秋華賞、菊花賞が終わり、2021年世代の三冠は幕を閉じた。牝馬は桜花賞ステレンボッシュ、オークスと秋華賞をチェルヴィニアが勝ち、二冠達成。ステレンボッシュは牝馬三冠1、2、3着、チェルヴィニアは13、1、1着。三冠完走はこの2頭のほかには8、4、15着のクイーンズウォークだけだ。
1600mからスタートし、2400、2000mと続く牝馬三冠は連動する傾向にあり、リバティアイランドが牝馬三冠を決めた昨年は8頭。それが3頭と半数以下にとどまっており、約半年続く三冠ロードを完走するのは容易ではない。春から夏を挟み、秋まで。トップ戦線に身を置きながら、状態を維持する難しさは大相撲の大関昇進に必要な目安3場所合計33勝に近い。半年間かけて三度ピークを迎える仕上げにかける陣営の労力には敬意を表する。
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■ライバルの手の内も知るルメール騎手
一方で、二冠達成のチェルヴィニアは桜花賞を約5カ月ぶりの休み明けで13着。ここから二冠達成なので、完走とはいえ、ステレンボッシュとはニュアンスが異なる。とはいえ、順調さを欠いた状況にあったことを思えば、よく立て直してきた。だからこそ、秋華賞で再び状態をピークにもってこられたのだろう。完走3頭と消耗の激しい世代だけに、ステレンボッシュは三度目のピークを迎えきれなかったか。直行ローテを歩み、レースでの消耗を極力避けても、夏の酷い暑さなど立ちはだかる壁は多かった。
秋華賞ではクリストフ・ルメール騎手の安定したレース運びも二冠をアシスト。スタート直後、枠なりにまっすぐ進路をとり、行きたい馬たちをやり過ごしつつ、1コーナー手前から内に押し込められないよう外へ持ち出す。内回りでは初角の入りはカギになる。ルメール騎手は決して騎乗馬の機嫌を損ねるようなことはしない。つねに気分よく走らせるのもルメール流だ。
そして勝負所へ。ライバルのステレンボッシュは自身の背後にいる。早めに進路を作りに外へ持ち出せば、その内を突かれる。実際、ステレンボッシュは桜花賞でアスコリピチェーノの内から抜け出した。ルメール騎手は阪神JFでステレンボッシュに騎乗し、2着。相手のこともよく知っている。いつでも動けるポジションを序盤で固め、勝負どころではじっくり相手の動きを見極める。実に冷静だ。
ステレンボッシュは外に行かざるを得ず、脚を使わされた。当然、外に出さなければ、チェルヴィニアも進路を探すことになる。ここも前にいるラヴァンダの動きを見定めて、的確に抜け出した。最後までチェルヴィニアに余計な動きを強いない。気持ちよく走らせるルメール騎手の流儀が凝縮したレースだった。