ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平は、今季打率.304、44本塁打、95打点で日本選手初の本塁打王を獲得。投手としては、23試合に先発し10勝5敗、防御率3.14。132イニングを投げ、167奪三振を記録した。右肘靭帯損傷で来季の登板は見込めないものの、WBCから続いた圧倒的な投球は世界中のファンの記憶に焼き付いている。
ここでは、メジャーでも有数の先発投手になった大谷の“完全復活”を願いつつ、公式データで「投球指標」を見て行こう。
◆公式データが示す、大谷翔平が軽々と乗り越えた「壁」…日本選手に立ち塞がる“小さな変化球”
■2018年に1度目のトミー・ジョン手術
MLB公式『Baseball Savant』のデータを元に、大谷が渡米してから今季までの「フォーシーム」について掘り下げてみる。メジャー6年間の公式戦で最速を記録したのが、2022年の101.4マイル(約163.1キロ)。次いで、今季4月27日(日本時間28日)の101.2マイル(約162.8キロ)と続く。日本時代にリリーフで165キロを出しているが、先発投手としては申し分ないスピードだろう。
2018年、渡米直後のフォーシーム平均球速は96.7マイル(約155.6キロ)。この年10月に、1度目の右肘内側側副靱帯再建手術(以下トミー・ジョン手術)を受ける。19年は登板なし、20年の短縮シーズンでは、復帰後2試合に登板。39球で平均93.8マイル(約150.9キロ)と回復途上である様子を窺わせた。本格復帰の21年は、キャリア最多892球のフォーシームを投げ、平均95.6マイル(約153.8キロ)。渡米直後の水準に戻りつつあった。
■手術後、約4年で最高球速に
2022年は、メジャー移籍後最高となる平均97.3マイル(約156.5キロ)をマーク。この年から、球種割合で「スイーパー」がもっとも多くなり、フォーシームはより重要な場面、要所でギアを上げるために使われた。
そして今季は平均96.8マイル(約155.7キロ)。キャリア2番目の数字だが、再び故障で2度目のトミー・ジョン手術へ。最終登板の8月23日(同24日)は、フォーシーム7球を投げて平均93.2マイル(約149.9キロ)。極端な“球速低下”を感じたのは、この試合くらいだ。
投手・大谷は来季全休、復帰は2025年の夏場くらいだろうか。先発として変わらぬパフォーマンスを見せられればベストだが、クローザーへ転向するプランも魅力的だ。7球種以上を操る器用さも持ち合わせており、速球派投手であり続ける必要すらないのかもしれない。しばらく先の話だが、再びマウンドに戻ってくる姿を心待ちにしたいと思う。
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◆「振っても当たらない」大谷翔平の魔球、被弾ゼロの“隠れた決め球”が公式データで浮き彫りに
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文●有賀博之(SPREAD編集部)