「日本バドミントンは時代遅れ」元五輪代表選手 池田氏が見据えるバドミントンの未来とは?ー「TOP4 TOURNAMENT」インタビュー

バドミントンの最高峰リーグ「S/Jリーグ2017」、その上位4チームによって争われる「TOP4 TOURNAMENT」が3月24日(土)、25日(日)に宮城県仙台市・ゼビオアリーナ仙台にて開催される。

優勝チームには賞金300万円が与えらえる本大会だが、賞金付きの大会としては日本初となる。今回CYCLEでは「TOP4 TOURNAMENT」のキーマンである元オリンピック日本代表選手である池田 信太郎氏にインタビューを実施。本大会に込めた想いと今後の「日本のバドミントンの在り方」について話を伺った。

―――本日は宜しくお願い致します。「TOP4 TOURNAMENT」の概要を教えてください

池田氏:国内でもバドミントンのリーグが30年ほど続いていました。リオデジャネイロオリンピックで金メダルを獲得したタカマツペア(松友美佐紀氏、高橋礼華氏ペア)をはじめ世界で戦える選手が多く登場している一方で、それに見合う国内の大会が開催されていなかったのが、今までの現状です。これからはメダリストや世界で戦っている選手がしっかりとした会場や演出などで活躍できるような環境を作っていきたいという想いがあり、今回国内リーグのトップ4チームを集めた大会を通常の体育館ではなく、日本最大規模のセンターマルチディスプレイなどの設備を備えた日本最高峰のアリーナとも言われている「ゼビオアリーナ」にて実施します。

―――「TOP4 TOURNAMENT」開催発表後の反響はいかがでしょうか

池田氏:新しいことに挑戦する、ということで選手含めてなかなかまだ実感ができていない、というのが現状です。何事も「一番最初」というのはこういう状況になるかとは思うのですが「どうなるかわからないけど、非常に楽しみです」という声は多く頂いております。

一方で、スポンサード頂く企業様含めたステークホルダー様に対して「バドミントンがどう変わっていくのか」という部分は具体的に落とし込めていなくて、あまり伝えられていない状況です。新しいことをはじめる、というのは結構大変なことなのですが、挑戦することは大切なことだと考えていますので、そういった部分の擦り合わせ作業はこれからも進めていきたいです。

―――団体戦のみでしょうか。個人戦は無しですか

池田氏:2複1単(ダブルス2組、シングルス1組)となり、男女で分かれています。個人戦はありません。

メジャーとの境界線とは?

―――「バドミントンって賞金付きの大会無かったの?」といった声も聞こえてくるくらい日本ではまだまだ認知度が低いと考えています。どうすればもっとメジャーなスポーツになるでしょうか

池田氏:それがわかっていれば苦労はしないですね(笑)。でも、競技人口は約30万人ほどいて、男女の比率も変わらない競技はそんなに無いと思いますので、ある程度学校などでも実施することができ、気軽にプレイをすることができます。一方で競技となると「見たこと無い」という人が大半です。

もはやどのスポーツも「メジャーになることの境界線」は曖昧になってきていると考えていて、バドミントンに限って言うと、競技として経験したことはないけど、大会には見に来る、という人たちを増やしていくことがメジャースポーツになることへの第一歩だと思っていて、まずは認知してもらうことが必要だと考えています。そういうことを考えるとゼビオのアリーナで開催すること、というのは重要だと思います。


―――演出面でいろいろな工夫をしていきたい、と仰っていましたが、具体的にはどういった演出を予定していますか

池田氏:ベースは海外の大会に合わせています。日本独自の新しい何か、というよりは海外の大会に負けないくらいの演出をしていきたいです。そういった環境をつくることは選手にとってもプラスになります。「周りから盛り上げられている」とか作られたステージで最高のパフォーマンスを発揮しないといけないのですが、いきなり海外のそういった大会で力を発揮するのは相当ハードルが高いのです。そういったグローバルスタンダートのオペレーションを国内で実施する、ということが大切になってきます。

今までは面白いくらい「運動会」という感じでした。例えばプラカードを持って選手が入場したり。何十年もその形で実施をしていて、別にそれが駄目、とは考えていないのですが、海外と比べると遅れていると感じる選手も多くいます。選手が呼び込みで入場する、とか周りの応援団が会場全体を盛り上げる、とか今の時代にマッチングしたやり方があるとは思うので、そういったグローバルスタンダートに合わせられるようにしたいです。

―――バドミントンのラリー中は厳粛な雰囲気な印象があります。応援する側も楽しめる仕掛けがあるといいのですが。

池田氏:インドネシアはバドミントンが国技なのですが、ラリー中もものすごくうるさいです。横の人との会話ができないくらい応援をしています。ただ、国によって応援の仕方も結構違っていて、ベースは「ラリー中は見守る」という形になりそうです。ただ、太鼓や近くが音を鳴らすというものは不快に感じる人もいたりするので、そういった人たちも見やすい環境を作っていくのも気を遣っていきたいです。盛り上がるからなんでもOKという形にはしたくないですね。

――最近ではテレビでもバドミントンの試合が放映されるようになってきました。プレイヤー視点でみるとフットワークや球回しがすごい、というのは伝わるのですが、全く知らない人が見ると盛り上がるポイントがいまいち分かりにくいとも感じます。池田さんから見てバドミントの試合の注目ポイントはどういった部分になりますか

