【SPREAD賞】スポーツ×人生(作者:orangeさん)

■たった1回の現地観戦で人生が変わった

2008年5月、夏を感じる暑さの中、私は父と初めて野球観戦に足を運んだ。場所は、西武ドーム(現メットライフドーム)で西武広島の試合だった。父が勤めていた会社の友人から、チケットをいただいたことがきっかけで実現した。ひょんなことからこの日がスポーツ観戦デビューとなったが、驚きの連続で自分自身の人生が変わった日となった。

■球場の外は白と赤のユニフォームを着ている人で大盛り上がり

ユニフォームなどの応援グッズを持っていなかったため、特に準備することなく、リュックサックの中に財布だけ入れて、父の車で球場に向かった。自宅から1時間30分ほどで到着。駐車場は満車に近く、この時点で、「こんなに球場に行く人がいるのか……」と驚きを隠せなかった。

球場は開場前にも関わらず、西武と広島のユニフォームを着たファンで大盛り上がり。グッズやお弁当の販売、選手パネルとの写真撮影、開場を今か今かと待ちわびる長蛇の列。私は父に、当時西武の看板選手だった中島裕之のレプリカユニフォームと、同選手がプロデュースしたお弁当を買ってもらい、球場内に入った。

■グラウンドにはいとも簡単に打球をスタンドに運ぶ選手の姿が……

グラウンドに目を向けた瞬間、「テレビで見ていたものと全く違う」と口にしたのを覚えている。これまでスポーツをテレビでしか観戦したことのなかった私は正直、父の誘いにあまり乗り気ではなく、初めて経験することに対して不安な気持ちでいっぱいだった。しかし、グラウンドにはテレビでしか見たことない選手がズラリ。この光景に、私の心にかかった雲が少しずつ散っていく。

中でも、バッティング練習の打球音には驚愕だった。特に中島や中村剛也、G.G.佐藤、クレイグ・ブラゼルが打った瞬間、「バチーン!」とピンポン球を打っているかのように、左右関係なくスタンドイン。また、その日の先発であった2年目の岸孝之がグラウンド内を走っている姿を目撃し、「テレビで見ている以上に身体が大きい」と囁いた。

■ファンによる大声援で現地観戦の醍醐味を知る

驚きの連続で、気付けばスタメン発表の時間だ。この時、私は初めてファンによる生の声援を自分の耳で聞いた。選手名、各々の応援歌など歓声を聞くたびに鳥肌が立つ。「これが現地観戦か」とかなり興奮気味だった。

試合が始まると、岸が序盤から広島打線に捕まり西武がビハインド。ライオンズに苦しい展開ながらも、逆転を信じるファンたちが得点のたびにチームロゴがプリントされたフラッグを振りエールを送る。私も周りの仲間とハイタッチをして盛り上がった。私は西武が負けていることすら忘れていた。結局、試合は敗れたが、大満足。この日を境に私は、毎週土日の西武ドーム主催試合があれば現地観戦をするようになった。

■スポーツが生活の一部に 人と人をつなぐことができるスポーツ

当時の自分に声をかけるとしたら「よく見に行った!」と褒めるくらい、現地観戦の大切さを思い知った。2008年から現在まで毎朝、スポーツニュースをチェックするくらいスポーツが好きになった。もはやスポーツが生活の一部になっていた。平日は学校の授業が終わると、そそくさと帰宅してテレビで野球を観る土日は西武ドームに行く。この繰り返しだった。

当時、我が家はスカパーなどに加入していなかったので、チームに関係なく、地上波とBSで中継しているものを観戦。西武の試合も気になるので、スマホでチェック。よく両親に「テレビを見るか、携帯をいじるか、どちらかにしなさい」と怒られたものだ。

初観戦を機に、初めて自分から「好き」と言えるものができた。この頃の私は人とあまり話さず内向的な人間だったが、自分の周りには意外と巨人ファンや阪神ファンがおり、野球の話題をきっかけに打ち解けた。この時間がとても楽しかった。実際に人と話して楽しいと思えた瞬間かもしれない。スポーツは人と人をつなぐ力がある

2009年に開催された第2回ワールド・ベースボール・クラシックをクラスメートと観戦し、さらに交流の輪が広がった。ちょっとした偶然から現地観戦の醍醐味を知り、人との交流の楽しさを教えてくれたスポーツ。本当に感謝しかない。

当時に比べて、今はスポーツ観戦をする人が増えていると感じる。カープ女子や竜党など各球団のファンを表すような固有名詞をよく聞く。人気になった分、当時に比べてチケットを入手するのが困難になっているのは珠に瑕……。

スポーツ観戦には色々な楽しみ方があると考えている。応援、マスコット、ストレス解消、お酒を飲むなど楽しむ要素がたくさんあり、今後も増加していくと考えている。現在、新型コロナウイルスの影響で、観客動員数に制限があるなど100%楽しめない状況が続いている。いち早く、収束してもとの観戦スタイルに戻ることを願う。特に今年は東京五輪もあるので、早く落ち着くことを祈るばかりだ。

私にスポーツがなかったら、いまいったい何をしていたんだろうと疑問に思う。心からスポーツを好きになって良かったと胸を張って言える。スポーツ=人生なんだと気付かされた。

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