■国内マイル戦線の空洞化
クラシックの価値が高い日本では、血統も中距離が主流であり、育成もその長所を伸ばすように施される。今年の牝馬クラシックではオークスで800mの距離延長がほぼ話題にならなかった。かつては桜花賞に強いマイラータイプが距離延長に挑むという図式だったが、最近はアーモンドアイ、デアリングタクト、リバティアイランドの牝馬三冠馬に象徴されるように、中距離型が絶対能力でマイルをこなすパターンが多い。中距離に根を張った日本の生産界には強烈なマイラーが誕生しにくくなっている。
2019年以降、古馬マイル重賞の種牡馬別成績をみると、ディープインパクト19勝、ロードカナロア7勝、キズナ5勝、ハーツクライ、ステイゴールド、ルーラーシップ、ハービンジャー4勝。ディープインパクト、ハーツクライは産駒数が減る一方であり、ルーラーシップは4勝中3勝がソウルラッシュ、ハービンジャーも2勝がナミュールで、残りは母として初年度産駒を送るノームコアの牝馬。どれもマイラーに特化した種牡馬ではない。
頼みはロードカナロアとキズナだ。ロードカナロア産駒のマイル重賞勝ちは2022年タイムトゥヘヴンが最後。今回敗れたレッドモンレーヴのような1400m向きやスプリンターが目立つ。なかには中距離にシフトする馬もいて、万能型になりつつある分、最近はマイルに特化した産駒が多くない。
同じことはキズナにも言える。4勝はソングラインであり、ノーザンファーム産のキズナ産駒ジャスティンミラノもマイルではなく、中距離の道を歩むだろう。クラシックを展望できる種牡馬としての期待が大きい。
ロマンチックウォリアーが抜群のスタートセンスとどんな流れでも位置をとって乗れる才能をもったチャンピオンであることを認めつつ、強い弱いという単純な問題ではなく、日本競馬の構図を浮き彫りにしたのではないか。
■日本競馬で欠かせない「マイラーの血」の行方
マイルは競馬の根幹をなすとされる。マイル路線の充実も日本の競馬が発展するためには欠かせないだろう。日本生産馬の強みであるスピードを支えるマイラーの血はいずれ必要になるはずだ。
そういった意味で今秋、さらに翌年にかけてA級マイラーとして期待するならNHKマイルCを制したジャンタルマンタルか。3着に終わった皐月賞、NHKマイルCをみても、スピードの持続力に優れており、マイラーとしてのスケールを感じる。初年度からマイル重賞勝ち馬を2頭出したパレスマリスは有望だ。
そして今年、初年度産駒を送るサートゥルナーリアも期待したい。父はロードカナロアで、現役時代は2000m以下を5勝し、産駒からマイラータイプが出現する予感もある。ロードカナロアとシーザリオ、どちらの特徴が強く出るのか、今後の活躍に期待しよう。
国内マイラーという意味では2着ナミュールもまだまだ注目だ。ドバイから強行スケジュールで安田記念まで出走しながら、前走より成績を上昇させた。今春の経験によって、さらに逞しくなった印象すらある。ロマンチックウォリアーには完敗だったが、ソウルラッシュとの競り合いに勝った。450キロ前後の馬体で500キロ以上ある雄大なマイラーに挑む姿に惚れ直した。
ドバイ同様、最後のしのぎ合いでみせた力強い走りに、まだまだこんなものでは終わらないという叫びがきこえる。秋のマイルGIはもちろん、繁殖としても同じ父を持つノームコアの活躍次第では、さらに期待も価値も高まるのではないだろうか。
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著者プロフィール
勝木淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬ニュース・コラムサイト『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』( 星海社新書)などに寄稿。
















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