為末大に問う…子どもたちが「なぜ」という感覚を育むために重要なこと

運動会。足の速さが如実に衆人環境のもとで明らかになる場所であり、いわゆる足の遅い子にとっては、羞恥心を刺激される場所にもなりがちだ。

そうした場所に挑むために、子どもはどういった準備をしておくことができるのだろうか。

11月25日にコナミスポーツクラブ本店にて開催された「走り方を学ぼう!かけっこ教室」で講師を務めた男子400mハードルの日本記録を保持する為末大氏は、「必要なのは、走る練習をしておくこと」だと報道陣の質問に答えた。

なぜ、練習が必要なのか。それは、勝負とは別の「どれくらい速くなったか」という指標ができるからだという。

「幼児は発育の差があるので、どれくらい自分が速くなったかということを意識できることが大切です。陸上はタイムがあるので、指標がわかりやすいのです。それが、かけっこのいい点というか。親御さんもできればタイムを計ってあげたりするといいかもしれません」

幼稚園や小学生レベルでは発育速度に差があるため、「順位」だけを指標にして評価するとどうしても発育が遅い子は不利になってしまう。よって、練習を経るごとに「どれだけ自分が成長したか」が目に見えて分かる別の軸での尺度があるべきだ、と為末氏は提案する。

それが、練習段階と本番段階でのタイムの「伸び」だろう。この基準を設けるために、練習段階と本番段階でのタイムを図り、成長を意識させることが有効になってくる。

「なぜ?」を養うために

同教室では、「単にトレーニングを行うだけではなく、『なぜ』このトレーニングをするのかを参加者と一緒に考えていく」と謳っているが、この「なぜ」と疑問を持つ感覚は陸上のみならず、様々な分野で求められていく感覚でもある。

どのようにして、子どもたちは陸上を通しこの「なぜ」と疑問を持ち検証する感覚を育んでいけるのだろうか。為末氏はこう答える。

子どもたちが、目の前に見えていることとか状況は当たり前じゃなく、変わっていくものだということを体験するのが大事だと思います。自分の走り方がベタベタしていたのが練習をすると変わっただとか、遅いと思っていたのが速くなったりとか、取り組めば変わるんだと。まずは自分の力で変えられるんだ、ということをなんとなく学んでいければ、どうしてこうなるんだと、疑問が湧いてくるのではないでしょうか

最初はとりあえず先生の言うことに素直に従っているだけでも、徐々に変化が生まれてくる。その「変化」さえ意識することができれば、結果に伴ってその過程を意識する感覚が生まれてくるということだろうか。

まずその変化を生み出すために求められるのは、当たり前ではあるが「自分ができないこと」にチャレンジすることだ。しかし、挑戦への弊害となってくるのはいつだって「周りの目線」を気にしてしまう羞恥心である。

幼児クラスの指導が終了した後、為末氏はこうイベントを振り返っている。

「今日(の参加者)は元気に走ってくれた。『先生と自分だけの世界』で走ってくれたというか。もう少し上の年齢だと、自分が走るときに友達の目線を気にし始めてしまう。それが始まると難しくなる。抑制が始まってしまうので。うまくできることだけをして、できないことはやらなくなってしまう

指導中にも、為末氏は「先生の言うことをよく聞いて、周りの友達のことを気にしないことが大事だよ」と強調していたが、周りを気にせず、指導者の言うことを素直に取り入れることができるか。それが、のちのちの「なぜ」といった感覚を身に付けることや、上達するために不可欠な要素となってくる。

こうした弊害を取り除くために為末氏が重視するのは、「失敗しても、できなくてもいい」ということを伝えることだ。

下手なことをまず、夢中でやってみることが上達に大きな役割を果たす。それはいつも伝えるようにしています

子どもに対する指導法ではあるが、大人でもハッとさせられるような発言の数々だった。何かを上達させるための本質的なコツは、子どもでも大人でもそう変わらないのかもしれない。

《大日方航》

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