■4度も悔しい思いをした西口投手
2005年8月27日、西武ライオンズの西口文也投手は楽天イーグルス打線を沈黙させ、9回終了までパーフェクトに抑えた。しかし、西武打線にも援護がなく、0-0のまま延長戦へ。西口は10回もマウンドに立ったが、先頭の沖原佳典にヒットを打たれてしまった。試合はその裏に西武が得点を上げ、「最も残念な完封勝利」となった。
なお、西口投手は1996年の近鉄バファローズ戦で1回の2番打者にヒットを打たれた後、その後の26人を完璧に抑える「準完全」を達成。2002年のロッテマリーンズ戦、2005年の読売ジャイアンツ戦では、9回二死までの「あわやノーヒットノーラン」を経験している。とことん記録に縁のなかった投手といえる。
■誤審で幻となったパーフェクトゲーム
メジャーリーグにも完全未遂はある。2010年6月2日、デトロイト・タイガースのアーマンド・ガララーガ投手は、9回二死までクリーブランド・インディアンズを完璧に抑えていた。そして、27人目の打者を一塁ゴロに打ち取り、自らファーストのベースカバーに入ってパーフェクトゲームを達成したかに思えた。
しかし、一塁線審、ジム・ジョイスは、これをセーフと判定。内野安打となって完全試合は幻に終わった。ガララーガは抗議もせずに判定を受け入れたが、試合後のビデオ確認で明らかな誤審であることが判明、ジョイスもそれを認めた。
■連続アウトの世界記録は更新中
4月17日の試合終了後、佐々木朗は「チームが勝つために仕事ができた」と、淡々と語った。ファンが熱くなるほどには、選手は記録に執着していないのかもしれない。
この試合で、佐々木はサンフランシスコ・ジャイアンツのユスメイロ・ペティットが2014年に記録した46打者連続アウトのメジャー記録をも更新。4月3日の西武戦において8回2死から鈴木将平にツーベースを許した後、岸潤一郎を三振に切って取って以降、3試合にまたがり52打者連続アウトとして記録更新中だ。ペティットはリリーフとしての記録ではあるが、佐々木は先発のみでの達成。それだけにさらに価値を見出すことができる。
次のパーフェクト投球はあるのか……。記録はどこまで伸びるのか……。
令和の怪物が登場する試合は全国でチケット完売となりそうだ。
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著者プロフィール
牧野森太郎●フリーライター
ライフスタイル誌、アウトドア誌の編集長を経て、執筆活動を続ける。キャンピングカーでアメリカの国立公園を訪ねるのがライフワーク。著書に「アメリカ国立公園 絶景・大自然の旅」「森の聖人 ソローとミューアの言葉 自分自身を生きるには」(ともに産業編集センター)がある。デルタ航空機内誌「sky」に掲載された「カリフォルニア・ロングトレイル」が、2020年「カリフォルニア・メディア・アンバサダー大賞 スポーツ部門」の最優秀賞を受賞。