欧米のドラマや映画を観ていると、自分の町の球団を応援する人たちがよく出てくる。パブや学校に地元チームのシャツや帽子を被っている人物が登場すると、それだけで世界が出来上がる。野球やサッカー、アメリカンフットボールなど、スポーツはなんでもいい。大都市でなく小さい町であれば、なおいい。
10年前に海浜幕張に越してきて、自分の町にフランチャイズがあることが新鮮だった。それまで千葉ロッテマリーンズに特別な感情はなかったが、自転車で行ける距離に球場があると、やはり応援したくなる。身近にチームがあるのは本当にいいものだ。
しかし、戦績はというと、イマイチ。最後に優勝したのは2010年だから、ぼくが越してくるずっと前だ。監督は西村徳文、先発メンバーには井口資仁、里崎智也、今江敏晃と懐かしい名前が並ぶ。その前の優勝は2005年、ボビー・バレンタインが監督だった。ぼくが住むベイタウンの中心にはバレンタイン通りがある。
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■正真正銘のリーグ優勝は51年前
2010年はレギュラーシーズン3位からクライマックスシリーズ、日本シリーズを制した、いわゆる「下克上」の年だった。2005年はレギュラーシーズンを2位で終え、2004年から3年間だけ行われた「プレーオフ」に勝って日本シリーズに進んでいる。つまり、どちらの年もレギュラーシーズンは優勝していなかった。
では、最後のリーグ優勝はというと、1974年まで遡る。もちろん、幕張に本拠地はない。この年は、なんと本拠地を持たない「ジプシー球団」だった。監督は金やんこと、400勝投手の金田正一。すでに記憶はセピア色だ。ところが、この年もパリーグは「2シーズン制」で行われ、後期は優勝したものの前期は2位だった。
では、シーズンを通して勝ち抜いたのはいつだろう? そう思ってさらに調べると……。1970年、南海ホークスに10.5ゲームの差をつけて、正真正銘のリーグ優勝を果たしている。監督は濃人渉、主力には榎本喜八、有藤通世、木樽正明など、伝説のプレーヤーが在籍していた。遥か51年前の出来事である。
■マーティン不在……先発起用された若手に期待
現代に話を戻そう。28日現在、我らがマリーンズは首位に立っている。開幕5連敗からスタートしたことを考えると奇跡のようだ。このままリーグ優勝をすれば51年ぶりの歴史的瞬間ということになる。逆にこれを逃したら、生きているうちに次のチャンスがくる保証はない。さっそくレプリカユニフォームに袖を通して、オリックスとの首位攻防戦の応援に出かけることにした。
球場には選手たちに合わせて赤を基調としたレプリカを着たファンが集まる。さすが、熱心なファンは何種類もシャツを持っているのだろう。先発投手はマリーンズが石川歩、オリックスが山崎福也と発表された。試合開始前の時点で、2位オリックスとのゲーム差は3。まだ20試合以上も残っていることを考えると、微妙な数字だ。今カードで3タテを決めて、ゲーム差を6に広げれば、ようやくひと息つけるのだが……。
しかし、スコアボードに並んだメンバーを見ると不安になる。やはり、マーティンの不在は痛い。レアード、荻野貴司、中村奨吾あたりの実績ある選手に加えて、スタメン登場の安田尚憲、佐藤都志也、山口航輝、といった若手に期待したいところだ。逆にオリックスは首位打者の吉田正尚が戻ってきて打線に迫力が出た。ホームラン王争いトップの杉本裕太郎と組む3、4番は脅威だ。
■惜敗も、改めて感じた球場観戦の醍醐味
試合は、期待した山口に一発が出て先制するが、5回までヒットはその1本だけ。山崎福が投じる120キロ前後の緩い球にまったくタイミングが合わない。逆に石川が4回にT-岡田に3ランを浴びて、あっさりひっくり返されてしまった。なお、このホームランはT-岡田の通算200号。T-岡田選手、おめでとうございます(涙声)。
6回には伏兵の紅林弘太郎にもソロホームランが飛び出し、スコアは1-4に。後で振り返ると、この1点が痛かった。その後、点を取り合い2-5で迎えた9回裏、クローザーの平野佳寿を攻めて走者一、二塁のチャンス。荻野に一発が出れば同点という場面を作ったが、打球は外野手のグローブに収まった。
試合が終わってゲーム差は2に縮まった。これからも2チームの接戦はしばらく続きそうだ。本当の意味での天王山は10月12~14日、敵地でのオリックス戦あたりか。そこで大勢を決して、続く15日からマリンスタジアムでのソフトバンク戦で井口監督の胴上げを見たい。これが理想のシナリオだ。
それにしても、久しぶりの球場での観戦は楽しかった。拍手だけでの応援はむしろ清々しい印象で、打球音や選手の声が聞こえるのもよかった。ノンアルコールながら、ビールを売りに来てくれるのもうれしかった。来月、また胴上げを見に行きます!
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著者プロフィール
牧野森太郎●フリーライター
ライフスタイル誌、アウトドア誌の編集長を経て、執筆活動を続ける。キャンピングカーでアメリカの国立公園を訪ねるのがライフワーク。著書に「アメリカ国立公園 絶景・大自然の旅」「森の聖人 ソローとミューアの言葉 自分自身を生きるには」(ともに産業編集センター)がある。デルタ航空機内誌「sky」に掲載された「カリフォルニア・ロングトレイル」が、2020年「カリフォルニア・メディア・アンバサダー大賞 スポーツ部門」の最優秀賞を受賞。