■「二冠」達成に向けて
しかし、昨年の天皇杯制覇時に比べて大きく喜びを爆発させなかったのは年齢が嵩んだ選手が多いから、というだけでもなかっただろう。むしろ、どちらかと言えば、この天皇杯の優勝が彼らにとってはあくまで通過点だという思いがあるからではないか。
川崎は、毎年リーグ優勝候補の一角に数えられながら、Bリーグ創設以来、未だ頂点に立っていない。最高成績は初年度の2016-17年の準優勝だ。
昨年の記憶は、川崎の面々とファンの肌にヒリヒリと痛く残る。
2020−21シーズン、天皇杯制覇もした川崎は、レギュラーシーズン終盤に調子を上げ、最高の状態でポストシーズンへ入ったように思われた。しかし、シーズン中は3勝1敗(天皇杯決勝でも対戦し、ここでも勝利)としていた宇都宮ブレックス相手のプレーオフ・セミファイナルで完敗、スイープされ、またも優勝に手が届かなかった。
ベテランたちには「時間」がない。気持ちが充実していても肉体がついてこない、というターニングポイントはどの選手にもいつかはやってくる。川崎にはそう多くの「時間」は残されていないようにも思える。
今季、天皇杯決勝までの川崎は、27勝10敗でポストシーズン進出圏内のB1東地区3位。コロナの影響で試合数がチームごとで変わってくる可能性が高く、順位は勝率で争われる。天皇杯が終わりBリーグのシーズンは残り2カ月弱。佳境へ向かって、1つ1つの試合がより重みをましてくる。
この天皇杯制覇で、川崎に勢いはつくのか……。チームの空気は確かに良い状態でリーグ戦を再会できるだろうが、それが川崎をリーグ優勝に近づけるかどうかといえば、ほとんど関係がないとすら言える。実はBリーグ開始後、同一シーズンで天皇杯とリーグ優勝の「二冠」を達成したチームは皆無。Bリーグ以前まで遡れば2013−14シーズンにNBL時代の東芝ブレイブサンダースが達成したのが最後。
佐藤HCは天皇杯優勝後、チームへ向けてここからが「旅の始まり」と表現した。そして篠山は「本当に今年こそという思いは強い」と決意を新たにした。天皇杯では喜びを「抑えた」川崎、そのエネルギーは残りのシーズンで爆発させるために取っておいたのではないか。
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著者プロフィール
永塚和志●スポーツライター
元英字紙ジャパンタイムズスポーツ記者で、現在はフリーランスのスポーツライターとして活動。国際大会ではFIFAワールドカップ、FIBAワールドカップ、ワールドベースボールクラシック、NFLスーパーボウル、国内では日本シリーズなどの取材実績がある。










