【野球】広島の新助っ人・クロンは“エルドレッド2世”? データから浮かぶスラッガーの資質

ダイヤモンドバックス在籍時のクロン (C)Getty Images

2020年の広島はシーズン中一度も首位に立てず、佐々岡真司監督の初年度でありながら8年ぶりの5位という苦しい一年であった。

打線に目を向けると、堂林翔太のブレイクなどはあったが、全体的にパワー不足が目立ち、主軸の鈴木誠也が孤立してしまうケースも見受けられた。

その課題を埋めるべく補強したのが、まだ27歳と若いケビン・クロンだ。MLBでの実績はほとんど無いが、それでも長打力への期待を持たせる数値が残っており、マイナーでは上々のスタッツを出してきた。これまでの成績やデータからクロンの特徴や課題を分析したいと思う。

■マイナーでは20本塁打以上、MLBでも長打力を発揮

ダイヤモンドバックス在籍時のクロンの年度別成績

クロンは2014年のドラフト14順目でアリゾナ・ダイヤモンドバックスに入団。2015~2019年はマイナーで経験を積み着実にステップアップし、この間は全てのシーズンで20本塁打以上を記録している。

2019年にメジャーデビューを果たすと、39試合の出場で6本の本塁打を放った。この年は打率.211、出塁率.269に対して、長打率は.521となっており、長打力はメジャーレベルでも十分に通用することを証明した格好となった。

■データで浮かび上がるスラッガーとしての素養

今季セ・リーグでプレーする主な新助っ人の打球詳細(2019年)

クロンの長打力は、打球における「バレル」(※1)の数値でも表されている。MLBで一定数の出場機会を得た2019年のバレル率は実に22.7%だ。

この数字は、2021年から巨人に加入するジャスティン・スモーク(11%)やエリック・テ―ムズ(9.3%)を圧倒するだけではなく、2019年のMLB全体でも5位という圧倒的なものとなっている(※2)。

マイナー6年間で通算151本塁打を残していることもあり、クロンは打球を遠くに飛ばすスラッガーとしての「コツ」を掴んでいると考えるのが自然だろう。

※1 打球速度と打球角度から算出される指標。打球速度に応じて8〜50度の範囲で適切な角度は変動するが、この「バレル」のゾーンで放った打球ほど、長打になる確率が高くなる。
※2 対象は25本以上の打球をフェアグラウンドに飛ばした選手

■苦手球種はカーブ・スライダー系

長距離砲らしく、クロンの打球方向はマイナー、MLBのどちらでも4割強がレフト方向だ。しかし、逆方向にも3割ほど弾き返す柔軟な一面も。打球に占めるフライの割合も通算で約4割ほどと高い数値が残っている。

球種別の成績を見てみると、2019年は直球に対しての打率は3割を超えるが、変化球を苦手としており、特にカーブ・スライダー系に対しては23打数2安打、11三振と非常に苦にしていた。

2019~20年 相手投手がクロンに投じた球種とコース 出典:Baseball Savant

2019年~2020年に投じられた球種別チャートを見ても、「直球は内角高め」「変化球は外角低め」に集中する傾向があり、クロン自身もこのコースに対しては打率を大きく落としている。NPBでも同様の攻め方に直面した際に、いかに対策をするかが活躍へのカギとなりそうだ。

2019~20年 クロンのゾーン別打率 出典:Baseball Savant

■積極的にスイングも、コンタクト力には不安も

苦手ゾーンがはっきりとしているクロンだが、積極的にスイングする傾向が強い半面、ミート力の懸念も存在する。

初球をスイングする確率は通算42.9%(MLB平均は28.3%)。さらにゾーン外のボールをスイングする確率も42.0%であり、MLB平均(28.2%)を大きく上回っている。

ストライクゾーン内のボールに対してのコンタクト率が70.7%(MLB平均は82.8%)という点も不安材料だろう。

■「エルドレッドの再来」となるために必要なNPBへの適応

「長打力はピカイチ、しかしコンタクト力には不安あり」という米国での成績だが、広島には過去の実体験から「勝算」があるのではとも考えられる。

クロンをスカウトしたのは、7年に渡り広島でプレーをし133本塁打を放ったブラッド・エルドレッド。自身もクロンと同様の長距離砲タイプであったエルドレッドは、まだ年齢が若いクロンにNPB適応の可能性を見出したのかもしれない。

さらに、昨季15本塁打以上を放ったのが鈴木誠也のみというチーム状況的にも、「打率より本塁打」がクロンには求められており、そのスラッガーとしての素養に球団も期待をかけているはずだ。

クロンは入団会見でも「(日本の投手は)同じフォームから違う球速の球を投げ込んできたり色々な変化球を使ってきたり、投球術や組み立てがすごく違うと聞きましたので打者としてそのあたりの調整は行っていきたいと思います」と語り、既にキャンプにも合流し調整を進めている。

MLB時代の実績だけでは他球団の新助っ人に見劣りするかもしれないが、順当にNPBへの適応を成功させ自慢の長打力を発揮できれば、広島にとってはこれ以上はない補強となる可能性を秘めている。

データ・図表出典:Baseball Savant

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文・SPREAD編集部

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