6年目を迎えた「ノジマTリーグ」の2023-2024シーズンで、新規参入チームとして注目を集めるのが静岡ジェード。前編ではTリーグ初の監督兼選手に就任した森薗政崇に、チーム発足から開幕に向けた道のりを聞いてきた。SNSを積極的に利用し、卓球教室やイベントも開催。オンライン、オフラインを問わず様々な方法でファンと交流を重ねてきた森薗に、卓球界における現代のファンと選手との理想の関わり方やアスリートのこれからついて尋ねた。
森薗政崇(もりぞの・まさたか)
●プロ卓球選手
1995年、東京都出身。BOBSON所属。青森山田中学校、青森山田高校、明治大学出身。2017年世界卓球男子ダブルス銀メダリスト(大島祐哉とのペア)。2018年から混合ダブルス(伊藤美誠とのペア)で全日本卓球選手権を3連覇。2023年には男子ダブルス(張本智和とのペア)で全日本卓球選手権を制した。2018年からは岡山リベッツで5シーズンプレーし、2023-24シーズンからは河村水稀氏が代表を務める静岡ジェードの監督兼選手に就任。
◆静岡ジェード・森薗政崇インタビュー 前編 Tリーグ界初“監督兼選手”の新たな挑戦「みなさんに楽しんでもらいたい」
■ツールの活かし方はアスリートの「共通課題」
日本では2020年に新型コロナウイルスが猛威を振るい、卓球界では学生の檜舞台であるインターハイが中止になるなどその影響が表れた。青森山田高校時代にインターハイを制した経歴を持つ森薗は、コロナ禍に高校生に無料の講演会を実施。経営者としての顔も持ち、卓球事業に取り組む森薗が彼らをサポートする手段として出会ったのが、アスリートがファンからの支援や想いを受け取れるスポーツギフティングサービス『Unlim(アンリム)』だった。
森薗は、コロナ禍において生まれたこのサービスについて、「『Unlim』のアスリートに対してファンが投げ銭をするシステムは発想としてすごく面白かったし、ほかの競技の人も助かったと言っていました」と語る。そのなかで、SNSが主流になり、個人の影響力を活かし活動することができるようになった現代の環境をどう活かしていくかは、今でもアスリートそれぞれに課せられた「共通課題」であるとする。それでも、「『Unlim』というフィールドができたのはコロナの時期でもあったし、みんなやるべきことができてありがたかったと思います」と行動を起こすきっかけとなったと述べている。
コロナ禍から徐々に日常が戻ってきたなかで、元々カテゴリー問わずに学生の大会を幅広く視察し、交流してきたという森薗。今後はオフラインでの活動にもさらに力を入れていくと意欲を見せている。
「元々僕は自分の時間が許す限り、小学生の全国大会から大学生の全国大会まで時間の許す限り行っていました。コロナになってしまったので、20校くらい相手にしてオンラインで話したんですけど、オフラインになって交流ができるようになるので、元々そういうことが大好きだから増やしていく予定はあります」。
■卓球界ならではのSNSのファン文化
また、Tリーグが開幕を迎えたなか、静岡ジェードという新規チームにどのようにファンをつけて浸透させていくか。プレイングマネージャーを務める森薗は、ファンと選手、チームをどのように結びつけるかには日々思考を巡らせている。そのなかで現代の選手とファンを結ぶSNSを介したオンラインでのつながりには、卓球界ならではの特徴があると語る。
「今SNSが増えて、X(旧Twitter)なのかインスタなのかThreadsなのか。層が分かれると思うんですけど、卓球はXが主戦場になっています。特にXにいる人たちは活字を目で追うことが多いので、映像や写真よりも情報。『誰がどこで何をしている』か。そういうのをオンタイムで知りたい人たちが集まっていると思うし、卓球の場合はコアなファンが多いです」。
森薗はTリーグでファンがつく流れについて、「チームではなく選手にファンができている」と分析している。そのなかで、「選手たちが移籍した時にファンも移動していく。ずっと人の魅力に引き付けられながら(ファンが)移動していく特色があります」と語り、選手獲得の際に条件に挙げた“頑張り切れる選手かどうか”は静岡ジェードのチームカラーを作るだけでなく、個々に熱心なファンがつくことにつながり、選手人気から相乗効果でチームの盛り上がりに結びつくと期待を寄せている。