ジャパンラグビー・リーグワンはリーグ戦がすべて終了し、いよいよプレーオフ・トーナメントを迎える。5月21日、22日には準決勝2試合、28日に3位決定戦、29日に決勝戦というスケジュールだ。リーグワン初年度王者はどのチームか、展望をしてみたい。
リーグ戦後半を盛り上げたのは、東芝ブレイブルーパス東京だった。圧巻は、15節で東京サンゴリアスを破った一戦だ。試合前、リーチ・マイケルが「府中には東芝のファンが多い」と話したとおり、「東芝府中」としての全盛期を知るファンにとって、この試合にかける期待は大きかった。
勝てばプレーオフ進出がほぼ決定、昨年9位、2018-19シーズン11位からの復活、相手のサンゴリアスが同じ府中を本拠地にする「府中ダービー」と、期待が高まる条件がそろった。雨の中、1万人以上が集まった味の素スタジアムは東芝の応援に分があった。
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■準決勝第1試合は、府中ダービー・リマッチ
試合は、ブレイブルーパスが気迫で圧倒。サンゴリアスの攻撃を開始4分のダミアン・マッケンジーのPGだけの、いわゆる「スミイチ」に抑え切った。攻撃では、前半34分のドライビングモールでのトライが象徴するように、前に出るかつての東芝ラグビーを彷彿とする迫力が際立った。試合後、サンゴリアスのミルトン・ヘイグ コーチも「フィジカルバトルで東芝さんが上回った」と完敗を認めた。
準決勝第1試合は、同じカードのダイレクト・リマッチとなる。チーム力で上回るサンゴリアスが立て直してリベンジするのか、6連勝と勢いに乗るブレーブルーパスが返り討ちにするのか、今シーズン一番の対戦になりそうだ。
■実質全勝のワイルドナイツの強さは一枚上
準決勝第2試合は、クボタスピアーズ船橋・東京ベイと埼玉ワイルドナイツという顔合わせとなった。実はこの試合も最終節からのダイレクトリマッチ。5月7日の試合は66分まで14-14の同点という接戦だったが、結果は35-14でワイルドナイツの勝利だった。
ワイルドナイツの強さは、相手にリードを許しても、試合終盤に押し切るところにある。ラグビーは最後の20分で実力差が出るといわれるが、まさにその通りの試合運びが持ち味だ。フォワードの第一列を後半に総入れ替えしてギアチェンジをする作戦は、その象徴といえる。記録上は2敗だが、いずれもコロナによる不戦敗。ピッチ上では一度も負けなかった。
スピアーズは昨年の躍進がフロックでなかったことを証明するシーズンだった。しかし、マルコム・マークス、バーナード・フォーリーのスプリングボックスの2枚看板が欠場してから失点が増え、チーム力が不安定になった感がある。準決勝での逆転は難しいかもしれない。
決勝は、ブレーブルーパスvsワイルドナイツというカードを見てみたい。ラグビーは番狂わせが少ない競技だが、だからこそ気迫で戦う東芝の下剋上に期待したい。もしもリーグワン初代優勝の勲章を掴めば、府中のファンは歓喜の涙にむせぶだろう。
なお、決勝がワイルドナイツ対サンゴリアスという昨年と同じカードになった場合は、予想が難しい。交流戦ではワイルドナイツが34-17で勝ったが、もつれる展開になれば、ひとつのプレーで勝敗が変わってしまう。いずれにしてもプレーオフが楽しみだ。
■トライ王はライリーと山下楽平が分け合う
最後に個人記録も確認しておこう。サンゴリアスのFBダミアン・マッケンジーは開幕から数節は調子が出なかったが、チームにフィットしてからは変幻自在なライン参加で大いにファンを沸かせてくれた。PG量産に加え7トライを上げて初代得点王を獲得した。
最多トライゲッター賞はワイルドナイツのCTBディラン・ライリーが11トライでトップを走っていたが、神戸コベルコスティーラーズのWTB山下楽平が最後の2試合で6トライと荒稼ぎしてタイトルを分け合った。
3位は10トライのワイルドナイツのWTB竹山晃暉とシャイニングアークス東京ベイ・浦安のFBイズラエル・フォラウ。フォラウはチームが10位と低迷するなかでの記録に価値がある。改めて超一流の実力を示したといえるだろう。
また、もっともラインブレークが多かった選手に与えられるベストラインブレーカーには、スピアーズのWTB根塚洸雅が22回で選出された。第2位はブラックラムス東京のアイザック・ルーカスだった。
プレーオフでは、初代タイトル・ホルダーとなった選手の動きにも注目したい。
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著者プロフィール
牧野森太郎●フリーライター
ライフスタイル誌、アウトドア誌の編集長を経て、執筆活動を続ける。キャンピングカーでアメリカの国立公園を訪ねるのがライフワーク。著書に「アメリカ国立公園 絶景・大自然の旅」「森の聖人 ソローとミューアの言葉 自分自身を生きるには」(ともに産業編集センター)がある。デルタ航空機内誌「sky」に掲載された「カリフォルニア・ロングトレイル」が、2020年「カリフォルニア・メディア・アンバサダー大賞 スポーツ部門」の最優秀賞を受賞。