矢吹正道と寺地拳四朗のWBC世界ライトフライ級タイトルマッチが19日、京都市体育館で行われる。昨年9月22日に行われたカードのダイレクトリマッチだが、今回はチャンピオンと挑戦者の立場が逆。試合後、判定に物議をかもした“因縁の一戦”となる。
◆【前回対戦のフル動画】疑惑のバッティングで“因縁の一戦”に…寺地拳四朗vs.矢吹正道戦プレーバック
■後味の悪さが残った昨年の一戦
前回のタイトルマッチまでの戦績は、拳四朗が18戦18勝(10KO)、矢吹が15戦12勝(11KO)3敗だった。拳四朗にとって9度目の防衛戦で、目標は具志堅用高が持つ13度連続防衛と公言していた。つまり、チャンピオンとしては通過点であり、専門家の予想も明らかに王者を支持していた。
ところが結果は、アンダードッグだった矢吹の10ラウンドTKO勝ち。見事に下克上を果たしたわけだが、試合後に「矢吹による故意バッティングがあった」とネットが炎上して様相が一変した。拳四朗サイドもJBCに抗議したが、裁定の結果は「却下」。まさか故意とは思わないが、ビデオを見ればバッティングによって出血したことは明白だった。
しかも、この試合は2021年の年間最高試合に選ばれた。いい試合だったことは確かだが、これほど後味の悪い試合が最高試合とは……。いろいろな意味で、“因縁の一戦”は初戦と同じ会場でゴングを迎える。
■勝負の綾となった公開採点
拳四朗が有利と思われた試合を落としたのには、いくつもの理由がある。当初、試合は9月10日に予定されていたが、拳四朗がコロナ陽性と診断されたため12日間延期された。拳四朗は「(その間は)動画を見ていた。練習を再開したのは9月6日」とコメントしており、心身ともに準備が不十分だったのは明らかだった。うがった見方をすれば、相手をナメていたと言われても仕方ない。
試合では、第1ラウンドから拳四朗がジャブを繰り出すが、いつもの威力がない。そして、矢吹がときおり大振りすると、ブロックしながらバランスを崩す。タジタジになって追い立てられるようで見栄えが悪い。
ここで勝負の綾となったのが公開採点。第4ラウンドまでの採点は、2人がフルマークで矢吹、1人がドローと発表された。矢吹陣営はガッツポーズ、チャンピオンコーナーには明らかな焦りが漂った。この採点が両者の心理に大きな影響を及ぼしたことは間違いない。
劣勢の拳四朗は、本来のアウトボクシングを捨てて接近戦でポイントを取りにいく。この作戦が裏目と出て乱打戦に。チャレンジャーにとってみれば、願ってもない展開となった。第8ラウンド終了時の公開採点は矢吹の3-0。しかも、6ポイント、4ポイント、2ポイント差で、残りすべてをとってもチャンピオンは引き分けが精一杯となってしまった。それでも第9ラウンド、チャンピオンは意地を見せ、ボディ攻撃で活路を開いてKOチャンスを迎える。ところが、ここで問題のバッティングが起こってしまった。流血で顔半分を汚した拳四朗に試合をひっくり返す力は残っていなかった。