ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平は、今季打率.304、44本塁打、95打点で自身初の本塁打王を獲得。日本選手ではイチロー以来となる打率3割を達成するなど、力強さに加え、確実性も年々進化を遂げている。
ここでは公式データを元に打者・大谷にフォーカス、メジャー6年間の軌跡を紐解いてみたい。
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■“好球必打”で見られなくなった規格外の一発
大谷の打撃で今季もっとも目覚ましい成長を見せたのが、際どいボールの見極めだ。かつて目立っていた「悪球打ち」の減少が打率アップに大きく影響を及ぼしている。
MLB公式『Baseball Savant』では、投球コースを4つの大まかなエリアにカテゴリー分けしている。コース真ん中付近の“甘い”部分を「Heart」、ストライクゾーンの境目をグルリと囲む「Shadow」、やや外れたボール球を「Chase」、大きく完全に外れたコースを「Waste」と呼ぶ。
6年間のメジャー生活で、大谷がボール球「Chase」を本塁打にしたのは通算3回。最初は2018年の4月27日(日本時間28日)、まだ細身だった身体で相手先発ルイス・セベリーノ(ニューヨーク・ヤンキース)のインコース低めに外れたフォーシームを軽々と右翼へ運んだ。
そして、印象的なのが2本目。2021年の5月17日(同18日)に放った、この年の13号アーチは圧巻の一発。本拠地でのクリーブランド・ガーディアンズ戦、相手左腕サム・ヘンゲスの4球目フォーシーム、外角高めに大きく外れたボール球を捉えると、打球は速度105.9マイル(約170.4キロ)で瞬く間に右翼スタンド中段へと吸い込まれた。
3本目は2022年の8月4日(同5日)に打った24号、こちらは1本目と似たようなインコースに大きく外れた低めのボール。背中側から入ってくる左腕のスライダーを完璧に打ち砕いている。
大谷は昨季.223と苦しんだ際どいコース「Shadow」において、今季は打率.300をマーク。ボール球コンタクト率が60.2%から51.5%に改善し、より“好球必打”に磨きがかかった。信じられないコースをスタンドまで運ぶ、漫画のような本塁打は昨季以前の粗削りだった時期にしか見られない。未完成がゆえの副産物だったとも言えるだろう。
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文●有賀博之(SPREAD編集部)