今週は秋のGI開幕戦、下半期の短距離王を決める第60回スプリンターズステークス(GI、芝1200m)が中山競馬場で行われる。
今年は、レース連覇を狙うウインカーネリアンをはじめ、ルガル、ママコチャと、過去3年のチャンピオンが揃い踏み。加えて、今年の桜花賞馬スターアニス、昨年のNHKマイルC覇者パンジャタワーと、GI馬は5頭がエントリー。対してGI初制覇を狙うのは、サマースプリントシリーズを盛り上げたピューロマジックやフリッカージャブ、安田記念2着ワールズエンドや、高松宮記念2着レッドモンレーヴなど、豪華なメンバーがしのぎを削る。
そんな中、魅惑の上がり馬フリッカージャブが、今回の「危険な人気馬」の標的となる。
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■サマースプリントの実績はむしろ減点
充実一途のフリッカージャブが、GI制覇に王手をかけている。今年に入って、オープンの鞍馬Sから、北九州記念、セントウルSと芝1200mで3連勝。鞍馬Sでは1分6秒4と高速馬場で好タイム勝ち。北九州記念では重馬場を克服。そしてセントウルSでは好メンバーを相手に1番人気で勝ち切るなど、場所、馬場、相手を問わずに勝ち切った点は大いに評価できる。今回も高い支持を集めることは必至の情勢だが、スンナリ行かないのがGIだ。
スプリンターズSにおいて、セントウルSは最重要ステップ。過去10年で【3.4.1.44】は最も勝ち馬を輩出しており、1着馬に限ると【2.3.0.5】で連対率は5割を誇る。しかし、連対馬5頭中4頭は、セントウルSがいわゆる秋初戦。ひと叩きで勝った勢いを、そのまま本番にぶつけた格好だ。唯一、夏のサマーシリーズを転戦した2019年タワーオブロンドンの例はあるが、同馬はすでにGI3着と実績を持っていた実力馬。フリッカージャブは今回がGI初挑戦となる上がり馬だけに、夏場を転戦してきた“お釣り”がどこまで残っているか気にかかる。
それは、サマースプリントシリーズを2勝した馬の、スプリンターズSでの成績が良くない点で証明されている。同シリーズが始まった06年以降、サマースプリントシリーズ2勝馬のスプリンターズSでの成績は【1.2.1.7】で、勝ったのは11年カレンチャンのみ。同馬はキーンランドCからの臨戦で、比較的レース間隔が開いていたのが奏功した。一方、前走がセントウルSだった2勝馬は【0.2.1.1】と善戦及ばずという印象。このあたりも、フリッカージャブにとっては減点材料だ。
■血統&乗り替わりもマイナス材料
血統面からは、母父にサクラバクシンオーがいるのが懸念点。サクラバクシンオーといえば、スプリンターズSを連覇した史上最強のスプリンターだったが、産駒の成績は【0.0.2.30】と、結局一度もスプリンターズSを勝てなかった。そして母父としても、これまでに【0.1.0.11】と、勝つことができていない鬼門のレース。高松宮記念連覇を果たし、先日引退を発表したサトノレーヴでさえ、24、25年と2年連続で1番人気に支持されながら馬券圏内を外している。果たして、フリッカージャブはジンクスを打ち破れるだろうか。
最後に、主戦を務めた松山から西村に替わる点も大いなるマイナス材料。スプリンターズSは継続騎乗に分がある一戦で、過去10年でも【8.8.5.74】で圧倒的。一方、乗り替わりは【2.2.5.56】で、テン乗りでスプリンターズSを制したのは、GI昇格の90年以降わずか3頭のみ。西村は24年にルガルで制している一戦とはいえ、初コンタクトで同馬の力を最大限に引き出すことは容易ではない。
スプリント界の新星として注目を集めるフリッカージャブ。世代交代もささやかれる路線だけに、期待値は大いに高まる存在だが、これまでに戦ってきたメンバーから一気に相手が強化されるGI。加えて、臨戦過程や血統、鞍上と、乗り越えるべき壁は高く、人気ほどの信頼度は高くない。ゆえに、妙味を考慮すると、少なくとも「頭」勝負は避けたい。
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◆著者プロフィール
石川豊●いしかわゆたか
20代から競馬メディアに寄稿。「ユタカ人気」と言われた時代、武豊が騎乗する過剰人気馬をバッサリと切り捨てる馬券術を駆使し、年間回収率100%超に成功。以来、「1番人気の勝率は3割」を念頭に、残り7割の可能性を模索し、「危険な人気馬」理論を唱え続ける。















