■海外ではフルトン優位の評価も

井上との対戦合意が伝えられたフルトン(写真左) (C) Getty Images
フルトンの戦績は、21戦全勝(8KO)。KOが少ないために地味に感じるが、海外での評価はとても高い。日本では井上が圧勝するムードが流れているが、アメリカではフルトンの勝利を予想する声が多い。
参考になるのは、やはりフィゲロア戦だろう。当時のフィゲロアは、22勝(17KO)1分の戦績を誇る統一チャンピオンで、無敗だったルイス・ネリ(メキシコ)からKO勝ちでタイトルを奪って評価を上げていた。ネリといえば、山中慎介(帝拳)の13度目の防衛を阻んだことで日本でも記憶に鮮明だ。
この試合、前半はフルトンが長い距離を保って試合をコントロール。中盤から接近戦となり、フィゲロアが追い上げるという展開だった。スコアカードは、1人がドロー、あとの2人が116-112でフルトンを支持。改めて見直してみると判定は妥当で、フルトンが勝っていた。
■アウトボクシングでフルトン、接近してモンスター
では、フロトンvs井上がどんな一戦になるか、シミュレーションしてみよう。フルトンの利点は体格で上回ることだ。身長で4センチ、リーチでは8センチのアドバンテージがある。遠い距離からのジャブはもちろん、いきなり打つノーモーションの右ストレート、フックは避けづらいパンチだ。フィゲロア戦でも、このパンチで前半をリードしたことが勝利につながった。
相手のパンチを交わす勘とスピードも超一流。アウトボクシングに徹すれば、モンスターといえども強いパンチを当てるのは容易ではない。もうひとつ言えば、戦ってきた相手の質が高い。この経験が接戦でものをいうかもしれない
一方、井上が勝るのは破壊力だ。距離を詰めて強いパンチを振ることができれば、豪快なKOも期待できる。ただ、フルトンが強打のフィゲロア相手に接近戦でも互角に戦ったことを評価する声も大きかった。スリリングな打ち合いになるかもしれない。
この一戦、もちろんバトラー相手のように容易な展開は望めない。相手にアウトボクシングに徹されたままの展開となると井上の判定負けも否めない。井上はその破壊力で、フルトンを打ち崩せるか、これが鍵となりそうだ。
またアフマダリエフ陣営のプロモーターも、フルトン戦の後「井上との対戦準備はできている」としている。2023年、井上は一気に2階級4団体統一王者となるのか、それともモンスターが敗れる瞬間が訪れるのか…。
バトラー戦の前に、井上は「モチベーションが上がらない」「強い相手とやりたい」とこぼしていた。スーパーバンタム級には、バンタム級以上に強い選手がそろう。今年は3戦する、と宣言しているモンスター。メラメラと燃え上がる姿が見られそうだ。
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著者プロフィール
牧野森太郎●フリーライター
ライフスタイル誌、アウトドア誌の編集長を経て、執筆活動を続ける。キャンピングカーでアメリカの国立公園を訪ねるのがライフワーク。著書に「アメリカ国立公園 絶景・大自然の旅」「森の聖人 ソローとミューアの言葉 自分自身を生きるには」(ともに産業編集センター)がある。デルタ航空機内誌「sky」に掲載された「カリフォルニア・ロングトレイル」が、2020年「カリフォルニア・メディア・アンバサダー大賞 スポーツ部門」の最優秀賞を受賞。










