“大井の帝王”的場文男が語る騎手生活50年 「10センチの絆」でひた走る半世紀

 

的場文男
ジョッキー生活50年を迎えた大井の帝王・的場文男騎手(C)SPREAD

■「なんだ、あと151勝か」目の前に現れた7151勝

50年間続けてこられた原動力のひとつには、佐々木竹見元騎手が持つ「7151勝」という記録もあった。5000勝、6000勝の時には佐々木元騎手の記録に追いつこうという気持ちは持っていなかったが、7000勝に届いたときに“なんだ、あと151勝か”と思ったと言う。「なんだ」と思えるその感覚は、すでにこの時点で騎手生活44年を迎えていたレジェンドだからこその“境地”と言えるだろう。

「そこから30勝やそこらを抜いただけで辞められない」と思いながら、騎手生活50年が過ぎ、すでに7420勝(11/1時点)まで記録を伸ばしている。

地方競馬最多勝記録の7152勝は大井で達成し、多くの関係者、ファンに祝福された

地方競馬最多勝記録の7152勝は大井で達成し、多くの関係者、ファンに祝福された(C)TCK

競馬開催がない日は奥様と買い物、競艇を見に行くなど夫婦の時間を大事にする。また4歳のお孫さんにもメロメロなようで、休日はいっしょに遊んでいると、優しい笑顔がこぼれた。勝負師としてプロフェッショナルな姿勢を見せ続けるが、開催がない日は大事な家族と過ごすことでオンオフを切り替える。長年続けてこられたのも、家族の支えがあったからこそだろう。

家族の話題となる白い歯が溢れる(C)SPREAD

■半世紀が物語る努力の結晶「馬と接触するのは10センチ」

今後の目標は「ひとつひとつどこまで乗れるか」と、今も騎手を続けるために目の前の1勝に重きを置く。そして騎乗姿勢も大事だと話しながら、おもむろに見せてくれたのが的場騎手の内くるぶしだ。いわゆるタコのようになっていて、アルミ缶を潰せるほどに硬くなっていた。

「馬と接触するのはこの脚の10センチだけ。ここを締めて乗ることで、ブレずに馬に負担をかけない姿勢を保つことができる。重心が前に行き過ぎないよう馬が走りやすい姿勢を取れるんだ」と、熱く語った。

的場文男

長年の騎乗生活により、左右のくるぶしには足の親指より大きい「たこ」ができている(C)SPREAD

騎手がレースで馬と接触する箇所は脚の一部のみ。鐙も足先で踏む程度でとてつもない体幹でバランスを取り、馬の邪魔をしない走りやすい姿勢を取ることが騎手の仕事だ。4万3千回も騎乗してきた的場騎手の内くるぶしがそれを物語っていた。

また50年という月日は地方競馬の体系にも大きな変化をもたらす。

南関東の三冠レース「羽田盃」「東京ダービー」「ジャパンダートダービー」が2024年より新たなダート三冠として、JRAや他の地方所属馬に解放されることになった。それを受けて、「どうしたって中央の馬は強いけど、大井の馬もがんばってもらいたい。ミックファイアみたいな馬が出てきたらおもしろいよね。地方から中央勢を破る馬は出てくると思うよ」と今後に期待を寄せる。

続けて、「競馬は展開があっておもしろい。大井では差しも決まるし予想を楽しめるスポーツ」と、ジョッキー目線でも展開を読む楽しさがあるような口ぶりで魅力を伝えた的場騎手。今もなおレースを楽しみ、勝負にストイックな姿が垣間見えた。

生きる伝説として“大井の帝王”的場文男の挑戦は続く。

(取材・文●Asuka.F/SPREAD編集部)

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