為末大が教える、親が子どもの足を速くさせるために取り組むべきこと

男子400mハードルの日本記録を保持する為末大氏による「走り方を学ぼう!かけっこ教室」が11月25日にコナミスポーツクラブ本店にて開催された。

同イベントは為末氏がプロデュースする「TRACスプリントスクール」のランニングメソッドを取り入れており、スポーツ科学のエビデンスに基づく指導を行う。

対象年齢は満4歳から小学校6年生まで。メディアには幼児向けクラスが公開された。

足を速くするために、今の子どもたちは日常的にどういったことに取り組めるだろうか。為末氏はこうアドバイスする。

「(走る)量がまず大事です。階段の上り下りなどはいい訓練になります。坂道の登り方と走り方は相関しますし。うちの子には階段を走って上がらせたりしていますね。階段は高さがあって、飛ばなきゃいけないので弾む感覚が身につくかと」

「(走り方を鍛えるには)不整地を走るのが一番いいのですが、都会だと坂道や階段くらいしかないので、そこで遊ばせる感じになりますね」

スキップのうまさと実際の走りの速さはほぼ比例する

トレーニングとしては、スキップを取り入れることを推奨した。為末氏によるとスキップはオリンピックに出場するようなアスリートでも練習に取り入れており、スキップのうまさは実際の走りの速さにほぼ比例するという。

「スキップは効率がいいです。走っていると右で踏んでいる間に左足がきちゃうので走り方を意識することが難しいのですが、スキップだと一回キャンセルが入るので、(走り方を)意識しやすくなる」

子どもの頃は、いろいろな経験をしておくことが大事

子どもの頃にやっておいたほうがいいことについて、為末さんは自身の子ども時代を「色々なことをやったのがすごく後で効きました」と振り返る。ジャンプの動きや、水泳などを経験しておいたことも競技に役立ったという。

「なるべく多様な経験があるといい。言葉と似ていて、このくらいの年齢でやった動きは後で引き出せるようになるのです。例えば、走るときに『あ、ここは水泳のクロールの感じかな』といったように意識できるようになります。10~12歳くらいまではなるべくいろいろ経験してほしいですね」

親が意識すべき点

続けて、走り方を子どもに伝える上で、親が意識すべき点についてアドバイスした。

「専門家ではないので技術的に教えることは難しいと思います。僕の指導で思うのは、『(子どもは)何が悪いのかはほとんどわからないので、何が良かったのかだけ』伝えるのがいいと思います」

「矯正は難しいんですよね。中学生くらいになると少しずつわかってくるのですが、このくらいの年齢だと『大きく動くとなんかいい感じなんだ』とかぼんやりとした方向性を掴ませるといいと思います。『ちょこちょこ走るよりダイナミックに走ると褒められるな』みたいな感覚を掴ませるくらいで親御さんはいいのではないでしょうか」

そうして、為末氏は「走るための正しい動きなど、技術的なことはまだこの年齢だとそこまでわからないので、それよりはダイナミックな動きなどをさせて、のびのびとやらせることが重要」とまとめた。

「姿勢をまっすぐにするとか、体を前に倒れるようにしてスタートするとか、そういった最低限のことは意識させる必要がありますが、それ以外は特に大事なことはないと思います」

モチベーションを保たせるために工夫していること

為末さん自身も4歳の子どもの親であるが、「(子どもの)モチベーションを保たせるのは難しい。うちの子があまり走りたがらない」と悩みを打ち明ける。

走りたいな、と思えるならそれはすでに才能。動機がなんであれやってみようと思えるのはよい。やらせるのは難しいので。僕は走りたかったので、そこで悩んだことはなかった」

そんな為末さんが子どものモチベーションを高めるために工夫しているのが、ルールなどを設け「変化」を加えることだという。

「色々階段を上がらせてみるとか、二段跳びにチャレンジさせるとか、ルールを変えてみています」

 

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また、走り方を伝える方法にも工夫がある。

7~8歳までは『肘を大きく動かす』というより、『太鼓を叩く感じで』とか、外界の物を意識させた方がうまくいきます。ある程度大人になると、肘とか膝の感覚がはっきりするのですが、子どもは外の環境に何かを置く、例えば風船を置いてやって面白がりながら誘導するとか、そういうやり方がよいかもしれません」

後天的に身につきにくい感覚とは

報道陣から「特に子どもにしている特別な教育はあるか」と問われると、為末さんは苦笑いしながら「回転感覚は後天的に身につきにくいので、空中でぐるぐる回すとか、逆さにしたりしています」とコメント。

「効くのか分からないですけれどもね(笑)。体操選手になりたいとか言い出したら、回転感覚ないと困りますし。僕も情報を知り過ぎていて、実際はどうなるかわかんないですけれども…。(笑)」

為末さんも1人の親だ。子どもにたくさんの可能性を持たせようとする気持ちは、どの親とも変わらない。

「走るのはあとからどうにかなるんです。もちろん、みんながボルトになるのは難しいですが、走り方をうまく改善すれば速くなります。大人でも変わります」

「特に、小学校の中盤から後半になるとかなり変わる可能性があります。50mのタイムが9秒から8秒になったりとか、0,5秒~1秒くらいは結構速くなります」

「走り方」は後天的な教育でなんとかなる。しかし、「思いっきり力を出す感覚」を身につけることはなかなか難しいのだという。

大きく全力で力を出す、というのがなかなか難しい。そのあとのチューニングというのはなんとかなるんです。全力の8割でやるとピッチ(小さい歩幅・早い回転で走る走法)になり、全力の6割でやるとサッカーで求められる小さなステップになったり。そのために、上限を広げておかないと」

技術的なところよりもダイナミックな動きなどをさせて、のびのびとやらせることが重要」という発言も、こういった考え方からきているのだろう。

《大日方航》

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