ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)開幕を前に、MLB公式サイトが7日(日本時間8日)、侍ジャパンのラーズ・ヌートバー(セントルイス・カージナルス)に関する記事を公開した。9日の中国戦では「1番・中堅」での出場が予想されているヌートバーは「母のために日本で歴史を刻むことを誇りに思う」と話し、母・久美子さんと日本に勝利を捧げることを誓った。代表ユニフォームに初めて袖を通し、強化試合に臨んだ様子などを伝えている。
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■ホームとビジターを勘違い
日系選手として初めて侍ジャパンに選ばれたヌートバー。阪神との強化試合(6日・京セラドーム大阪)に「1番・中堅」で出場し、3打数2安打1打点をマーク。見事な侍デビューとなったが、実はちょっとした混乱からのスタートだったという。
この日の侍ジャパンの扱いはビジターであり、つまり先攻。しかし、ヌートバーは「ホーム用のユニフォームを着用していたので、てっきりホームゲームだと思った」と勘違いしていたことを明かし、「守備に就く準備をしていたら、チームメートから『打席に立つんだよ』って言われて、僕は『おっと、しまった』って感じで慌てた」と笑った。
ヌートバーは父が米国人で母が日本人の日系アメリカ人二世。WBCは「選手が当該国の国籍を有していなくても、父母のどちらかが当該国の国籍を持っていれば代表の資格がある」と規定しているため、今回の日本代表入りにつながった。
■マー君らがお手本だった
ただ、日本野球との交流はヌートバーが9歳の時から始まっていた。2006年、高校日本代表が米国遠征を行った際、ヌートバー一家がホストファミリーとなり、高校球児を迎え入れた。この時の代表は、早実の斎藤佑樹や駒大苫小牧の田中将大という名前が並ぶ豪華メンバー。ヌートバー少年は彼らと一緒に試合前のストレッチに参加し、試合中はバットボーイを務めたという。
「彼らは僕のお手本であり、まだ高校生なのにプロのようだった。僕の両親も彼らを自分の子供として受け入れていたし、僕にとっては2週間ほど兄弟ができたようなものだった。今はその逆でうれしい」と話し、今回の侍戦士やスタッフ、ファンの対応に感謝した。
言葉の違いも親交を深める障壁とはなっていないようで、「フィールドにいるときは完全にクリアしている。僕はできるだけ主要な単語を口に出して、チームメートが理解できるようにしているし、彼らも意外と英語が得意なんだよ」と笑うと、「だから、彼らには私の雰囲気が、私には彼らの雰囲気が伝わると思う。とてもクールだよ」とし、コミュニケーションに問題がないことを強調した。
■国歌を知っていることを証明
言葉といえば、国歌斉唱にも意欲を見せている。「今日(6日)、栗山英樹監督の隣で一緒に歌った。君が代の歌詞の一部を知っていることを証明するために歌ったんだ。かなり楽しかったよ」。確かにほかの選手があまり口を開かないなか、ヌートバーは懸命に声を出していた。記事も“新しい特技”と指摘し、ヌートバーの国歌斉唱に注目。大会期間中に習熟度を増す可能性もありそうだ。
「僕はママっ子だし、ママは僕の親友だから、(今回のWBC参加は)とてもうれしいよ。だから、何とかしてママを笑顔にしたいし、彼女と彼女の家系を代表してプレーすることは大きな意味がある」と胸を張った。抜群のコミュニケーション能力を発揮し、すっかりチームに溶け込んだヌートバー。リードオフマンとして侍ジャパンの世界一奪還に力を尽くしてくれそうだ。
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文●SPREAD編集部