【NPB】シーズン未勝利のどん底から沢村賞獲得 中日・大野雄大の復活

■巨人・菅野との一騎打ちを制す

故・沢村栄治氏の功績を讃えもっとも優れた先発完投型投手を決める「沢村賞」選考委員会は、中日大野雄大にその栄誉を贈った。大野雄は10シーズン目にして初受賞。

大野雄は今季20試合に登板し、11勝6敗、防御率1.82、奪三振148、投球回148 2/3、10完投6完封で最優秀防御率と最多奪三振のタイトルを獲得した。

ナゴヤ球場で23日に会見した大野雄は「連絡をいただいた時はすごくうれしかったです、自分自身が候補にあがっているのは知っていましたし、もしとれるのであればうれしいなと思っていたので、少しソワソワしていました。それがうれしさに一気に変わって、横に妻がいたので、二人で喜んでいました」とコメントしている。

球団では2004年の川上憲伸以来、9人目となる沢村賞受賞となった。

堀内恒夫選考委員長は「菅野も数字は拮抗しているが、ベストワンは大野雄という意見が大半を占めた」と説明。「沢村賞」は大野雄と巨人・菅野智之の一騎打ちだった。

菅野と大野雄は今季どちらも20試合に登板し、菅野は14勝2敗、大野雄は11勝6敗。菅野はプロ野球新記録となる開幕投手13連勝を達成するなど、勝率だけを比較すれば菅野を上と見てもいい。しかし、菅野は3完投3完封、大野雄は10完投6完封と、試合を支配していたのは、明らかに大野雄のほうだった。

■圧倒的な完投能力を見せた2020シーズン

2020年6月19日、開幕投手として神宮のマウンドに立った大野雄だが、4回6失点と先発の役割を果たせず。そこから6試合に登板し、0勝3敗。6試合中3試合は6回2失点以上の投球をするも、打線の援護に恵まれず、勝ち星が付かなかった。

7試合目となる7月31日ヤクルト戦は9回3失点、打線の援護もあり初勝利。これをきっかけに大野雄の快進撃が始まる。以降、6連続完投や45イニング連続無失点と支配的な投球を続け、終わってみれば10完投と防御率1.82。

21世紀で10完投と防御率1点台の成績を挙げたのは、ダルビッシュ有田中将大、そして大野雄の3投手のみ。今年は連戦が多く、リリーフ陣の連投が続く中、完投して休ませたのは素晴らしい。

加えて、投球回148 2/3で与死球0という数字。これは歴代の「沢村賞」受賞者の中でも3人しかいない。さらに四球23は規定投球回に達した投手の中で一番少ない数字だ。無駄な四死球を出さずに、少ない球数で抑えたことも、10完投という現代野球において難しい数字を達成できた要因と考える。

■2018年未勝利から翌年、ノーヒットノーラン投手へ

そんな大野雄だが、シーズン0勝という時期もあった。2018年は6試合に登板し、0勝3敗、防御率8.56。それでも翌2019年、この年に就任した与田剛監督は、4月2日の本拠地開幕戦のマウンドに大野雄に託した。結果は7回4失点も、復活のきっかけを掴んだ登板だった。

同年9月14日には、ノーヒットノーランを達成、この年は26試合に先発し、9勝を挙げて防御率2.58。自身初となる最優秀防御率のタイトルを獲得し、11月の世界野球WBSCプレミア12の日本代表にも選出され、侍ジャパン初優勝にも貢献した。

まさにどん底からの復活を遂げる形となった。

この年は前年に比べるとストレートの球威が上がり、ストレートで奪った三振はリーグ最多の86個と、速球で押す投球に変化。ストレートの威力が増したことで、変化球でバットに空を切らせるシーンも多くなった。

何より、前年0勝の投手に開幕を任せた陣営の信頼関係が、大野雄のメンタルを強く成長させたのかもしれない。

■大野雄大を中心に投手王国復活を見たい

2018年の0勝から、2019年にノーヒットノーラン、そして2020年に「沢村賞」と、見事な復活劇を見せた大野雄大には、大エースとして、さらなる進化を求めたい。そんな中日ファンにとって11月11日に朗報が入った。大野雄はFA宣言せずに残留することと、中日スポーツが報じた。

大野雄の残留は中日ファンにとって歓喜の瞬間だろう。来季、優勝を狙うにあたり、エースの残留は絶対条件になる。大野雄の活躍もあり、チームは今年8年ぶりにAクラスを決めた。大野雄を中心とした投手王国復活で10年ぶりの優勝を虎視眈々と狙う。

■著者プロフィール

蛭間和也(ひるまかずや)●アスリートの素顔を伝えるメディア『SPREAD』編集部員
AI・ITコンサルティングを経て「世界中の1人でも多くの人にスポーツを好きになってもらう」という志で現職に。好きなプロスポーツチームは野球は中日ドラゴンズ、サッカーはガンバ大阪とアーセナル。
データ分析をもとにデータ+選手のエピソードをテーマにした記事を配信していくつもり。愛称は「ヒルマン」。

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