メンフィス・グリズリーズの渡邊雄太選手が現地10月27日(日本時間28日)に、フェニックス・サンズ戦で公式戦初出場を果たした。
日本人選手のNBA公式戦出場は2004年の田臥勇太選手(サンズ)以来。渡邉選手の出場により、日本人2人目のNBAプレイヤーが誕生した。
目次
バスケットボール一家に生まれ、高校卒業後に渡米
渡邊選手は1994年生まれの24歳。両親ともに実業団でプレーしたバスケットボール選手であり、姉の夕貴さんも日本女子リーグでプレーした元バスケットボール選手だ。
バスケットボール一家に生まれた渡邊選手も幼いころから競技を始め、中学時代には香川県選抜の一員として都道府県対抗ジュニアバスケットボール大会にも出場した。
尽誠学園高校で選抜大会準優勝を果たした渡邊選手は、卒業後の進路にアメリカ留学を選ぶ。周囲からは反対する声もあったが自分を信じて太平洋を渡った。
渡米後はセント・トーマス・モア・スクールで大学進学の準備をしながらプレー。その後、目標であったNCAA(全米大学体育協会)1部のジョージ・ワシントン大学に進学した。
在学中の2016年にはジョージ・ワシントン大学の選手として来日し、日本代表との親善試合にも出場している。
View this post on Instagram
試合後に小錦さんに写真とっていただきました! 嬉しい!! あの国歌斉唱は本当に鳥肌たちました!!! #こにしきさん #美声すぎ #ありがとうございます
グリズリーズと2-way契約を結んでNBA入り
大学卒業後、渡邊選手はブルックリン・ネッツの一員としてNBAサマーリーグに参加。ここでのプレーが認められグリズリーズと2-way契約を結んだ。
渡邊選手は自身のツイッターを更新して「ここからがまた本当の勝負です。今後も更なる成長を目指して頑張ります!」と、夢への第一歩を報告した。
もうご存知の方もいるかと思いますが、メンフィスグリズリーズ@memgrizz と2way契約をさせていただきました。ここからがまた本当の勝負です。今後も更なる成長を目指して頑張ります! 今後とも応援よろしくお願いします!!
— Yuta Watanabe 渡邊 雄太 (@wacchi1013) 2018年7月21日
渡邊雄太が結んだ2-way契約とは?
2-way契約とは、2017-18シーズンから出来た新しい契約形態。NBA歴4年未満の選手に限り、既存のロスター枠15人とは別に、各チーム2人まで条件付きで契約することができる。
- 対象はNBA歴4年未満の選手に限る。
- ロスター枠15人とは別に2人まで契約が可能。
- チームのサラリーキャップには含まれない。
- 1チームに所属できるのは2年まで
- 基本的には下部のGリーグで戦うことになるが、年間45日までNBAに参加することができる。
選手の年俸はGリーグ契約の7万5000ドル(約840万円)に加え、NBAに所属した日数に応じてNBAルーキー最低サラリーの日割り分が支払われる。
なぜ2-way契約は生まれた
米国内でプレーしながらNBAを目指す選手はGリーグ(旧Dリーグ)で戦い、各チームのスカウトにアピールするのが一般的だ。
日本人では富樫勇樹選手が2014-15シーズンにGリーグでプレーしている。しかしながら、Gリーグの給与や待遇面は決して恵まれたものではなく、より好条件を出す海外リーグへの人材流出が起きていた。
2-way契約が誕生したのは、こうした動きに歯止めを掛け、Gリーグを育成の場として活用することが目的とされる。
選手から見た2-way契約のメリット
2-way契約の誕生により、NBA所属選手の枠が実質60人分増えたことになる。
NBAチームに所属する2-way契約なら、Gリーグのプレー中も良い条件をもらえる。また、NBA所属日数にもよるが、満額なら通常のGリーグ所属選手に比べ10倍近い年俸を得られる。
生活基盤を安定させながら米国でのプレーを続けられる上、チーム事情によっては以前よりもNBAに呼ばれやすくなった。
チームとしても有望な若手を囲い込んで長い目で判断が下せるようになったのはメリットだろう。
選手から見た2-way契約のデメリット
GリーグはNBA選手を育てる育成の場と理解されているため、通常ならGリーグ所属選手はNBA全チームからのオファーが受けられる。
しかし、2-way契約選手はGリーグでプレーしていても所属先は各NBAチームのため、他球団からのオファーを受けることができない。
チーム事情によってはGリーグで活躍してもNBAに呼ばれず、絶好調の時期を飼い殺されて終わる可能性もある。
もちろん2-way契約選手もチームの期待を下回り、これ以上は伸びしろがないと判断されればシーズン途中での解雇もある。チームとしては負担を減らしながら若手を試せる試用期間でもあるのだ。
プレシーズンで評価を上げ開幕ロスター入り
そうして始まった今季のNBAプレシーズン。渡邊選手はグリズリーズの一員としてプレーを続け、グングン評価を上げていった。
もともと定評があったディフェンスに加え、プレシーズンでは得点能力もアピール。相手のボールを奪うと素速く攻め上がり、NBAでは日本人初となるダンクシュートを決めた。
Have a night, @wacchi1013 ????⭐️
First #NBAPreseason bucket? ✔️
Clutch OT-inducing triple? ✔️#2WayPlayer Yuta Watanabe finished with 11 PTS & 3 REB in the @memgrizz win! pic.twitter.com/VDon8LTFF4— NBA G League (@nbagleague) 2018年10月7日
試合時間残り6秒で延長戦に持ち込む起死回生の3ポイントも沈める。印象的な一撃でファンのハートをガッチリ掴んだ。
渡邊雄太、第4クォーター残り6.4秒で延長戦に持ち込む同点クラッチスリー???????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????? @wacchi1013 via @nba #NBA #NBAjp #YutaWanabe #渡邊雄太pic.twitter.com/uCjvKDnL3N
