【Bリーグ】アルバルク東京・伊藤大司AGM 「ゼネラルマネージャーになりたい」をいかに叶えるか 前編

古巣チームでゼネラル・マネジャーを目指す伊藤大司AGM  (C)ALVARK TOKYO

昨シーズンをもって現役を引退したアルバルク東京(以下、A東京)の伊藤大司アシスタントゼネラルマネージャーは、日本有数のトップクラブでどのような仕事に携わっているのか……現役時代を振り返りつつ、セカンドキャリアとしての現在のキャリア、トップクラブとして今シーズンの目標、さらには親交のあるNBAプレイヤー、ケビン・デュラントとのエピソードなどを聞いた。

◆【後編】アルバルク東京・伊藤大司AGM 「ゼネラルマネージャーになりたい」をいかに叶えるか

■アシスタントゼネラルマネージャーとはどのような仕事か

伊藤は、高校からアメリカへ渡り、ポートランド大学時代にはNBAでプレーするケビン・デュラントとチームメートだった。日本人2人目として富山グラウジーズに所属する松井啓十郎に続きNCAA1部に出場をしている。その後、2010年にトヨタ自動車アルバルク(現・アルバルク東京)に加入。日本代表としてもプレーをし、日本バスケットボール界を支えてきた一人である。

ポートランド大学時代のチームメート 左から2番目が伊藤大司、中央がケビン・デュラント    提供:伊藤大司

7シーズン在籍したのち、レバンガ北海道滋賀レイクスターズに移籍し活躍。2020-21シーズンをもって現役を引退し今年、古巣アルバルク東京のアシスタントゼネラルマネージャーに就任した。

アシスタントゼネラルマネージャーとはどのような仕事なのか。伊藤は「ゼネラルマネージャーの補佐をしている。チーム編成の部分で、オフシーズンはどういう選手を集めるかコーチングスタッフはどうするのか。シーズン中はいかに良い環境で戦っていけるかが今のチームにとって重要な仕事」だと捉えている。

伊藤は留学経験があり語学が堪能だ。「海外出身選手たちのケアを元選手の立場からどういうアプローチがかけられるのかを特に意識している。ルカ・パヴィチェヴィッチ・ヘッドコーチは現在英語で指揮を執っているので、コーチと選手のコミュニケーションなども通訳とは違った立場や目線でサポート」をしている。

今は毎日が新しい発見の連続だそうで「どう動いたらいいのか肌で感じ学んでいる。ルーキー過ぎて」と笑っていた。
 

■「変わっていくバスケットボールのトレンドを確認」

今シーズンA東京は大変注目を集める補強を行った。ただ伊藤の契約は今年7月1日からであったため、今回の補強劇については「大きい部分では携わってはいない。こんなチームにしようと思うと情報のシェアをされた」のだという。その中で「ポイントガードを外国籍選手にしようという話があり、まだ選手は決まっていなかった。リストを見せてもらい、感想程度にこんな選手がいいと思うと意見を伝えた」ことが、伊藤にとって初仕事だったのかもしれない。早速意見を求めたあたりからも恋塚唯ゼネラルマネージャーとの良好な関係性や信頼されていることが伺い知れるだろう。

練習には今のところ毎回立ち会っているため仕事場は練習場がほとんどだ。7月からは個人のワークアウトも行った。「練習を手伝うわけではないが選手やスタッフの状況を見たり、しっかりコミュニケーションが取れているのかを確認している。フロント側に伝えることも必要」という。伊藤は長くポイントガードとしてプレーしてきた。クラブ内で橋渡し役であり潤滑油のような存在になっていくのではないだろうか。

そして、それだけ間近で選手たちを見ていてもプレーをしたいとはまったく思わない。A東京は国内トップの練習環境で、所属する選手も代表クラスが顔を揃えている。「ここまでやりたいと思わないのか」と自身でも驚いている。「今は1週間にシュートを1、2本打つ程度」だという。ここまで気持ちが切り替えられているのは選手としてやり切った証拠だろう。引退後、気持ちの切り替えができずに苦しむ者も多い。もっとやりたい欲求や、あのようにすれば良かったと後悔の気持ちを抱えてしまう。でも伊藤の表情はとてもスッキリしていて、次の目標にしっかり照準を合わせ新たな挑戦を楽しんでいるようだった。

話を聞いたこの日も、取材後は「関東大学バスケットボールリーグ戦へ視察に向かう」と言っていた。「いい選手がいるのか見るだけでなく、変わっていくバスケットボールのトレンドを確認。大学生はこういうバスケットをしているのか、このチームのカラーはどうか、この選手はこんな風に成長するだろう」と幅広い視野で観察し吸収していく。

選手時代は「スキルや自分がコートに立ったらどう周りの選手を使うのか、どう声掛けをするのか新たな発見をするため」に試合を見ていた。今は見る角度が全く変わった。「こういうバスケットボールが楽しいなら、こんなコーチにしよう」など現役時代には考えなかったような外からの視点がある。

現役時代、アルバルク東京で7年間プレーした伊藤大司(C)ALVARK TOKYO

伊藤は現在34歳、来月35を迎える。11シーズンに渡る現役生活に幕を下ろしたわけだが「35までやれば選手としては十分なのではないか」と語る。今年5月5日に行われたシーホース三河戦が結果として、現役ラストゲームとなった。その時点で心の中は半分決まりかけていた。

実は滋賀在籍2シーズン目の途中にも今のポジションのオファーの打診を受けている。しかし当時滋賀では、齋藤拓実(現・名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)や狩俣昌也(現・長崎ヴェルカ)らが加入し伊藤のプレータイムは極端に減っていった。初めてスコアカードに「DNP」という文字が記された。Do not play…その試合で出場がなかったことを指す。当時はまだ消化不良だった。悔しくて苦しくて「もっとやりたい。まだやれる。選手としてもう一花咲かせたい」とオファーを断った経緯がある。今回2度目のオファーも迷いが無かったわけではない。もちろん、選手としてのオファーもあり現役を続けることもできた。しかし伊藤には、滋賀へ移籍してから心の中に芽生えた「ゼネラルマネージャーになりたい」という夢があった。

◆2度王者に輝いたアルバルク東京、優勝候補筆頭のつまずきと再スタート

◆【著者プロフィール】木村英里 記事一覧

◆アルバルク東京・田中大貴がBリーグMVP受賞 「常に上を向いてこの困難を乗り越えていきましょう」

■著者プロフィール

木村英里(きむら・えり)●フリーアナウンサー、バスケットボール専門のWEBマガジン『balltrip MAGAZINE』副編集長

テレビ静岡・WOWOWを経てフリーアナウンサーに。現在は、ラジオDJ、司会、ナレーション、ライターとしても活動中。WOWOWアナウンサー時代、2014年には錦織圭選手全米オープン準優勝を現地から生中継。他NBA、リーガエスパニョーラ、EURO2012、全英オープンテニス、全米オープンテニスなどを担当。


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