芽生えた五輪代表としての自覚
MGCで優勝した直後は、突然日本中から脚光を浴びて、とまどった表情ばかりが印象的だった。なかなか思いを口にできない。記者に囲まれて質問されても、短い回答を出すだけで精一杯だった。
ところがこの日、福島県で行われた記者会見では、同じ五輪代表となる日本郵政グループの鈴木亜由子選手とワコールの一山麻緒選手、さらに補欠となる天満屋の小原怜選手と松田選手を左右に、センターの位置で堂々としたコメントで応じた。
豊富な練習量でMGCのような一発勝負でも一番冷静に走れる。そんな前田選手のスタイルに五輪代表としての自覚も加わった。
自分の走りを最後までやりたい
当日は午前中に、1964年の東京五輪男子マラソンで銅メダルを獲得した円谷幸吉さんの墓前で手を合わせた。
「円谷さん、すごい人だったんですね。東京五輪に向けて私も頑張ります」
まずは元気な状態でスタートラインに立てるように、継続して練習して、自分の力を発揮できるように五輪本番を迎えたいという。
コンディショニングはこれから監督と相談して練習を決めていくというが、「1回ハーフを走ってみたい」と語った。
天満屋には2大会連続で惜しくも五輪正代表の座をつかめなかった小原選手がいるので、お互いで切磋琢磨していきたいとも言う。
「長い距離を走って脚造りをしてから、徐々にスピードをつけていきます。いつもの走りを、しっかりと。どんなレース展開になろうとも、自分の走りを最後までやりたいです」
東京五輪の女子マラソンは8月8日午前7時、北海道札幌市でスタートする。
≪山口和幸≫
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