— NBA Japan (@NBAJPN) 2018年10月7日
プレシーズンでの活躍が次第に現地のメディアやバスケットボールファンの目にもとまり、「こんな日本人がいたのか」と注目される。
そして、渡邊選手は田臥選手以来となる開幕ロスター入りを果たし、次は公式戦出場が期待されるようになった。
グリズリーズと2ウェイ契約の渡邊雄太が開幕ロスター入り。日本人選手としては田臥勇太以来、史上2人目の快挙です。Photo via @YukihitoTaguchi https://t.co/XsfWst4bzY@wacchi1013 @memgrizz @MemphisHustle #NBA #NBAjp #YutaWatanabe #渡邊雄太 pic.twitter.com/43sbGm9kOY
— NBA Japan (@NBAJPN) 2018年10月14日
渡邊雄太がこれまで成し遂げたことをNBAを普段見ない人に説明するのは本当に困難だと思う。
「2way契約を結び、開幕ロスターに残る」これに渡邉が選ばれるまでに、何十人ものNBA候補生が蹴落とされていったことか。渡邉が奇跡の過程にいることをどう表現したらよいのだろうか。
— からあげくん@NBA,NJPW (@NBA_DwyaneWade3) 2018年10月15日
ここまで出場のなかった渡邊選手だが、チームは27日のサンズ戦で試合に出場できるアクティブ・ロスターに登録。
111-85と大差がついた第4クォーターにベンチから送り出した。
「子供たちや若い選手にもNBAを目指してもらいたい」
初出場を果たした渡邊選手は初リバウンドを記録したほか、相手選手のファウルで得たフリースロー2本を成功させ初得点もマークしている。
グリズリーズの渡邊雄太が @nba 公式戦初出場! 日本人選手としては2004年の田臥勇太以来史上2人目の快挙です。Congrats @wacchi1013!! via @memgrizz #NBA #NBAjp #NBA開幕 #YutaWatanabe #渡邊雄太 #ThiIsWhyWePlay pic.twitter.com/2N8wJ2TCIc
— NBA Japan (@NBAJPN) 2018年10月28日
緊張の初試合を終えたあと、渡邊選手は「幼いころからの夢が叶いました。素晴らしい機会を与えてもらい楽しめました」とコメントした。
「田臥勇太さんがNBAでプレーしてから14年が経ってますけど、今日は日本のバスケットボールが前進した日だと思います。日本の人に誇りに感じてもらいたいですし、子供たちや若い選手たちにもNBAを目標にしてもらいたいです」
. @wacchi1013 after making his NBA debut tonight:
“I hope alot of kids watch this game and the nba becomes their dream” pic.twitter.com/nPRMvx7EY6
— Memphis Grizzlies (@memgrizz) 2018年10月28日
渡邊選手は試合後に更新したツイッターでも、「ずっと目標にしてたNBAという舞台に立つ事ができました」と喜びを綴る。
大差がつく展開で出場機会を演出してくれたチームメイトに対しても感謝を忘れない。
「でもそれはチームメイトの素晴らしい活躍のおかげで、立たせてもらっただけです。まだまだあくまでスタートライン。自分の目標はもっと高い所にあります!」
ずっと目標にしてたNBAという舞台に立つ事ができました。でもそれはチームメイトの素晴らしい活躍のおかげで、立たせてもらっただけです。まだまだあくまでスタートライン。自分の目標はもっと高い所にあります! 今後も頑張るので引き続き応援よろしくお願いします!
— Yuta Watanabe 渡邊 雄太 (@wacchi1013) 2018年10月28日
日本人14年ぶりのNBA出場を果たした渡邊選手だが、あくまでここはスタートライン。
ファンからは祝福とさらなる活躍を期待する声が寄せられている。
渡邊選手おめでとうございます!!
田臥以降なかなかトップリーグから離れてたけど、ついに!!
国内のBリーグも盛り上がってきたし、日本人選手の維持見せて頑張ってください!!#NBA #NBAjp https://t.co/Z5n6RioPjX— ケント・ナガヤ (@kentonewparty) 2018年10月28日
2得点2リバウンドのデビュー戦。試合の大勢が決してからの登場で4分だけだったけど、何より、NBA選手としてNBAのコートに立った瞬間に、涙腺に来た。おめでとうございます!そしてこれからもチームにしがみついて活躍してほしい! https://t.co/6BZRw799Jk
— Mr.tsubaking (@Mr_tsubaking) 2018年10月28日
デビュー本当におめでとうございます????
ドライブしてファールをもらい、フリースロー決めたのは本当に素晴らしい。
数少ないチャンスをモノにして、本契約を掴んでください。— アッキー (@zuumin_utahime) 2018年10月28日
試合見ました!!実際にNBAてプレーされてるのをみて感動しました!これからも頑張ってください!応援してます!!
— ユッキー (@TypeMoonNBA) 2018年10月28日
≪関連記事≫
千葉ジェッツ・富樫勇樹、高校生を集中指導「インターハイ優勝目指して頑張って」
【Bリーグ開幕】スキマ時間に絶え間なく現れるパフォーマー…野球やサッカーとはまた異なる空気感に注目
きゃりーぱみゅぱみゅのBリーグ開幕戦サプライズ登場に、「うわあああああああ開幕戦行きたかったああああああああああぁぁぁ」と羨望の声も
いまも色褪せない”神様”マイケル・ジョーダンの凄さとは…実は一度引退して野球選手になっていた過去も