池田氏:基本的にはエクストリームな競技だと思っています。単純にシャトル(羽根)を打ち合っているだけではなく、転びながらシャトルを打ち返したりしますし、ジャンプする高さや球速493キロ(スマッシュ初速)というギネスに球技最速で記録されるなど、そういったものに対して「言葉」を要らないと考えています。見てもらって「すごい!」と感じてもらうのがすごい競技だと思います。

シングルスとダブルスで注目してもらう部分は変わってくるのですが、シングルスに関して言うと1対1ということでコートが非常に広かったりします。いろいろな形でショットが決まってくるですが、ポイントに繋がったショットがどういう形で決まったのか、というのは見てもらうと面白いかもしれません。前後左右動き回る形になりますので、ポイントが決まるまでにどういう過程があるのかを見てもらいたいです。

―――「駆け引き」の部分ですね


池田氏:そうです。ダブルスに関して言うと、攻撃と守りがはっきり分かれるシーンが数多くあるので、そういった「スピード感」といったところに注目して頂きたいです。細かいところを言い出すとたくさんあるのですが、大枠としてはそういった部分に注目してほしいです。

―――ラリーポイント制が導入されたり、サーブの位置が変わったり…とルールが目まぐるしく変更されている印象があります。選手への影響は?

池田氏:長い歴史があって、ルールが変更されているかと思います。道具も進化してきていますし、ルールも変更されています。選手からするとルールが決まってしまえばそのルールに従うしか無いのですが、例えばラリーポイントが導入された際などは「サービス権があったほうが得意だった…」という選手がいたのも事実です。どのスポーツ競技もそうだと思うのですが、どんどん商業化してきていて、バドミントンもその流れがきていて、ワールドワイドで見た時に賞金金額もどんどん上がってきていて大会数も増えています。


選手からするとルールが変わるということは選手への影響はもちろんあるのですが「大会数が増える」「賞金も稼げる」というメリットも非常にあります。ラリーポイント制を導入することで試合時間を短縮することができて、大会数が増やすことができることはもちろん、試合時間が長すぎるとオリンピック種目から外されてしまう可能性などもあったりします。「ラケットの長さが変わる」といったものがでてきたら話は別ですが、現状のバドミントンをベースに単にルールが変更されていくのは競技としての「成長」として必要なことなのかな、と個人的には考えています。「21点3ゲーム」がバドミントンが一番面白く見れる点数だと思いますが「11点5ゲーム」にすることによって、その間にCMを入れて、何十億という莫大な予算がついて、それを選手に還元できる、といったメリットもあるかとは思います。いずれにせよ、それぞれに適応していくのがアスリートだと思います。

バドミントンは、今が転換期

―――池田さんがバドミントンをやりはじめたきっかけは?

池田氏:5歳くらいですね。父親がバドミントンのコーチを務めていました。小学校4年くらいでJリーグが立ち上がり、途中サッカーなどもやりたかったのですが、私はスポーツはバドミントンだけですね。

―――バドミントンに人生賭けてもいいな、と思った瞬間は

池田氏:オリンピックですね。オリンピックを目指そうと思った時にスイッチが入りました。「メダルを獲る」となってからは自分のライフスタイルの軸は競技でした。


オリンピックでもメダルを獲得して、国内の大会も変わらなければいけないというところで「TOP4 TOURNAMENT」がひとつの転換点になればいいな、と考えています。今回の大会が成功すれば今後の大会のベースになっていくと思いますし、仮に失敗したとしても「なぜ成功できなかったのか」と次に繋がる施策になると思います。まずは「やってみる」ということが非常に重要だと考えています。きっと、やってみないと分からない部分が多くあると思います。今までバドミントンを見に来る人は「見て楽しかったね」で終わっている人が多かったと思うのですが、会場に見に来て「この空間に来て良かった」と感じてもらうことが非常に重要だと思いますので、そういった空間作りを意識していきたいです。

バドミントンに限らず、これからいろいろなスポーツは変わっていくかと思います。スポーツをただ見るだけなら興行する必要は無いと思います。そうではなくて、良い椅子に座って美味しいものや飲み物を食べながら試合を楽しみ…といった要素も必要になってくるはずですので、そういったファンに合ったソリューションを提供していきたいです。

―――選手に頭にGoProなどを装着してもらって、一人称視点の試合映像なども見てみたいです

池田氏:テックを絡めた演出も考えたりしたのですが、試合中に選手につけてもらうのはやはり難しいですね。審判や線審などにつけてもらうのは面白いかもしれません。

―――「TOP4 TOURNAMENT」に込める意気込みと、今後のバドミントン業界に向けて。

池田氏:「TOP4 TOURNAMENT」はある意味今までにない大会になっていますし、日本最高峰のゼビオアリーナで実施をすることで、今までのバドミントンとは違った見え方ができると思います。そういうものがスタンダートになっていかないと、今後のバドミントンは発展していかないと思っていますので、今回の「TOP4 TOURNAMENT」が起爆剤となって、既存のファンの方はもちろんのこと、新規のお客様を含めていろいろな層にリーチしていければと思います。オリンピックで金メダルを獲った種目ということで、選手自身もパフォーマンスを発揮しやすい環境をどんどん作っていきたいと思います。世界で戦える選手の力量と国内の大会演出はかけ離れている部分があるので、いろいろな人が努力をしながら環境作りを進めていければと思います。

―――ありがとうございました

池田氏:ありがとうございます。


さらなる発展を遂げようとしている日本バドミントン。今回の「TOP4 TOURNAMENT」に成果に注目していきたい。

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著者:森 元行

≪CYCLE≫