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【車いすテニス】国枝慎吾の後継者・小田凱人 全豪オープン準優勝と「最年少記録を作り続ける運命」前編

【車いすテニス】国枝慎吾の後継者・小田凱人 全豪オープン準優勝と「最年少記録を作り続ける運命」前編
全豪オープンに挑んだ16歳の小田凱人(C)ロイター

プロ車いすテニスプレーヤー、小田凱人、16歳。

「最年少記録を作り続ける運命」と挑むこの道は、必ず国枝慎吾という大きな背中があった。

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■国枝慎吾と戦えなくなった現実

初出場の全豪オープンに向け豪州遠征へと旅立つ前、「凱人、これから頼んだぞ」と渡されたバトン。いつかは訪れると覚悟していたこの瞬間に「必ず僕が後継者として世界トップに立って見せる」と意気込むも、前哨戦の会場に着くなり「やっぱり彼がいないと雰囲気がガラッと変わった」と妙な違和感に包まれた。

車いすテニス、現役引退会見でガッツポーズする国枝慎吾 (C) ユニクロ

「これは自分だけなのかもしれないけど、気が締まらないというか、気合が入らないなと感じたりもした。それに…たまに寂しくなる」と小さくハニかみ本音をこぼす。

昨年は世界10位でスタートしたランキングも現在では2位。世界に憧れを抱いた頃から変わらぬトップメンバーたちと「戦いたい」と挑んだこの1年は、まさに当初の夢を叶えた期間だった。

国枝とは4度の対戦から1度も勝たせてもらえる日は来なかった。「次こそは勝つと毎回大きな目標にしていたので、それがもう叶わないとなった時、どうしようかなって」。それほど自身にとって眩しすぎる光を失ったのは大きい。

これは小田のみならず、車いすテニス界のすべての選手に通じる喪失感でもあるだろう。小田にとっては今年10月に迫るアジア・パラリンピックや初めてのグランドスラム決勝戦は、必ず国枝慎吾に勝ってのバトンタッチを描いてきた。故に、私たちが想像する以上に16歳の挑戦心には混沌とした感情の揺れが生まれていたのだ。

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著者プロフィール

久見香奈恵●元プロ・テニス・プレーヤー、日本テニス協会 広報委員

1987年京都府生まれ。10歳の時からテニスを始め、13歳でRSK全国選抜ジュニアテニス大会で全国初優勝を果たし、ワールドジュニア日本代表U14に選出される。園田学園高等学校を卒業後、2005年にプロ入り。国内外のプロツアーでITFシングルス3勝、ダブルス10勝、WTAダブルス1勝のタイトルを持つ。2015年には全日本選手権ダブルスで優勝し国内タイトルを獲得。2017年に現役を引退し、現在はテニス普及活動に尽力。22年よりアメリカ在住、国外から世界のテニス動向を届ける。