■再出発を切った「新たなエブリン」
馬瓜も吉田同様、代表活動へ戻ってきたが、彼女もまた「新たなエブリン」として今、ここに立っている」と気持ちを新たに再出発を切った。
銀メダル獲得に貢献した東京オリンピック後、馬瓜は休養を宣言し、心身の疲弊が癒えた今シーズン、デンソーという新たな所属で復帰を果たしている。
海外のリーグでプレーするオコエ桃仁花(オーストラリアリーグのUCキャピタルズに所属)のOQT不参加が決まり、馬瓜の妹である馬瓜ステファニー(スペインリーグのモビスター・エストゥディアンテス所属)の合流も本稿執筆段階では不明となっている。インサイドでプレーができる2人がいないとなれば、身長180センチのパワーフォワードである馬瓜のOQTメンバー入りの可能性は低くないと見る。
馬瓜のプレースタイルは、これまでの恩塚HCのチームにはなかったものと言えるかもしれない。パワーフォワードではあるものの、跳躍しながらワンハンドで放つ打点の高い3Pや、当たりの強さを生かした力強いドライブインやディフェンスができ、オールラウンダーとして様々な場面で起用ができる存在となれるのではないか。
■「私たちがもう1回、頑張りたい」
そして、吉田同様、28歳の馬瓜も東京オリンピックで海外の強豪相手でも伍して戦えたという世界大会での「成功体験」を、経験の浅い若手たちに伝えていきたいと話す。
「大谷(翔平、ロサンゼルス・ドジャース)さんの『憧れるのをやめましょう』じゃないですけど、たとえばダイアナ・トーラジ(WNBAフェニックス・マーキュリー、5度のオリンピック金メダリスト)やいろいろ(スター選手が相手に)いるんですけど、憧れるんじゃなくてちゃんと戦えるんだっていうのを実感した大会(東京オリンピック)だったと思うんですよ。その部分はオリンピックに出ていないメンバーにも伝えていきたいというのが一つあります」
馬瓜は休養期間中、様々なメディアに登場し、昨夏の男子のFIBAワールドカップでは解説者として日本代表の躍進とそれによる国内での競技の人気向上を目の当たりにした。
それはいわば、東京オリンピックで集めた女子バスケットボールへのスポットライトが「上書き」され、男子へと移行した形となったわけだが、ではそれをパリオリンピックで取り戻したいかと問われると、馬瓜はバスケットボールファンにはよく知られた快活な声のトーンでこう返した。
「(女子に)目を向けたいというよりも、バスケットボール全体に注目してほしいです。女子のエネルギーや世界との身長差でアドバンテージがない中でしっかりと戦えてる姿はすごく、見ているみなさんにとって勇気や感じてもらえるところがあると思うので、そういう意味では私たちがもう1回、頑張りたいです」