■「勝利の先の価値を知っている」
昨年末のトルコ遠征にコーチとして帯同した元プロテニスプレーヤーの藤岡希さんは、小田について自身を客観視する能力に加え、考えを言語化することに長けているともいう。そして彼が見せる落ち着きは、テニスを始めた頃からの志が関係しているとした。
藤岡さんはさらに「小田選手は、すでに勝利の先の価値を知っています。自分の活動や勝つことで、同じ病気の子や困っている人の力になりたい。みなのために戦うんだ。という思考が彼を支えている。私はそこにスケールの大きさを感じていますね。そして彼は自分自身のことを良く知っています。何で自分をモチベート出来て、何が好きで、何が自分に良くないか。そして『頂点に行く』ということへのブレない強さが、彼の行動や振る舞いを強固にしているのだとも感じました」と続けた。
かくして、史上最年少でBNPパリバ・ワールド・チームカップの日本代表に選ばれた小田は、5月からヨーロッパ遠征へと旅経つ。取材の数日後には、全仏のドロー数が12人に変更されたことから晴れて四大大会のデビューが決まった。
「本来であればドロー数が増えなくてもダイレクトインできる位置にいることがベストだった」と負けず嫌いの顔を覗かせながらも「形がどうであれ全仏に入るために昨年末から努力してきたので、出場できることはとても嬉しく思っています」と喜びを噛みしめている。
小田にとって、この夏の始まりからエキサイティングなシーズンが続きそうだ。
◆車いすテニス界の新星、小田凱人が目指すは絶対王者・国枝慎吾、そしてパリ五輪金メダル
◆国枝慎吾、東京パラの「俺は最強だ」伝説をふり返る 物語はパリへと続く
◆現代のテニスを進化させた次の「絶対女王」アシュリー・バーティ突然の引退とその理由
著者プロフィール
久見香奈恵●元プロ・テニス・プレーヤー、日本テニス協会 広報委員
1987年京都府生まれ。10歳の時からテニスを始め、13歳でRSK全国選抜ジュニアテニス大会で全国初優勝を果たし、ワールドジュニア日本代表U14に選出される。園田学園高等学校を卒業後、2005年にプロ入り。国内外のプロツアーでITFシングルス3勝、ダブルス10勝、WTAダブルス1勝のタイトルを持つ。2015年には全日本選手権ダブルスで優勝し国内タイトルを獲得。2017年に現役を引退し、現在はテニス普及活動に尽力。22年よりアメリカ在住、国外から世界のテニス動向を届ける。















