■「男子ゴルフの魅力をどうプレゼンテーションするか」
スポンサーに頼らずJGTO主催という点以外に、この大会では従来のスコア方式と異なる「ステーブルフォード方式」を採用。19世紀末、英国のフランク・バーニー・ゴートン・ステーブルフォード博士によって編み出されたとされるが、この方式を採用するプロの大会はそう多くはない。
本方式採用の意図について、青木会長は「男子ゴルフの魅力をどうプレゼンテーションしていくのか。パワーのある男子ゴルフの魅力を伝えるには適しているでしょう。新たな試みなので、選手もリフレッシュしたように思うよ。ボギーを叩いても、バーディー獲ればプラスマイナス0ではなく、むしろ1ポイント儲かる。闘争心を掻き立てるゲーム方式が、選手にとって、すごくアグレッシブに攻めていく、違った意味のファイト満々なゴルフになっている。攻めるゴルフをしたいけども、ボギーを恐れて心理的にそれができない選手も多い。すぐに切り替えができるのが、ゲームプラン、モチベーションを掻き立てているよね」とストロークを費やす酷いホールがあったとしても、すぐに挽回できる本方式のメリットを訴える。
「とにかく、選手たちの表情がすごく明るい。『やった』という歓喜が表れている。ストロークプレーだと、この表情は出ないんだよ。『全部の試合、この方式で』と言い出す選手もいるぐらい。選手も知識としてこのポイントシステムを知ってはいたでしょうけども、これまでわかってはいなかったでしょうね。ボギーが怖くないゴルフになる。とにかく攻める。ここ(THE RAYSUM)の1番ホール(最長373ヤード)も、みなワンオンを目指す。パワーのある男子ゴルフの魅力を伝えるには適している。『あのプロは、あそこからあそこまで打つのか』と見ているギャラリーの人にアピールできる。男子のパワーはすごい。その魅力は伝えたい」。

終始にこやかに穏やかにしかし熱弁を振るう青木功会長 撮影:SPREAD編集部
スポーツは東京五輪の延期に象徴されるよう新型コロナウイルスに席巻されてきた。もちろん、ゴルフもその例に漏れない。会長は「コロナのせいで自粛しなきゃいけない、ゴルフも『テレビで見ればいいか』みたいに、人間に億劫さを教えてしまった気がするよ。もう一回、18年、19年あたりの状況に戻さないと」とその焦燥感をあらわにする。
一方、この「攻めのゴルフ」の象徴たり得る本大会の開催が、低迷する男子ゴルフ人気に対するカンフル剤となる自信を深めたようだ。「現場に来ないと、そのすごさはわからないと思う。ぜひ足を運んでほしい。やはり、ファンに見せないといけない。これを見ればゴルフ人気も上がる」。
男子ゴルフのトーナメントは18ホールの戦いが4日間にわたり繰り広げられる。長丁場だからこそ生まれるドラマの数々がある。コースマネジメント、戦略、ピンの位置の変化、スタミナ……勝敗を分ける要素は実にさまざまだ。
日本人男子として米ツアー初優勝を果たした青木会長でさえも「せっかくトップなんだから4日目がキャンセルにならないか」と思ったことがあるという。「もちろん、口には出したことはないけどね。だが、そう思った時点で負けが決まってるみたいなもんだよ」と心理戦の深さも語る。会長自身、逆転で負けた経験も、逆転で勝った経験ももちろん豊富だ。だが、最後の18番ホールで勝負がかかった際、相手のパットの際に「よし、はずせ!」と思った瞬間、「もうプレーオフでの負けも決まったようなもん。気持ちの整理が逆なんだよ」と明かす。「『外してくれたら勝てる』と、最初から他力本願、人の失敗を待っている時点でダメだよ」と攻めのゴルフの心構えをレジェンドは知る。
会長が現役時代、リーダーでホールアウトしクラブハウスに帰ってきてからも絶対にグラブを脱がなかったという逸話がある。これは「ずっと戦闘態勢を維持していたからだ」という。「やっぱり相手があっての自分なんだから。相手が戦っている間、自分も最後の最後まで戦ってなきゃダメだよ。結果が出るまでね。その攻めの姿勢をずっと出してほしい、それがステーブルフォード方式を決断した理由。その気持ちでやってくれれば、ギャラリーをひきつけるよ。攻める気持ちが、ゴルフを変える。『なんとかパーでしのごうじゃなくて、バーディー獲ればいい!』に代わる。攻める姿勢が他の大会にも影響してくるかもしれないよ」。
パワーあふれる男子の攻めのゴルフにより、プロ14年目、地元・群馬出身の小林伸太郎が初優勝を果たしたのは、その効能のひとつだろう。
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著者プロフィール
松永裕司●Stats Perform Vice President
NTTドコモ ビジネス戦略担当部長/ 電通スポーツ 企画開発部長/ 東京マラソン事務局広報ディレクター/ Microsoftと毎日新聞の協業ニュースサイト「MSN毎日インタラクティブ」プロデューサー/ CNN Chief Directorなどを歴任。出版社、ラジオ、テレビ、新聞、デジタルメディア、広告代理店、通信会社での勤務経験を持つ。1990年代をニューヨークで2000年代初頭をアトランタで過ごし帰国。Forbes Official Columnist。








