春のセンバツのない3月 夏までの100日にできること

いまから1年前、春のセンバツ2回戦の東邦(愛知)-広陵(広島)戦は、7回が終わった時点で0対10。

甲子園大会でなければコールド負けという一方的な展開で敗れた試合後に、広陵の中井哲之監督はこう言った。

「選手がこんな負けを経験してどう思うか。僕がいくら『やれ!』と言っても、夏の大会まであと100日もないですから。選手が敗戦の重みをどれだけ感じているのかこれからどういう取り組みをするのか、それが楽しみです。悔しさを爆発させて取り組むことが大事だと思います」

夏の甲子園と比べれば、センバツはそれほど盛り上がらない。冬の間は禁止される対外試合が解禁となってすぐの大会ということ、寒さのせいで投手戦が多いというのが原因だ。三年生にとって「負けたら引退」となる夏の大会ほどの切迫感もない。

しかし、選手にとって甲子園は夢の舞台であり、最後の夏に向けた貴重な真剣勝負の場である。勝者は栄光を手に、敗者は悔しさとともに何かをつかんで、母校に戻って研鑽を積む。

だが今年、甲子園に球春は訪れない。センバツのない3月がこれほどさびしいものだと、多くの野球ファンは思っていなかっただろう。本来であれば、32校の出場校が甲子園に乗り込み、紫紺の優勝旗を目指して戦うはずだったのだが……。

≪文:元永知宏(もとながともひろ) スポーツライター≫

新型コロナウイルスの影響により中止

すべての代表校が選出されたのは1月24日。その後、新型コロナウイルスの感染が拡大されるにつれ、センバツの開催が危ぶまれることになった。当初は無観客試合が検討されたが、3月11日に中止が決まった

無観客での開催を模索しているときには「ほかの高校スポーツが中止になるのに、なぜ野球だけはやるのか」という苦情が日本高校野球連盟に入ったが、中止発表後には「どうしてやらないのか」という電話が殺到したという。

この間、「高校スポーツの中で、野球だけは特別なのか?」という声が挙がった。100回大会となった2018年夏の甲子園では史上最多の観客動員を記録した(101万5000人)。そもそも、全国大会の1回戦から決勝戦まですべての試合を生中継する競技はほかにはない。

今回のセンバツ中止による経済損失は約289億7005万円にのぼるという報道もなされた(関西大学の宮本勝浩名誉教授の試算)。日本において、高校野球が「特殊」であることは間違いない。

この記事が気に入ったらフォローしよう

最新情報をお届けします