昨シーズン、日本のトップを常に走り続けてきたベテラン選手はくすぶっていた。
そして金丸晃輔は、1年間在籍した島根スサノオマジックを去り三遠ネオフェニックスへと移籍することを決断した。
新天地に三遠を選んだ理由…。
◆「キムタク、スポーツベッティング始めるってよ」 JSCが新スポーツくじを発売、木村拓哉さんがアンバサダーに
■大野HCが「どういうバスケットをするのか」が鍵だった
もっとも大きかったのは、同じタイミングで新たに指揮官に就任した大野篤史という存在。金丸がチームを決める前に大野ヘッドコーチが就任するかもしれないという噂を聞き興味が湧いた。その後、不甲斐ないシーズンを送ってしまったと悔いる思いも大野に吐露した。「大野さんがどういうバスケットをするのか、ビジョンを聞いた」上で移籍を決めた。
島根に移籍する前に8年在籍していたシーホース三河と同じ愛知県ということも大きかった。
昨シーズン、選手として何よりも大切な体のメンテナンスにも悩みを抱えていた。「チーム内でケアを行ってもらうだけでなく自身でも治療院に通う」などパフォーマンスを意識してきたが、島根でその環境をすぐに整えることが叶わなかった。愛知県に戻り、当時メンテナンスしてもらった治療院にまたお世話になることができている。長くトップを走り続けることができるのは、常に「体のとメンタル」を整えているからだ。
「シュートが入らないかも……という迷いを持たずうまくいくことだけを想像する。弱気にならない」こと。金丸にも「体のコンディションに不安があったりシュートが入らなかったり、ネガティブになってしまうことももちろんある」が、メンタル面を「クリアできなければ良い結果は出てこなかった」と語る。プレーに集中するために雑念を取り払わなければならない。
昨シーズン感じた移籍の課題。それは「外国籍ヘッドコーチ特有の難しさもあった」という。日本のバスケ界を長く見ているヘッドコーチであれば、金丸がどういう選手かを理解している。だが、新しく日本へやってきたコーチとは一からお互いを知り合い作り上げなければならない。「言葉の壁もある中、得意なこと、どういうタイミングでシュートを打ちたいのかうまく伝わらず」悶々とした。
その点、大野は金丸を知り尽くしているかもしれない。およそ10年前、金丸は当時JBLのパナソニックトライアンズに在籍していた。そこでアシスタントコーチを務めていたのが大野である。「当時は僕もプロになったばかりで怖い印象があった。今はすごくコミュニケーションを取っていて、よく話し掛けてもくれる。バスケ以外は優しい方なのでバスケ以外は楽しい」と笑った。金丸をもっとも生かすことができる指揮官はそんな大野なのではないか。10年という期間の中で、大野はBリーグ開幕当初から6シーズンに渡り千葉ジェッツふなばしのヘッドコーチを務めていた。対戦のたびに「苦手なことを知っているな。とても研究されている」と感じた。「そこまで知ってくれているのは、逆に僕の生かし方を知っているかもしれない」という期待が三遠に身を置く後押しとなった。自分を知り尽くし、声を掛けてくれた。実際、「フォーメーションやスタイルは僕がシュートを打てるような形が多い。シュートチャンスが多くありがたい。そこから違った展開も生まれるから楽しい」と期待をにじませた。

稀代のシューター金丸晃輔は新天地で再び輝くのか 提供: 三遠ネオフェニックス
日本のバスケットボールは、「若い頃はバスケットの内容の指導が中心でその他の部分はそこまで重要視されていなかったと思う。今はディフェンスから入るバスケットが主流」となり進化している。「ディフェンス苦手なんです」という金丸。大野は「自分の得意なことをコートで表現しなさい」と指導している。もちろん指揮官は金丸に「得点やオフェンス面で牽引」することを求めているが、「最後には、ディフェンスもやってもらうよと言われる」と苦笑していた。ディフェンスに力を注ぐチームの一員になった。「ディフェンスに精力を注ぎすぎるとオフェンスが思うようにいかないことがある。悩み中」と打ち明けてくれた。今シーズンは「慣れる」という作業も必要。「苦手なこともスタンダードでもいいからプレーしなければいけない」と、ベテランも自らフィットさせるべく試行錯誤の最中だ。
自身のプレーがうまくいかなかったときは大好きな釣りへ赴く。釣りのこと以外何も考えなくなる時間が好きだ。メンタルを落ち着かせることができる場所。「メンタル面のケアも重要」という金丸にとって、愛知には馴染みの釣りスポットがある。新たな挑戦の中で心を落ち着かせるには最適な環境に戻ってくることができた。今は「練習がハードでまだ行く余裕がない。シーズンが始まったら時々行こうと思う」と密かに楽しみにしている。