「井上尚弥 vs. キム・イェジュン」を展望 日本人7戦全勝の“トラブルメーカー”を分析 ボクシング史上最大の番狂わせは起きるのか……

「井上尚弥 vs. キム・イェジュン」を展望 日本人7戦全勝の“トラブルメーカー”を分析 ボクシング史上最大の番狂わせは起きるのか……
井上尚弥(c)SECOND CAREER

WBAスーパー、WBC、IBF、WBOスーパー世界スーパーバンタム級王者、井上尚弥(大橋)の4団体防衛戦が24日に有明アリーナで行われる。

すでに報道されているようにWBO世界同級1位のサム・グッドマン(オーストラリア)が練習中の負傷により棄権。防衛戦の相手が急きょ、キム・イェジュン(韓国)に変更された。

はたして、代役挑戦者はどんな選手なのか。キムの分析を中心に試合を展望したい。

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■2度の長期離脱を乗り越えた苦労人

キム・イェジュンの戦績は21勝(13KO)2敗2分。32歳のサウスポー中心のスイッチヒッターで、WBOオリエンタル、IBFアジアという地域タイトルを獲得したことがある。現在、WBO世界スーパーバンタム級11位にランクされており、タイトル挑戦資格の15位以内という条件はクリアしている。

デビューは井上と同じ2012年。デビュー2戦目に最初の黒星を喫しているが、相手は後にOPBF王者となるノ・サミョン(韓国)だった。その後、連勝を重ねてIBFの世界ランク10位まで上昇、世界タイトル挑戦の期待が高まったが、16年に日本のストロング小林佑樹(六島)との試合で左肘を負傷し2年のブランクを作ってしまった。

18年に復帰するも、今度は左肩を負傷。コロナ禍もあり、再び3年間のブランクを作ってしまう。全盛期における2度の長期離脱はボクサーにとって致命的だが、それを乗り越え、22年にキムはまたも復帰。なんとオーソドックスからサウスポーにスタンスを変えて戦い始めた。

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■失うものは何もない。挑戦者は思い切りのいい試合を

再復帰後の4戦はメキシコ、アメリカ、オーストラリア、タイと、すべて海外のリングに上がっている。アメリカでの試合は僅差の判定で落としたが、昨年、タイで行われた直近の試合では勝利してWBOオリエンタルのベルトを奪取した。日本でもお馴染みのジェイソン・モロニー(オーストラリア)のスパーリングパートナーも務めている。

2度の大きな挫折から立ち直ったところに降って沸いた代役での世界タイトル挑戦。しかも、相手がパウンド・フォー・パウンドの井上尚弥とくれば失うものは何もない。思い切り自分の力をぶつけるだけだ。むしろ、試合内容が読めていたグッドマンより意外性があって面白い。無欲の挑戦者に、思い切りのいい試合を期待したい。

■モンスターには1ラウンドKOを期待

キムの戦績で光るのは、日本人との対戦が7戦全勝5KOという相性の良さ。前述のストロング小林は元WBOアジアパシフィック王者で、そのほかも日本タイトル級の選手が名を連ねている。アジアでは一定の力があると考えていい。

過去の試合を見ると、一発の破壊力はないがたたみかける連打には迫力がある。有効打を当ててモンスターをロープに追い詰めるシーンを作りたい。もし、キムが4本のベルトを取るようなことがあれば、ボクシング史上における最大の番狂わせとなる。

1980〜90年代、コリアン・ファイターは日本人と何度も死闘を繰り広げるライバルだった。しかし、韓国ボクシング委員会の内紛などがあり、近年は低迷、18年間も世界チャンプが出ていない。挑戦者は韓国の期待を背負ってリングに上がる。

しかし、力の差はあまりに歴然としている。モンスターに気の緩みがない限り、中盤までに試合は終わるはずだ。実力差を見せつけて、1ラウンドからKOを狙ってほしい。もし井上がKO勝ちをすれば、ジョー・ルイスが持つ世界戦25KO勝利の記録にあとひとつと迫る。

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