日本代表MF久保建英が所属する4位のレアル・ソシエダは23日に行われたラ・リーガ第36節、ホームで14位のアルメリアと対戦。2試合ぶりに先発復帰した久保は前半終了間際に今季9点目となる先制点を決め、自身が今季打ち立てた日本人シーズン最多得点記録をさらに更新した。
久保の決勝点で1-0と勝利したソシエダは、来季のUEFAチャンピオンズリーグ出場圏内(CL)となる4位確保へ向け大きく前進。翌日には5位のビジャレアルも勝利したが、残り2試合で勝点差は「5」。あと1勝でソシエダのCL出場が決まる。
◆【実際の映像】久保建英、右からのカットインで決めた圧巻ゴラッソ アルメリア相手に決めた今季9点目
■9回目のMOM選出、クラブ年間MVP濃厚
前節、久保は自身が育成年代を過ごしたバルセロナを相手に58分から途中出場。リーガ優勝を決めたばかりの王者相手に3人を引き付け追加点となる2点目を導き、ソシエダにとって32年ぶりとなる敵地でのバルサ撃破に貢献した。
一方、今節の相手は1部残留争い中のアルメリア。ソシエダにとっては必勝が求められる一戦に、久保は満を持して[4-3-3]の右ウイングで先発復帰。試合は前半に退場者を出した相手に対してソシエダが一方的に攻め込む展開の中、前半アディショナルタイムに久保が魅せた。
右サイドに開いてボールを受けた久保はドリブルでペナルティエリア内に侵入。中央へカットインしながらシュートコースを作り、リーガ屈指の左SBセルヒオ・アキエメのタックルを交わして左足を一閃。GKも反応できない豪快な一撃が逆サイドネットに突き刺さった。
久保は得点する前までにドリブルでは縦方向へ突破し、シュートはニアサイドを狙うなど、“布石”を打っていた。ゴールのクオリティだけではなく、駆け引きに勝ったという意味合いに置いても高く評価されるべきゴラッソだった。
ラ・リーガはこの試合におけるMVP「マン・オブ・ザ・マッチ」(MOM)に久保を選出。今季の久保がMOMに選出されるのはチーム最多の9回目。『ノティシアス・デ・ギプスコア』ら現地メディア各紙は、ソシエダの年間MVPに久保が選出されるだろうと述べている。
久保自身は試合後の記者会見で、「目標としていたゴールとアシストの合計で20ポイントまで5点足りていないので、まだまだ積み上げたい」と、さらなる活躍を誓った。(現在公式戦通算9ゴール6アシスト)
■お手本シルバの影響力
今季からソシエダに加入した久保は序盤戦で[4-3-1-2]における2トップの一角として定位置を掴んだ。背景にはFW陣の怪我人続出、主将を担うスペイン代表FWミケル・オヤルサバルが長期離脱で不在だったチーム事情があった。
また、一昨季のビジャレアルやヘタフェ、昨季終盤のマジョルカでの久保が守備力の不安を問題視されてプレータイムが伸びなかったことも影響していただろう。ソシエダのイマノル・アルグアシル監督はボールプレーヤーとしての久保を高く評価する一方で、守備面の負担を軽減するためにFW起用に至ったと見られる。
そのうえで、元スペイン代表MFダビド・シルバがトップ下でプレーすることで、久保はこの37歳のレジェンドから大きな影響を受けた。攻撃面で創造性溢れるハーモニーを奏でるデュオとなり、守備面でもお手本となった。
「チームがボールを失った直後、最初に走るのがダビドなんだ。それが僕たちに良いプレッシャーを与えてくれる。守備を免除されても良いクオリティを持っているのに、彼は最初に守備に入るんだ」と久保は現地メディア『DAZN ESPANA』に語っている。
カタールW杯後、チームにはオヤルサバルが復帰。システムも彼が得意とするウイングを設けた[4-3-3]が採用されることが増え、右ウイング起用が増えた久保の守備力が問われた。しかし、試合を重ねるごとに守備面で長足の進歩を遂げた久保はオールマイティで“大人な”選手へと変貌を遂げた。
守備力が上がった久保は攻撃時に相手DFの意図や心理、相手の守備組織や試合展開をより深く読めるようになった。アルメリア戦の決勝点は技術的には今季前半戦の久保でも再現可能だが、駆け引きを心得ていない当時の彼では成し得なかっただろう。