【WTA】BNPパリバ・オープンに挑む大坂なおみ、ランキング85位からの逆襲なるか

82位から上位進出を狙う大坂なおみ(C)Getty Images

大坂なおみが前年覇者として挑んだ全豪オープンは3回戦のアマンダ・アニシモバ(米国)戦にてファイナルセットの末に敗戦後。ロッカーへと戻る途中に待ってくれていたのはチームメンバーだったコーチのフィセッテ、大坂を抱きしめた瞬間、彼女は思わず視線を下に落とした。

「いくつかのゲームでは命をかけて戦っているようにも感じた。正直、意地だけで取れたゲームもあったと思う…すべてのポイントを争ったのだから、悲しむことはないし、自身を誇りに思う」。

自身のテニスへの歯がゆさと、勝負師として力を出し切った末の敗戦を受け止めるべく、大坂は試合後も戦っているようだった。この敗退より、昨年の優勝ポイントである2000ポイントをディフェンドすることが出来ず、ランキングは85位まで急落。今後の四大大会はノーシードからの挑戦となり、ドロー次第では1回戦からトップシードとの対戦もあり得るようになった。

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■「私は前に進みたいだけ」

大坂は「ランキングは気にしない。私は前に進みたいだけ」と述べ、敗戦から2週間が経つ頃には自身のSNSで次の大会はインディアンウェルズで開催されるBNPパリバ・オープン(WTA1000)に出場することを明かした。

BNPパリバ・オープンといえば、大坂なおみがWTAツアーで初タイトルを獲得した場所として、懐かしく思い出される大会だ。2018年大会ではノーシードで出場し、1回戦では元女王のマリア・シャラポワ(ロシア)を破り、準決勝では当時No.1だったシモナ・ハレプ(ルーマニア)を撃破し決勝に進出。失うものなどないかのようにコートを駆け回る若きスターは、決勝で第20シードのダリア・カサキナ(ロシア)をストレートで下し、1万6千人の観衆の前で初々しい優勝スピーチを披露した。この活躍から多くの人が大坂の名前を覚え、彼女にとっては大躍進のきっかけとなった地だ。

同年の全米オープンでは憧れのセリーナ・ウィリアムズ(米国)を決勝で破り、女子テニス界の新たな芽として確かな実力を示した。今では4つのメジャータイトルを誇り、彼女の思考や発言は多大な影響力を持っている。それと同時に自身に向けられる過度な研究に加え、ノンプレーシャーで挑み続けられる「戦いにくさ」を正この4年間で感じてきたことだろう。そして今、ノーシードからWTAツアーを初制覇した20歳の頃とは全く異なる自分自身で85位から再出発することになった。

2019年以降、大坂の主戦場はツアーで最もグレードの高いWTA1000シリーズと四大大会だった。今後はトップ10を維持できていた時とは違い、出場する大会のグレードを下げざるを得ないだろう。ある意味、昨季は9大会しか出場できていないことから、大坂が望むのであれば試合数をこなしながら勝ち癖を取り戻すスケジュールを組むこともできるはずだ。もしくは次戦のBNPパリバ・オープンでの快進撃でランキングを再浮上させ、スケジュールを調整しなおすこともチームの念頭にはあるかもしれない。いずれにせよ、今の彼女は今季の新たな出発のなか、よりクリアな頭で良いプレーを発揮することに力を注ぐはずだ。

4年前、第2のグランドスラムと言われる本大会を制覇したとき、彼女は現在と同じようなことを語っている。「ランキングにはこだわらない。むしろインディアンウェルズでのようなプレーを今年一杯続けたい」。

あの頃も彼女はランキングに振り回されずに浮上のきっかけを掴んでいった。

結果は後からついてくる。より良き自分自身を目指すだけ」それは今も変わらない彼女の成長への指針だろう。大坂は新境地を開くため、ノーシードから優勝へと駆け上がったインディアンウェルズの地に向かう。

大坂はBNPパリバ・オープンにワイルド・カードでの出場が決定。3月9日、開幕を迎える。

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著者プロフィール

久見香奈恵●元プロ・テニス・プレーヤー、日本テニス協会 広報委員

1987年京都府生まれ。10歳の時からテニスを始め、13歳でRSK全国選抜ジュニアテニス大会で全国初優勝を果たし、ワールドジュニア日本代表U14に選出される。園田学園高等学校を卒業後、2005年にプロ入り。国内外のプロツアーでITFシングルス3勝、ダブルス10勝、WTAダブルス1勝のタイトルを持つ。2015年には全日本選手権ダブルスで優勝し国内タイトルを獲得。2017年に現役を引退し、現在はテニス普及活動に尽力。22年よりアメリカ在住、国外から世界のテニス動向を届ける。


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