【Xリーグ】ライスボウルを制した富士通アルリルワン・アディヤミが語る日本アメフト界の変貌

 

【Xリーグ】ライスボウルを制した富士通アルリルワン・アディヤミが語る日本アメフト界の変貌
ライスボウル優勝の瞬間、歓喜を表すアルリルワン・アディヤミ 撮影:永塚和志

■富士通行きを決めた理由

ディフェンシブバックという最後方を守るポジションのアディヤミが富士通に加わったのは10年前。彼がサンディエゴ大卒業直後だった。彼も他の多くの選手同様、NFLでのプレーを目指しながら一歩届かないといった状況にあったが、そんな折に富士通での機会を得た。

しかし、だ。日本行きを決めた後、アディヤミは自身の代理人から電話を受ける。彼がワークアウトに参加していたNFLのデトロイト・ライオンズからチームに故障者が出たため再度、実力を見せに来てもらえないか、といった趣旨のものだった。

だがアディヤミはこの申し出を断る。日本のシーズンは間近で自分はすでに富士通でプレーすることにコミットしていたからという、律儀な理由からだった。

「もし自分がライオンズの話に乗っていたら富士通を困らせることになっていたし、約束を反故にすればアメリカ人はみんなそういう奴らなんだろうという印象も与えてしまう。だから自分はその誘いを断って、背水の陣で日本に来た。(日本でのシーズンが終わってから)またライオンズから話があるかなとも思ったけど、もうなかった。だけどあらゆることは理由があって起こるのだし、僕は自分のするべきことをしたまでだよ」。

ライスボウル優勝の余韻が残る東京ドームのフィールド上で、幼少期をナイジェリアで過ごし後にアメリカへ移り住んだアディヤミはそう話した。

NFLという世界最高峰かつアメリカでもっとも人気のあるリーグでのプレーは叶わずも、代わりにアディヤミが手にしたのは、日本での数々のタイトルと、この国のフットボールの向上に寄与してきたという満ち足りた自負心だった。

■近い将来の引退も示唆

かつて富士通はジャパンXボウル(2020年度シーズンまではこの試合がXリーグの優勝決定戦だった)に進出してもそこで敗れるどこか勝負弱さのあるチームだった。だが、2014年度シーズン以降は7度、リーグ優勝を賭けた試合に駒を進めすべて勝利している。アディヤミはそのすべてに関わっている(リーグの最優秀ディフェンスチームには10年連続して選出されている)。

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10年前に自身が来日した当初と比べて日本のアメリカン・フットボールの実力は「とてつもなく」変化したと、アディヤミは声のトーンを上げながら語る。なかでも彼が一番、興奮を抑えられない様子だったのが若い日本人選手たちの成長だ。今回のライスボウルにしても、彼らの存在がなければ優勝はありえなかったと言う。

アメリカ人QBの増加について上述したが、今季のX1 Super全12チーム中、アメリカ人QBを採用するのは8チームもあった。しかし、富士通のそれは日本人の高木翼だ(対するパナソニックのQBはアメリカ人)。昨季まではアメリカQBの控えだった高木だが、今回のライスボウルでもインターセプトを1本も与えないなど、落ち着いたプレーぶりで「日本人QBでも勝てる」ところを示した。

「うちのチームがいいアメリカ人選手をそろえているのは間違いないけど、だけど僕らが勝つためには日本人選手たちが成長しなければ不可能なんだ。僕らにはとても、とてもすばらしいコーチ陣がいるし、彼らはアメリカに行って勉強もよくしている。そうした努力があってチームの成長があるし、そこに大きな誇りを感じるよ」

32歳になったアディヤミは、眩いばかりの笑顔を見せながらそう口にした。

ところで、今回のライスボウルは、富士通とパナソニックが相手の穴をつきながら一進一退の攻防を繰り広げるすばらしいものだった。勝ったことはもちろん嬉しいが、これだけ見るもの血をたぎらせるような展開の試合を披露できたことは、アディヤミにとってやはり誇らしいもののようだった。

「とんでもない試合だった。この試合ならアメリカでやっても喜んでもらえるはずさ。僕が日本に来てプレーした試合でベストなものの一つだよ」。

近い将来、引退をするだろうと話したアディヤミ。NFLよりも日本での機会を取るという、あるいは他のアメリカ人選手なら選択しないであろう道を選んだ男はしかし、日本に来たことを一切、後悔していない。

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著者プロフィール

永塚和志●スポーツライター

元英字紙ジャパンタイムズスポーツ記者で、現在はフリーランスのスポーツライターとして活動。国際大会ではFIFAワールドカップ、FIBAワールドカップ、ワールドベースボールクラシック、NFLスーパーボウル、国内では日本シリーズなどの取材実績がある。

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