■強化合宿でも輝く18歳・絈野夏海
他方、これから世界の舞台へ本格的に羽ばたいていく可能性を秘めた新星も今回の合宿に招集された。非凡なシュートセンスを持つ、絈野夏海だ。
年末のウィンターカップ(全国高等学校バスケットボール選手権大会)で岐阜女子を準優勝に導いた絈野のプレーぶりを見て、この若干18歳の将来性に心躍った者は多いのではないか。172センチのシューティングガードは同大会で平均21.3得点を挙げ、得意の3Pは42.9%の確率で決めた。決勝では途中、対戦相手の京都精華に引き離されるも、3Pを何度も沈め優勝に迫るなど、勝負強さも感じさせるパフォーマンスだった。
同大会の直後は、将来の日本代表入りやオリンピック出場といった目標を口にしていた絈野だったが、その「将来」がこれほどまでに早く来るとは本人も思っていなかったようだで「信じされない気持ちと選ばれたことに関して嬉しい気持ち」と高校生らしいはにかみながら話した。
しかし、コート上での立ち振舞いは、他の、すでにWリーグで何年もの経験を有している年長の選手たちに引けを取ったものではなかった。3Pに関しては、単に確率よく決められるというだけでなく、パスを貰ってからシュートまでの時間が抜群に速く、その他、ステップバックやプルアップ(ドリブルからストップしてのシュート)などシュートのバラエティも披露した。
聞けば、岐阜女子の1年生時、同校の指揮を執る安江満夫コーチからシューターだと指示された時から練習を重ね、かつルカ・ドンチッチ(ダラス・マーベリックス)のステップバックプレーなどNBAの動画を参考にしての練習を積んできた賜物だったという。
「1年生の時のウィンターカップで、スタートで試合に出て、そこで3Pシュートが当たった時から『自分はこのシュートが打てるんだな、得意なんだな』だとつかんで、2年生、3年生とチームのエースとして引っ張っていけたんじゃないかなと思います」
18歳よりは大人びた落ち着きをまとった絈野は、静かなトーンでそう語った。
■恩塚HCが明かした絈野招集の理由
絈野は、現在、代表でキャプテンを務める林咲希(富士通レッドウェーブ)を同じシューターとして「憧れ」の存在だと口にしたが、その林も、絈野の能力に目を見開かないわけにはいかない様子だった。
「高3ですよね?(笑)私が高3の時は3Pはそんなに打っていなかったので、今、あれだけシュート確率があって速いモーションで打てるので、これからどんどん伸びていく選手かなと思います。努力していますし、何か淡々とやる選手だなと思うので、自分も盗むところは盗みたいですし、気持ちの持ちようや悩んでいることがあれば、どんどん伝えていきたいですが、楽しみな選手ですね」
もっとも、恩塚HCは単に3Pがうまいからという理由だけで絈野を呼んだわけではなかった。同HCは昨年11月の皇后杯2次ラウンドで岐阜女子がENEOSと対戦した際に絈野が3Pを5本決めるなどで28得点を記録した試合を見て「興味を持った」が、一方で今回のOQTへ向けての招集には、その段階では逡巡するところがあったという。が、ウィンターカップで再度、彼女を見ると、ステップバックやサイドステップから3Pを打っているのを目の当たりにしたことが、招集の後押しをした。
「(合宿の)初めは緊張していましたが、今日はだいぶ慣れてきた感じで、ピック・アンド・ロールの(ボール)ハンドラーとしてもいい仕事をしていました。絈野選手のいいところはシューターでありながらピック・アンド・ロールのハンドラーにもなれる。私たちのコンセプトとして、ポイントガードはクリエイトができる、シューティングガードは3Pもあり、ピック・アンド・ロールでクリエイトがえきる。この2つができつというのは大きな要素で、そういう意味では、彼女は貴重な存在かなと思っています」
恩塚HCは、絈野についてこう評した。
現在、世界ランキング9位の日本は、OQTで開催国ハンガリー(同19位)、スペイン(同4位)、カナダ(同5位)と対戦する。
OQTには全16カ国が出場し、4チームずつの4つのグループに分かれ、総当たり戦を行い上位3チームがパリオリンピックへの切符を手にする。
ハンガリー組の開催地はショプロンという人口6万人ほどの都市だ。
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著者プロフィール
永塚和志●スポーツライター
元英字紙ジャパンタイムズスポーツ記者で、現在はフリーランスのスポーツライターとして活動。国際大会ではFIFAワールドカップ、FIBAワールドカップ、ワールドベースボールクラシック、NFLスーパーボウル、国内では日本シリーズなどの取材実績がある。
















