蝉川泰果「タイガチャージ」炸裂なるか 破壊力抜群のドライバーショットを武器に中島啓太の背中を追う SansanKBCオーガスタ

 

蝉川泰果「タイガチャージ」炸裂なるか 破壊力抜群のドライバーショットを武器に中島啓太の背中を追う SansanKBCオーガスタ
蝉川泰果(C)Getty Images

Sansan KBCオーガスタゴルフトーナメント」は24日から4日間、福岡県の芥屋ゴルフクラブで開催される。第50回の記念大会となる今年はどのような戦いが繰り広げられるのだろうか。

蝉川泰果が上昇気配だ。今季開幕2戦目の関西オープンでプロ初優勝を上げたが、6月以降、成績は下降気味だった。だが、日本プロ、横浜ミナトChampinshipと最近2戦連続で優勝を争い、2位タイと2位。調子を上げてきている。

賞金ランキングは現時点(8月21日時点)3位。トップを快走している同学年の中島啓太とは約2400万円差。KBCオーガスタで蝉川が優勝すれば、ここでも上位に入ってくるであろう中島に横浜ミナトChampinshipで競り負けた借りを返すだけでなく、賞金王レースでも中島の背中が近づく。

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■確実にパー5でスコアを伸ばす

蝉川の魅力は攻撃力。バーディ率は4.904で1位だ。306.28ヤードで5位に入っているドライビングディスタンスがその攻撃力を生んでいる。飛ぶ分、曲がるかといえば、そうでもない。フェアウェイキープ率は56.772%で49位と下位だが、トータルドライビングは4位タイ。飛距離だけでなく方向も含めて上位に入っており、ドライバーショットが武器になっていることがわかる。

破壊力のあるドライバーショットは確実にバーディを取りたいパー5で最も生きる。遠くへ飛べばその分2オンの可能性が上がるからだ。実際、蝉川のパー5での2オン率は1位。

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2オンすればバーディ以上がほぼ確定で、2オンしなくてもグリーン近くから3打目を打てる。寄せワンでバーディだ。

蝉川のパー5の累計スコアは1位。KBCオーガスタはパー72設定でパー5が4つあるため、蝉川向きのコースと言える。

男子ツアーはパー71の設定が多く、その場合はパー5のホールが1つ減る。4ラウンドで4ホール減ることになる。パー70の場合はパー5が1ラウンドで2つ減る。パー5が減るのは蝉川にとってはマイナスだが、KBCオーガスタではそのマイナス要素を背負わずに済む。

ちなみにパー4の累計スコアも良く、2位タイに入っている。パー5が減っても問題ないと感じるかもしれないが、問題はある。順位だけを見ると差が小さくても、詳細を見ると差は小さくない。

蝉川のパー5の累計スコアは2位の選手より計16ストローク良い。一方、パー4の累計スコアは1位の選手より計18ストローク悪い。両方とも差が大きいのだ。しかも、パー5の累計スコア2位も、パー4累計スコア1位も中島。パー5とパー4の累計スコア合算は蝉川が-154で中島が-156となり、ほぼ同じ。

中島に勝つことを考えた場合、パー72でパー5が多くパー4が少ない設定は蝉川の背中を後押しする。

蝉川泰果と中島啓太のパー5とパー4の累計スコア比較

蝉川泰果と中島啓太のパー5とパー4の累計スコア比較

■トータルポイントランキングトップ

平均ストローク、平均パット、パーキープ率、パーオン率、バーディ率、イーグル率、ドライビングディスタンス、フェアウェイキープ率、サンドセーブ率の、9項目の順位を合算して順位付けした、メルセデス・ベンツトータルポイントランキングが蝉川は1位。2位の中島を26ポイント引き離している。

ただ、この中の成績に直結する平均ストロークは3位で、2位の中島や1位の金谷巧実とは0.5以上の差がある。4ラウンドすると2打以上の差があることになる。

この平均ストロークの差を縮めることができると、賞金ランキングでも中島との差が縮まりやすくなる。パー5が多いKBCオーガスタはその絶好の舞台となるだろう。

■賞金ランキングトップ中島啓太との比較

蝉川は中島と同学年。昨年はプロデビュー前まで、JGAのナショナルチームでともに過ごした。アマ時代とプロデビュー後合算の勝利数は現時点でともに3勝。

今シーズンだけでなく、今後長きにわたり、日本ツアー、さらには世界のツアーでしのぎを削るであろう蝉川と中島。次代の日本のエース候補2人の今季の主要スタッツを比較すると、攻撃力の蝉川とオールラウンダーの中島、という特徴が表れている。

蝉川はバーディ率、イーグル率、パーオン率が、それぞれ1位、2位、3位とトップレベルであるのに対して、平均パット数(ラウンド)の順位が63位と下位だ。安定してパットのタッチを合わせられるようになれば、成績がより高いレベルで安定する。

中島はパーキープ率、パーオン率、バーディ率がすべて2位。平均パット数(ラウンド)が34位と良くないが、パーオン率が高い場合、上位に入ることは難しい部門なので、“まずまず”と評価して良いかもしれない。

サンドセーブ率が63位となっており、これが理由でメルセデス・ベンツトータルポイントランキングで蝉川に負けているが、分母(バンカーに入る数)が小さく、成績に大きな影響は無いので気にしなくて良いだろう。

横浜ミナトChampinshipでの蝉川のプレーを振り返ると、最終日の大事な局面で最大の武器であるドライバーが足を引っ張った。1オン可能なパー4で1オンを狙ったものの、大きく曲げてこのホールをダブルボギーとしたことで、中島の落ち着いた安定感抜群のプレーに1打及ばず、プロ2勝目を逃した。今週、同じミスは繰り返さないだろう。

昨年大会は日本ツアーナンバー1の飛ばし屋河本力が優勝した。今年も臆せずドライバーを振りぬく攻撃型の選手、蝉川が優勝しそうな気がする。“タイガチャージ”が炸裂するか注目だ。

蝉川泰果と中島啓太のスタッツ比較
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著者プロフィール

野洲明●ゴルフ活動家

各種スポーツメディアに寄稿、ゴルフ情報サイトも運営する。より深くプロゴルフを楽しむためのデータを活用した記事、多くのゴルファーを見てきた経験や科学的根拠をもとにした論理的なハウツー系記事などを中心に執筆。ゴルフリテラシーを高める情報を発信している。ラジオドラマ脚本執筆歴もあり。