■まだ実現していない日本人NFL選手誕生へ
日本社会人アメリカンフットボール協会の深堀理一郎理事長は冒頭に記した会見で、このように話している。
Xリーグでは、NFLサンフランシスコ・フォーティーナイナーズでプレシーズンゲームに出場の経験がある河口正史氏や山田晋三氏(Xリーグ・IBMビッグブルー監督。NFLプレシーズンゲーム出場経験がある)、昨年春、IPPプログラムの候補者となった李卓(Xリーグ・オービック シーガルズ所属)ら国際経験の豊かな有識者らによる助言、Xリーグ所属チームによる選手の練習受け入れ、支援企業による英語力強化といったところで、クロスオーバーアスリートへの支援をする予定だ。
Xリーグは、クロスオーバーアスリート測定会の実施を来年以降も継続する意向だ。またNFLのIPPプログラムの対象が高校卒業から3年が経った者が対象だということもあり、20歳前後の大学生を対象としたクロスオーバーアスリート発掘のコンバイン実施も検討する。
同リーグは2019年よりカナダのCFL(世界でNFLに次ぐリーグ)とパートナーシップを結んでおり、以来、日本人選手が数人、CFLでプレーをしているが、クロスオーバーアスリートをCFLの日本国内コンバイン参加に「推薦」することも考えているという。
今回の測定会とは関係ないが、20年に全日本相撲選手権を制し史上2人目となる大学1年生でのアマ横綱となった花田秀虎が、今年3月開催のXリーグ合同トライアウトに参加し、その逸材ぶりで周囲を驚かせた。花田は今夏、所属していた日本体育大学の相撲部を事実上休部し、IPPプログラムを経てのNFL入りを目指してアメフト専念を決断。現在は、Xリーグ・富士通フロンティアーズ等で練習に参加し、英語習得にも務めている。
日本からNFLが誕生したことがないだけに、どうすればそこへたどり着けるのかの「認識が曖昧」(深堀理事長)だというのが現況だが、競技人口が少ないことを鑑みれば、今回のクロスオーバーアスリート発掘のような施策は可能性を広げる上であってしかるべきものだ。XリーグやCFL、あるいはアメリカの高校や大学を経て、と様々な道筋があることを若い選手たちに示してあげることが肝要であり、かつ日本協会やXリーグ側としても情報収集に努める必要があると、深堀理事長は言う。
「クロスオーバーアスリートだと20歳前後の優秀なアスリートたちに対して『大学からアメリカに行くっていう道もありますよ』というのを示してあげることも大事だと思いますし、国内でやるにしてもちゃんと英語をやって、トレーニングをしてスキルを上げれば『日本のXリーグからもIPPに選ばれますよ』と。そういういくつかのパス(道筋)を整えてあげることが重要かなと考えています」
野球、サッカー、バスケットボール。あるいは個人競技。日本のスポーツ界も「トップ中のトップ」を論じる際、「世界」が基準だ。
同国のアメリカンフットボール界も、まだ実現していない日本人NFL選手誕生へ向けて、「世界」を意識し始めた。
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著者プロフィール
永塚和志●スポーツライター
元英字紙ジャパンタイムズスポーツ記者で、現在はフリーランスのスポーツライターとして活動。国際大会ではFIFAワールドカップ、FIBAワールドカップ、ワールドベースボールクラシック、NFLスーパーボウル、国内では日本シリーズなどの取材実績がある。