イクイノックスと母チェッキーノの「点と線」 樫の女王チェルヴィニアは、なぜ桜花賞大敗から“華麗なる逆転”を実現できたのか【オークス】

内から鮮やかに抜け出した桜花賞馬ステンボッシュ。その2冠に待ったをかけたのは桜花賞13着大敗のチェルヴィニアだった。まさかの大逆転もファンの評価は2番人気。

ルメール騎手への信頼もあっただろうが、最近のファンは変則ローテなど気にしない。ローテより能力を重視する姿勢が透けて見えてくる。昭和平成の競馬を生きてきた者にとって、2歳秋から半年ぶりの出走だった桜花賞大敗はどうしてもマイナス要素に思えてならない。

◆【日本ダービー(東京優駿)2024予想/危険な人気馬】優勝候補を大胆に“消し”と判断 「単勝1.6倍も飛んだ」皐月賞とダービーの関連性

しかし、このローテを組んだのが木村哲也厩舎となれば、話は別なのだ。イクイノックスという世界を驚かせた天才は木村厩舎とノーザンファーム天栄でなければ出現しなかったかもしれない。木村調教師が以前、取材で語ってくれたのは、素晴らしいフォームで走る素質にあふれる若駒は決して少なくない。

しかし、競馬を使ううちに色々な要因があり、その形が崩れていってしまう。古馬になっても惚れ惚れする走りをするイクイノックスは別格だった。では、その走りを維持するためにはどうすればいいのか。

■厩舎サイドに異例ローテの意識はない

木村調教師はできるだけ長くファンに喜んでもらえる馬づくりを目指し、そのためにはなにが必要なのかを突き詰めてきた。イクイノックスにとって大きかったのは東京スポーツ杯2歳Sから皐月賞への直行だった。クラシック期間にあたる2歳から3歳は人間でいえば、10代前半から後半にかけてと同じだ。

たとえば高校野球などでも、若いアスリートが過酷な戦いに身を投じ、消耗してしまうのは将来を閉ざしはしないかと議論になる。サラブレッドも同じだ。人間に置き換えるなら、2歳から3歳は最初のクライマックスであると同時に、成長する期間でもある。いかにその両輪を上手に回していけるのか。

木村厩舎はイクイノックスでその答えをひとつ出した。競走で消耗したら、必ずその回復に時間をかけること。回復とトレーニングではなく、まず回復することに全力を尽くす。ノーザンファーム天栄で英気を養い、心も体もリフレッシュさせてから次に向けて動き出す。

これを徹底させた結果が、異例のローテと呼ばれるわけで、厩舎サイドにはそんな意識はない。予定ありきではない。馬の状態を見極めた上で出走させるレースを選ぶ。その姿勢の是非をイクイノックスはのちに圧倒的なパフォーマンスで証明してくれた。

izukawaya