■日本にホームステイした過去も……負けず嫌いは当時から
冒頭に記したように日本ではアメフトがマイナーであり大きく報じられることも少ない。ブレイディと日本の関わりも多くはない。
だが、ブレイディは小学校6年生のときに大阪府豊中市にホームステイをしている。豊中市とサンマテオ市が姉妹都市だった関係で数年ごとに両市の少年野球選抜チームが互いの市を訪れ、試合を行うという交流事業を行っている。野球もプレーしていたブレイディもサンマテオの代表として豊中に滞在したのだ。

2017年来日時のブレイディ 撮影:永塚和志
ブレイディは投手として登板し、打撃では当時の日本側の関係者によれば元阪神タイガースの掛布雅之のような(ブレイディも左打ちだった)フォームだったという。また、当時、「トミー」と呼ばれていたブレイディをホストファミリーとして受け入れた家族の方によれば、ビデオゲームやトランプなどをしているときでも彼は負けず嫌いだったそうだ。そう聞くと、NFLでの彼を成功に導いた高い競争心が子どもの頃から有していたものだと合点がいく。
■10年契約で約487億円の異例の契約で解説者に
引退したブレイディがNFLから遠ざかるかといえば、そうではない。異例だが、4大ネットワークの『FOX Sports』が昨秋、まだ現役選手だったブレイディと引退後に同局で試合の解説者となる契約の締結を発表している。その内容は10年契約で3億7500万ドル(約487億円)と、年俸にすればブレイディの現役選手としてのそれ(2022年は約33億円)を超える。
2022年シーズンでは、トニー・ロモとトロイ・エイクマン(ともに元ダラス・カウボーイズQB)の年俸が約1800万ドル(約23億円)で最高だったが、ブレイディのそれはそれらを優に上回る。このあたりからもアメリカでのNFLの市場価値がうかがい知れ、またブレイディが選手としてのキャリアで培ってきたものの大きさが反映されていると言えよう。
ちなみに12日(同13日)に開催の第57回スーパーボウル(カンザスシティ・チーフスとフィラデルフィア・イーグルスが対戦。場所はアリゾナ州フェニックス近郊のグレンデール市)の放送担当局は『FOX』だ。
同局はブレイディがそこでメインの解説者を担うことはないとしているが、何かしらの形で放送に関わるのではないかと囁かれている。
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著者プロフィール
永塚和志●スポーツライター
元英字紙ジャパンタイムズスポーツ記者で、現在はフリーランスのスポーツライターとして活動。国際大会ではFIFAワールドカップ、FIBAワールドカップ、ワールドベースボールクラシック、NFLスーパーボウル、国内では日本シリーズなどの取材実績がある。