■日本では前例が少ないクラブトークンの導入
アスティーダでは10月からクラブトークンを活用した特典もスタート。販売売上は、主に琉球アスティーダのクラブ運営、強化費用、年内12月20日21日、来年2月7日、8日、国内で最もNBAの会場に近いと言われている1万人沖縄アリーナで行われる「アスティーダフェス 2021-2022」イベント企画・運営費に利用される予定であり、クラブトークン購入者は、クラブの投票企画参加、イベントへの招待、特典抽選、アスティーダフェスでの特別な体験などへ応募が可能となっている。
しかし、NFTの扱いまでの道のりは平坦ではなかった。
「国内では、許認可の点で前例が少なく、海外で会社を設立しなければならないかも……と問題があり、そこでフィナンシェさんとご一緒させていただきました。トークンを発行するなんて簡単なことと思って内部監査人と食事をしながら『トークン出すよ』と話したら『ちょっと待ってください!』と血色を変えて言われ……『適時開示』に当たるとか、デジタルグッズの販売でも資金がらみで『あとで問題になるかもしれません』と指摘され突如、夜中に証券会社に電話しました。すると『それはビットコインですが、東証では上場廃止ですよ』とか『トークンの売上はどう計上するんですか』と、そこからひと月、証券会社、監査法人とは延々と協議になりました」と、この困難も早川さんは高らかに笑い飛ばした。
早川さんはスポーツ業界のみならず、ビジネス界としても「上場」という資金調達方法は不要になるのではないかと読んでいる。「株式投資型のクラウドファンディングを初めてやって気づいたんですが今後は、ブロックチェーンで資金調達、トークンで資金調達が可能になります。資産性、投資性を考えると下手な手続きよりトークンでの調達のほうがお手軽です。そうなると将来的には、上場市場がなくなる可能性さえあると思います」と発想そのものがスポーツ界にとどまらない。
もちろん、「スポーツの価値」についても、熟考済だ。

「(メルカリの)小泉さん(小泉文明会長)が鹿島アントラーズを資本提携51%の株式取得で16億円。もちろん『スポーツってこんなに安いのかぁ』と各界から投資が集まるならいいですが、日本でも有数の強豪サッカー・クラブがたったの16億円です。クラブを作った側から見れば、あそこまで成長させても資産価値として32億円と言われると、たまったもんじゃありません。やはり、スポーツチームも50億円で購入したら、5年後には100億円になるような投機対象にならなければいけません」。
日本のスポーツ界ではチームの経営が譲渡されると「身売り」と表現され、長いことマイナスのイメージがついてまわった。しかし、アメリカのスポーツ界を眺めても経営の譲渡は、スポーツの価値が「資産」というかたちをもって高められ、スポーツがビジネスとして潤う構図が確立している。日本も早く、こうした健全なビジネスに成長させなければならないと早川さんは説く。
■業界の垣根を越えた「スポーツパスポート」を
「スポーツを育てて行くためには、プロの経営者を増やすことが、スポーツのエコシステムを生むと思います。プレーヤー人口を含めると関係者は自動車業界に匹敵するほど。やはりビジネス規模も自動車業界レベルにならないとおかしい」と示唆。
そのためには;
1.経営感覚を持ったリーダーの育成・参入
2.プロスポーツチームで上場チーム増加
3.国内だけではなく海外からの資金調達も必要
と、唱える。
「スポーツ業界も沖縄県内にスポーツチームが増えると『スポンサーを奪われる』などという妙な意識を捨て、スポーツ全体がどう手を取り合って連携して行くかが必要です。経営者としては数年先には『スポーツパスポート』を作ってくれと、行政にも提案しています。子どもたちが、1日でいろいろなスポーツを観に行けるパスポートです、そして、これからは、むしろスポーツだけにとどまらず『スポーツ ✕ 観光』『スポーツ ✕ 音楽』など業界の垣根を越えて協力していかなければならない、そんな時代だと思います」と先を見据える。
早川さんの語りに耳を傾けていると、日本のスポーツ界の変革は、すぐそこに迫っているように思えてくる。そして、早川さんなら、きっとそれを爆速で具現して行くのだろう。
◆【インタビュー前編】琉球アスティーダスポーツクラブ株式会社早川周作代表取締役社長 「スポーツは儲からない」を豹変させた卓球
◆【スポーツビジネスを読む】モンストからバスケへ 田村征也・千葉ジェッツふなばし代表取締役社長 後編 金満球団のレッテル払拭に苦心
著者プロフィール
松永裕司●Stats Perform Vice President
NTTドコモ ビジネス戦略担当部長/ 電通スポーツ 企画開発部長/ 東京マラソン事務局広報ディレクター/ Microsoftと毎日新聞の協業ニュースサイト「MSN毎日インタラクティブ」プロデューサー/ CNN Chief Directorなどを歴任。出版社、ラジオ、テレビ、新聞、デジタルメディア、広告代理店、通信会社での勤務経験を持つ。1990年代をニューヨークで2000年代初頭をアトランタで過ごし帰国。Forbes Official Columnist。










