株式会社ラリーアートの事実上の廃止から2年。三菱自動車はアメリカで年に一度開催されるパイクスピーク・インターナショナルヒルクライム(PPIHC)に世界初の量産電気自動車・ i-MiEV (アイ・ミーブ)の技術を盛り込んだMiEV Evolutionで挑戦することを発表する。

パイクスピークのMiEV Evolution Ⅲ(C)三菱自動車
パリ・ダカール・ラリーを2年連続で制覇し、ワークスチーム解散後は三菱自動車広報部の所属となっていた増岡浩氏を選手兼監督に、技術センターの社員を中心とした小規模なチームは精鋭エンジニアたちからなるとは言え、バックヤードビルダーのプライベートチームのようにも見えたのは正直なところではある。
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■パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム出場
だが海外のモータースポーツ専門会社によるチームではないがゆえ、市販車開発のエンジニアたちが現場に臨み、フィルターなしに体験として結果を持ち帰るのだから、それは文字通りに三菱自動車の「ワークス」 (ワーカーズか…)チームだ。そのチームが「ラリーアート」の名称を使うことはなかったが、電動車両での活動は新しい時代のモータースポーツの姿を示し、小さな光が見えたのも事実だ。

PPIHC応援フラッグ 提供:平賀一洋
パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムへの出場を「三菱ワークス復活」と報じた挑戦発表以降、メディアの扱いは小さかったが当時、三菱自動車の技術センターに勤務し自主的活動としてさまざまな応援企画を進めた三菱OB・平賀一洋氏によると、国内各事業所からの寄せ書き応援フラッグが集まるなど社内の盛り上がりは大きかったという。
平賀氏がPPIHCでの優勝の報を聞き、大急ぎで横断幕製作して掲示を申し出たところ、「事前予約のない掲示は不可」と、けんもほろろに却下されたとのエピソードは平賀氏には申し訳なくも、ほほえましく思える。

2014年のPPIHCでの優勝の報を聞いた平賀氏が作成した結果速報、幻の優勝横断幕デザイン 提供:平賀一洋
PPIHCへの挑戦から遅れること1年。2013年からはアウトランダーPHEVによるクロスカントリーラリー出場も始まった。国内外のチームとのジョイント、PPIHCと合わせて、2つのモータースポーツプログラムが並走する様子は将来の本格的活動再開への希望も更にふくらむ。
当初カラーリング以外は市販車然としたラリーカーだったが、フロントデザインに現在の三菱のアイデンティティーであるダイナミックシールドを採用する大がかりなフェイスリフトが行われ、2015年のラリーカーはそれに加え驚きのワイドボディをまとって姿を現した。
結果こそ完走のみとなったが、ボディにまで手を加えたアウトランダーPHEVラリーカーは期待を持たせるには十分だった。が、再びか三度か、三菱自動車を大きく揺るがす危機が訪れ、上昇機運に見えた電動車両によるモータースポーツも途絶えてしまった。

アウトランダーPHEV バハ・ポルタレグレ出場車(C)三菱自動車