【テニス】上地結衣、世界女王に敗れての銀はパリ大会金メダルへの序章

 

【テニス】上地結衣、世界女王に敗れての銀はパリ大会金メダルへの序章
女子シングルス・車いすテニスで銀メダルの上地結衣(C)ロイター

■作戦は女王の攻略に向けて完成されていた

そんななか上地はチェアワークのスピードを活かした粘り強さに加え、得意とするスピンとスライスを混ぜた高低差を使い相手を振り回した。そしてアクセントのようにテンポを速めたフォアでの攻撃を展開しエースを奪いガッツポーズを見せた。

ラリーではミドルクロスを使いデフロートをコートの外に追い出し、彼女の強打を封じ込める。時にはセンターの深い場所へ高めのスピンボールを送り、相手を後方へ押し下げながら打ち損じを狙い積極的に攻撃を続けた。リターンゲームでは思い切りのいいリターン力を発揮し、高返球率をキープ。ひたすら走り拾う姿勢も相手にプレッシャーを与え続けたことは間違いないだろう。

時折、アップテンポすぎるように見えた攻撃も、今までに女王に跳ねのけられた幾度の敗戦から見つけた勝機への糸口だった。リスクを追ってでも速い展開で主導権を握りたかったはずだ。

正直、今回の試合では、デフロートに主導権を握られ劣勢に立たされる場面が多かったかもしれない。しかし、相手のパワーショットを綺麗にプレイスメントする技術があることが今後も上地の大きな武器になる。常に向上を目指して来た上地のショットの威力が更に増してくれば、想定した展開の成功率も上がって来るはずだ。

デフロートが放つパワーショットとの攻防戦から逃げず、この技術を駆使し、コントロール精度がピタリと思うように打てれば、自ずと勝機は高まるだろう。それほど今回の上地の作戦は女王の攻略に向けて完成されていた。

■3年後のパリで、その夢を私たちに見せてほしい

リオ・パラリンピックで掴んだ初めての銅メダル。3位決定戦の相手は若きデフロートであった。それから5年後の今、彼女に敗れ銀メダリストとなった上地は自国開催のパラリンピックでシングルスのメダルを獲得した初めての女性となり、1992年バルセロナ大会以来、7大会連続でオランダ勢が独占していた女子テニス決勝の舞台において、オランダ人以外で初めて名を残したプレーヤーとなった。

そして同じチームジャパンとして戦った田中愛美がツイッターで「あの舞台でこんなにも観ていて人を熱くする試合、流石でした」と言うように、沢山の人々が上地の姿に心動かされたのは紛れもない事実だろう。

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翌日には大谷桃子と組んだダブルスで銅メダルを手にし、笑顔を取り戻した。男子シングルス決勝では国枝慎吾が快勝し、3度目の金メダルを獲得。最強伝説にまた新たな1ページを刻んだ。国枝が見せた偉業を目の前にし、上地は3年後のパリを見ているだろうか。「思い通りプレーをして金メダル」、またその夢を私たちに見せてほしいと願う。

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久見香奈恵(ひさみ・かなえ)

元プロ・テニス・プレーヤー日本テニス協会 広報委員

1987年京都府生まれ。10歳の時からテニスを始め、13歳でRSK全国選抜ジュニアテニス大会で全国初優勝を果たし、ワールドジュニア日本代表U14に選出される。園田学園高等学校を卒業後、2005年にプロ入り。国内外のプロツアーでITFシングルス3勝、ダブルス10勝、WTAダブルス1勝のタイトルを持つ。2015年には全日本選手権ダブルスで優勝し国内タイトルを獲得。2017年に現役を引退し、現在はテニス普及活動をはじめ後世への強化指導合宿で活躍中。国内でのプロツアーの大会運営にも力を注ぐ。

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