷彿とさせる動きでオールドファンを歓喜させた。試合結果はドローとなったが、各種メディアはタイソンの判定有利との見解を掲載。今後の活動に期待を抱かせた。
タイソンの全盛期を知らないファンは、動画サービスなどでぜひKOシーンのオムニバスを確認してもらいたいもの。タイソンの今後にも注目したい。
「次点」としつつも4つも選定してしまい恐縮。
では、いよいよ2020年の10大ニュースへ。
10位 月見草、三冠王、名将、野村克也さん死去
南海ホークスで戦後初の三冠王を獲得、選手兼監督としても同球団をリーグ優勝に導き、専任監督としてもヤクルトスワローズで3度の日本一を達成した野村克也さんが2月11日に亡くなった。84歳だった。
野村さんの元気時代、プロ野球の時代は「セ・リーグ」。巨人、長嶋茂雄、王貞治ばかりにスポットが当たる裏で三冠王や兼任監督など実績を挙げ、自身を「月見草」と称した。通算出場試合数こそは谷繁元信に抜かれるまで1位、最多打席、最多打数ともにプロ野球記録を保持している。イチローの記録を除外し、NPB通算安打数は張本勲の3085本に続く2901本、通算本塁打は王貞治の868本に次ぐ657本。名選手でもあり名監督でもあった。
ヤクルトファンとして、あらためてご冥福をお祈りしたい。
第9位 東京五輪のホープ、桃田賢斗、池江璃花子の復活

(C)Getty Images
男子バドミントン日本代表、世界ランク1位の桃田賢斗(NTT東日本)らを乗せたワゴン車が1月13日、前を走っていた大型ダンプトラックに衝突。ワゴン車の運転手は死亡。桃田らワゴン車に乗っていた全員が負傷した。
桃田の命に別状はなかったがその後、目の異常を訴え手術に至り、金メダル最有力候補とされながら東京五輪出場さえ危ぶまれた。桃田は2016年、リオ五輪出場を確実視されながら、違法賭博問題により辞退を余儀なくされ、捲土重来という時期だっただけに関係者を含め、ファン心配させた。「幸い」としてよいだろうか、東京五輪は延期になり、かつ本人は順調に回復・復調。今月の全日本選手権でも健在ぶりを示しただけに、本人もほっとしたことだろう。
なお、桃田は昨年達成した「バドミントン男子シングルス年間最多勝利数11勝」が11月18日、ギネス世界記録に認定された。
ぜひ2021年、東京五輪での活躍をこの目にしたいもの。
2019年2月に白血病を発症、やはり東京五輪のホープと目されていた競泳のその後復帰を目指していた池江璃花子が8月29日、東京辰巳国際水泳場で行われた東京都特別大会の50メートル女子自由形5組に出場し26秒32をマークして同組1位に入った。池江は日本学生選手権個人種目参加標準記録を突破して594日ぶりの復帰戦を飾った。
池江は2024年開催を予定しているパリ五輪を目標に据えていると公言しているだけに、東京五輪への出場はないと想定されるものの、競泳界のアイドルとも言える存在だったため、その病状は国民の関心事だったとしてよいだろう。
何よりもその元気な姿を見せてくれたという事実が、コロナ禍で暗い世相を明るく照らした形となった。
第8位 コービー、マラドーナ、世界的レジェンドの急逝

(C)Getty Images
目を覚まし、寝ぼけ眼で英文の短信に触れた際は、「どうも、寝ぼけていて英文がよく理解できない」それとも「何かの誤報なのか」、本当に何度も目をこすった事件だった。
NBA、元ロサンゼルス・レイカーズのスーパースター、コービー・ブライアントさんが1月26日、搭乗していたヘリコプターの墜落により事故死。ヘリにはコービーの愛娘ジアナさんも同乗、乗客乗員9人全員が死亡した。
コービーさんは17歳でNBA入り、20年にわたり名門レイカーズ一筋で過ごし、同チームを5度チャンピオンへと押し上げ、シーズンMVP1回、ファイナルMVP2回、18年連続オールスターゲーム選出はNBAタイ記録、同MVP4回は最多記録、NBA史上2位となる1試合81得点を叩き出したレジェンド。
最初の3連覇の際は背番号8、後の2連覇の際は24をつけていた点に由来し8月24日はロサンゼルス市の「コービー・ブライアントの日」に制定されている。また同一チームで2つの背番号が永久欠番となっている唯一の選手。
2016年に引退、41歳での事故死、世界に衝撃が走った。
サッカーの元アルゼンチン代表、ディエゴ・マラドーナが11月25日、ブエノスアイレス郊外の自宅で死去した。現地メディアによると、ブエノスアイレス郊外の自宅にて心臓発作で倒れ、そのまま帰らぬ人に。10月に60歳の誕生日を迎えたばかりだった。
マラドーナは1960年ブエノスアイレス生まれ。ワールドカップには4度出場し、アルゼンチンを優勝に導いた1986年のメキシコ大会では、準々決勝のイングランド戦で「神の手ゴール」や「5人抜きゴール」という伝説のプレーを残した。
第7位 メルセデスのハミルトンがシューマッハの最多優勝記録を破る
世界自動車レース、フォーミュラ1は10月25日、ポルトガルのアルガルヴェ・インターナショナル・サーキットで今季第11戦が行われ、メルセデスAMGF1のルイス・ハミルトンが優勝、それまで最多優勝記録を持っていたミハエル・シューマッハ(フェラーリなど)を抜き、歴代最多となる通算92勝目を挙げた。
ハミルトンは今季さらに3勝を積み上げ、この最多記録95勝まで伸ばしシーズンを終えた。
F1シリーズは年間全7戦からスタート。年10戦程度のシーズンが長く続いた後、2010年代に入ってからは全20戦以上のシーズンも多く、専門家の中では意見が分かれる実情もあるものの、近年のハミルトンとメルセデス・コンビの強さを妬む声とも受け取られそうだ。果たしてハミルトンの記録は、かつてのファン・マヌエル・ファンジオのように「不滅の記録」と呼ばれるようになるか、興味深い。
第6位 スキージャンプの髙梨沙羅57勝、表彰台登壇回数101回の記録更新

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FISスキージャンプ・ワールドカップ女子個人第15戦は3月9日、ノルウェー・リレハンメルで第15戦が行われ、髙梨沙羅が優勝。自ら保持する女子ワールドカップ通算最多勝利を57勝とした。またcで今季開幕戦が行われ、髙梨は3位に。こちらも自らの史上最多記録を101回に伸ばした。
なぜ日本では、こうした世界で活躍する日本のアスリートについて、報道が手薄なのか。その意味を考え、意義深い原稿に向き合いたいと心新たにするのだった。