マリア・シャラポワのハングリーさと多才さ
遠い存在となった彼女の活躍は本当に素晴らしかった。
テニスコートでは、長身から放たれるビッグサーブを武器に主導権を握り、果敢にフラット気味のストロークで相手を圧倒した。
普段のトレーニングから取り入れていたヨガにより、柔軟性を生み出すだけではなく、呼吸のコントロールと精神統一が、試合で十分に発揮されているように見受けられた。
ポイント間の20秒を有意義に使い、迷いのない表情で次に向かって行く。彼女の姿は、精神的な「強さ」を象徴しているように感じられた。
サービスを打つ前には、少しばかりの後れ髪を耳にかき上げ、ボールを地面に2回ついてからサービス動作に入る。
そんな彼女が創り上げてきたルーティンも、もう見られないのかと思うと、正直寂しい。

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彼女の勝利への執着は、幼少期から父ユーリさんと共に、人生をテニスに懸けたハングリーな道のりを越え続けてきた自負と「私は絶対に成功する」という執念だろう。それは彼女のインタビュー記事や会見での発言にも表れている。
プロ生活ではテニスに限らず、モデルとしての活躍やお菓子のプロデュースを手がけ、多方面で才能を活かしている。
米『ニューヨーク・タイムズ』紙によると、友人でもありNBAのスーパースター、コービー・ブライアントの死が「人生で大事なものに気づかせてくれた」と、全豪オープンから帰路の飛行機の中で引退を決意したと伝えている。
彼女のハングリーさと勤勉さ、知的な考えは、また新しい時代を創り出す。そして、きっと今後もすべてを乗り越えて輝き続けるであろう。
遠い存在となったマリアの、セカンドキャリアに期待しているのは、私だけではないだろう。
≪久見香奈恵≫

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