■レースは人生の縮図
「HOPPY team TSUCHIYA」は2020年、ミーナさんと武士さんという「共同オーナー」という形でスタートを切った。新しいマシン、ポルシェ911 GT3Rはすでに「ホピ輔」の愛称でファンから親しまれている。

2021年シーズンを疾走する「ホピ輔」 提供:HOPPY team TSUCHIYA
しかし、さらに春雄さんの病が20年末に再発、21年4月に還らぬ人となった。こうして二人三脚を決意した共同オーナー2人、ミーナさんと武士さんは、時期を同じくし、後継者として独り立ちし道を歩むに至った。
2003年に始まったミーナさんのレース、いまや、すっかり「レース沼」にハマってしまった状態だとか。そもそもクルマに興味すらなかったにも関わらず、レースの何に惹かれるのか。
「レースは人生の縮図だと思っています。2時間、3時間に凝縮された人生の縮図です。レースを見ていると、天候が変わったり、事故があったり『ここを乗り切れば……』と思うことも多いですが、乗り切ってもまた困難が待ち受けていたり。まったく人生、そのものですよね。
例えば天候が急変した際にどのタイヤを使うのか判断する。『ここ!』という潮目を読む。これは経営判断にも通じると感じます。どのようなデータを読み取り、いかに対策を打つか。仮に私が経営者でなかったとしても、その流れは人生に投影できると思います。

「レースは人生の縮図」と語るミーナさん 撮影:SPREAD編集部
レースにあまり興味がないという方をお誘いする際は、『人生の縮図を見に来ませんか』とお声掛けしています。一度、スーパーGTをサーキットで観戦された方は皆ファンになって下さいます」。
レーシング・チームの共同オーナーという立場から、将来的展望についても訊ねた。
「つちやエンジニアリングというレースの名門が、春雄さんの想いを受け継ぎ、チームに関わる全ての皆様に『ホッピービバレッジと組んでよかった』と思っていただけるよう、微力ながら、そのようなお力添えができればと考えます。
もちろん『勝たせてあげたい』と思いますが、チームの並々ならぬ努力は私も監督から話を伺い、また現場も拝見して充分に感じています。一戦一戦、チームが『やりきった』と思えるレースをできる環境、安心して次のレースの準備に集中できる環境を創っていくことをお手伝いしたいと考えています」。
スーパーGTのレースを観戦し「なぜホッピーのクルマが走っているのだ……」と不思議に考えていたが、その疑問はこの取材ですべて邂逅した。ホッピービバレッジはもちろん、形式上レースをサポートしているのではあるが、むしろつちやエンジニアリングとホッピービバレッジという組織にはあまりにも共通点が多く、その共感が両者を共同オーナーという形で結びつけたに過ぎない。
■スポンサーを越えた協力関係
「2人とも経営者で、考え方がとても似ていると感じます。(ラジオ番組)HOPPY HAPPY BARに武士さんをゲストにお招きした時は、時間がいくらあっても話し足りない位で、24時間番組ができると現場に笑いが起きました」。
「経営者として、先代からの『大きくすることばかりが経営目標ではない』という教えは、大事にしている共通点です。ホッピーを大きくして身売りすればいい……決してそうではない。大手自動車ワークスに対する『つちや』、大手飲料メーカーに対する弊社の考え方が同じなんです。ですから、私たちの目が黒いうちは上場しないという点も共通しています」。
最初は小さなスポンサー関係だったのだろう。こうなると、もはやスポンサーであってスポンサーではない。広告代理店で作業していると、「スポンサー・メリットが希薄なので」と降板するケースを多々見てきた。しかし、いつもスポンサードのメリットばかり享受しようとする、そのスピリッツのなさには呆れて来た。会社の予算を行使し、ただ単に看板を掲げたりするだけで、スポンサーとしての親和性を気にもかけないパターンが多かった。しかし、ここでは企業同士の親和性が、スポンサーを越えた協力関係を構築している。
「つちやエンジニアリングは創業から50年、弊社は116年ですが、2人とも創業理念から導き出された価値観、フィロソフィーを愚直に守り抜くことを大切にしています。武士さんはレース界での自身の役割を十分認識されているので、何があっても突き進んでいくでしょうし、その考え方と想いに賛同しています。そのような彼とつちやエンジニアリングを応援し続ける為にも、私も本業により一層励もうという気持ちが沸き起こって来ます。『一緒にやれて楽しかったね』と回顧する老後も今から楽しみでなりません。
その時に私たちのフィロソフィーを受け継ぎ、後進が一戦一戦を全力で戦えるチームであって欲しい。それを自由な、解放された気持ちで見守るのが理想です」。
レースに興味がない、クルマに関心がない……そんな方は一度、スーパーGT観戦に、「HOPPY team TSUCHIYA」を観に足を運ぶといいだろう。人生の縮図から、自身の人生にとって学ぶ点が、必ず見つかるだろう……。
◆【インタビュー前編】「人生の縮図」レース沼にはまった石渡美奈Hoppy team TSUCHIYA共同オーナー かつカレーを平らげながら待った初優勝
◆【スポーツビジネスを読む】アマチュアを支援するメディア「スポーツブル」黒飛功二朗・運動通信社社長 後編 「アマチュアは儲からない」だからこそチャンス
著者プロフィール
松永裕司●Stats Perform Vice President
NTTドコモ ビジネス戦略担当部長/ 電通スポーツ 企画開発部長/ 東京マラソン事務局広報ディレクター/ Microsoftと毎日新聞の協業ニュースサイト「MSN毎日インタラクティブ」プロデューサー/ CNN Chief Directorなどを歴任。出版社、ラジオ、テレビ、新聞、デジタルメディア、広告代理店、通信会社での勤務経験を持つ。1990年代をニューヨークで2000年代初頭をアトランタで過ごし帰国。Forbes Official Columnist。













