賛否両論という表現が、短絡的で平凡な表現と感じてしまうほど、複雑な事情や思惑が絡みに絡んだ末に開催された感のある東京オリンピック2020とパラリンピックだが、そんな大人の事情はさておき、蓋を開けてみれば、やはり人間と人間が全力で競い合う姿に心動かされ、このスポーツの祭典に夢中になって魅入っている自分がいる。
なにより、出場する選手にとっては、この日を迎えるまでのすべての努力を思う存分発揮し披露する、またとない場が与えられたのだから、その意味では開催されて本当によかったと思う。そればかりは、ほとんどの人々が同意する部分だろう。
しかしその影で、この特別な祭典を目指し、出場選手と同様の努力と精進を重ねてきたが、オリンピック・フィールドへの参加が叶わなかった女性アスリート達がいる。
それは、この東京オリンピックから加わった新種目である「バスケットボール3×3(スリー・エックス・スリー)」の応援のために結成された選りすぐりの12名のチアダンサー、その名も『3×3 チアダンサーズ』だ。他の種目同様、バスケットボール3×3も無観客での実施ということで、本来はハーフタイム等で大いに選手を鼓舞し、観客や聴衆を盛り上げてくれるはずだったチアダンスの披露もまた、見送られてしまったのだ。
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■スピーディに展開される3×3コートならのチア
バスケットボール3×3(以後3×3)は、5人制のバスケットボールと違い、ひとつのゴールに対して文字通り3人対3人でシュートを行い、10分間1ピリオドで点数の高い方、もしくはどちらかのチームが先に21点を取った時点で時間内であっても試合を終了するというルールだ。もともとは、若者達がストリート・バスケットボールとして行っていたものを、2007年に国際バスケットボール連盟(FIBA)が世界統一のルールを制定して競技種目とし、この東京からオリンピックの正式種目となった。
3×3は、コートの広さが5人制バスケの約半分の大きさとなっており、観客はより間近な場所からの観戦が叶い、大きな選手達の迫力に満ちた動きを臨場感いっぱいに楽しむ事ができる。そしてそれは、チアダンサーの演技を見るときでも同様だ。これがアメリカン・フットボールだと、どんなに華やかでダイナミックな演技でも、観客席からはどうしても「遠目に楽しむ」ことになる。
しかし、3×3のコートなら、チア・ダンサー達の表情から息づかいまでをリアルに感じ、楽しむ事が出来る。それは中継カメラにとっても同じ事で、より至近距離からの撮影が可能となるので、画面越しから迫真の演技が視聴できるのだ。どちらにしてもバスケットボール競技とチア・ダンス両方の〝リアル″をより強く感じられるというのは観客にとって、とても贅沢な体験でもあり、それが3×3のユニーク且つ人気のポイントであるに違いない。
ところで日本では、チア・ダンスというと、まだまだ一般的には各競技の試合のハーフタイムに登場する華やかでアクロバティックな応援団、という”サブ的”なイメージが強いかもしれない。だが、本場アメリカでは1980年頃から各スポーツの応援の域を超えて、チア・ダンス自体が主役となる競技会が開催され、華やかさとポジティブなエネルギーで、いかに観客を魅了し惹きつけることが出来るかということを競う「表現するスポーツ」として進化してきた歴史がある。