【W杯】開催まで1年 “沖縄バスケ”が呼び込んだFIBAワールドカップ

 

【W杯】開催まで1年 “沖縄バスケ”が呼び込んだFIBAワールドカップ
お披露目されたW杯のカウントダウンクロックの前でガッツポーズを取る日越延利沖縄県バスケットボール協会専務理事(左から2人目)、三屋裕子日本バスケットボール協会会長、馬瓜マブリン日本女子バスケットボール代表選手(右端)ら関係者(8月25日、那覇市テンプス館前広場) 撮影:本田路晴

■沖縄バスケを支える選手層のすそ野の広さ

W杯の会場ともなる沖縄アリーナ(沖縄市)がある中部地域は嘉手納基地を筆頭に米軍の基地が集中する地域だ。米軍が沖縄バスケに与えた影響は無視できない。ただ、沖縄バスケは中部地域だけのものだけでなく、今や離島を含む県内全体に隈なく広がっている。

日越氏は「沖縄には本島、離島も含め、12歳以下の子どもを対象にしたクラブが300以上ある。これは人口比で比較すると突出した数字だ」と話す。

早朝からシュートの練習に励む沖縄の子どもたち(8月27日、沖縄県北谷町のアラハビーチ) 撮影:本田路晴

人気球団の「琉球ゴールデンキングス」は子ども向けのアカデミーも運営。3歳から15歳の子どもたちを対象にキングスのアンダー18のヘッドコーチを務める与那嶺翼氏らが指導にあたっている。

8月28日、那覇市の奥武山(おうのやま)公園で行われたW杯の一年前イベントに登場した与那嶺コーチは沖縄の子どもたちの特徴を「素直」と表現した。その“素直な”子どもたちを相手にとにかく「ほめる」ように努めているという。

「成功体験は大事なので、何かやってうまくいった時はとにかくほめるようにしている」。加えて、子どもたちが新しいことにチャレンジした時も必ずほめる。「成功、失敗に関係なく、何かにチャレンジした時はほめる。チャレンジする勇気はたとえ、その時にうまくいかなくとも必ず次に繋がるからだ」。

沖縄のバスケが独特の進化を遂げる背景には、米軍基地の存在など沖縄特有の独特の理由もあるかもしれない。しかし、こうした選手層のすそ野の広さに加え、子どもたちを“型”にはめることなく、伸び伸びとプレーさせる指導者たちの姿勢も沖縄バスケの強さの秘密なのかもしれない。

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2023W杯公式マスコット「ジップ(JIP)」と記念撮影する参加者たち。「ジップ」は共催3カ国の日本、インドネシア、フィリピンの英語表記の頭文字に由来する。赤、青、白の3つの国旗にちなんだ配色となっている。(8月28日、那覇市の奥武山公園) 撮影:本田路晴

■期待したいNBA選手たちのW杯出場

来年のW杯はNBAのスター選手が各国代表として来沖する可能性がある。ワシントン・ウィザーズで活躍する八村塁や、ブルックリン・ネッツ渡邊雄太には日本代表チームの一員としてぜひ参加して欲しい。

もともとバスケが自分たちも参加する身近なスポーツとして根づいた沖縄で行われる来年のW杯。NBAのトッププレイヤーたちが大会に出場し、目の前でプレーすれば、沖縄の子どもたちにとって、これ以上の刺激はない。

沖縄バスケはさらなる飛躍のステージに入る。

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著者プロフィール

本田路晴●フリーランス・ジャーナリスト

読売新聞特派員として1997年8月から2002年7月までカンボジア・プノンペンとインドネシア・ジャカルタに駐在。その後もラオス、シンガポール、ベトナムで暮らす。東南アジア滞在歴は足掛け10年。最近は沖縄をテーマに取材。

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