第59回札幌記念(GII、芝2000m)は、今年の大阪杯覇者で本競走連覇を狙うジャックドールを筆頭に、一昨年のダービー馬シャフリヤール、昨年暮れの香港ヴァーズを制したウインマリリンと、GI馬3頭が集結。加えて、プログノーシスやダノンベルーガなど、登録馬15頭中14頭が重賞勝ちの実績があり、真夏のスーパーGIIらしい、豪華なメンバーが激突する。
そんななか、復権が待たれるシャフリヤールが、今回の「危険な人気馬」の標的となる。
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目次
■疑問が残る2000mへの適性力
一昨年のダービーを制し、世代の頂点に立ったシャフリヤール。昨年はドバイシーマクラシックで海外GI初制覇を飾るなど、世界を股にかけて活躍。その後はGIを連戦し、ジャパンCで2着に入るなど、勝ち星こそ恵まれていないが、トップレベルのメンバーを相手に好レースを続けており、豪華なメンバーが揃ったとはいえ、GIIの今回は負けられない戦いとなるだろう。
しかし、絶対的な存在かといえば、答えはノーと言わざるを得ない。まずは、ダービー馬と札幌記念の相性の悪さ。札幌記念が1997年にGIIへ格上げされて以降、ダービー馬が本レースへ出走した例は、わずかに4頭(延べ6回)と少ないが、2010年ロジユニヴァースと、18年マカヒキの2着が最高着順で、97年以前を含めても、ダービー馬が札幌記念を制したことは一度もない。
これまでに【0.2.1.3】と、決して悪い成績ではないのだが、東京芝2400mを勝ち切る力と、札幌芝2000mを制することは、そもそも求められる適性が異なる。特にシャフリヤールは、ダービー、ドバイシーマクラシックと、2400m前後で高いパフォーマンスを叩き出す能力に長けているだけに、2000mはやや適性外とも言える。事実、唯一走った2000m戦の天皇賞・秋では、本来の力を発揮できず5着に敗れている。
また、今回は横山武史騎手とのコンビで臨むわけだが、今や関東のトップジョッキーに上り詰めた同騎手が、関西の名門・藤原英昭厩舎の馬に乗る機会は意外と少なく、デビュー以来わずか6回のみ。しかも成績は【0.0.0.6】と、いまだに馬券圏内にすら来たことがない。これまではそれほど有力馬への騎乗がなかったことも要因ではあるが、実績の乏しい厩舎×騎手のタッグに信頼を寄せるには、やや心許ないデータだ。
シャフリヤールの前走は、ドバイシーマクラシックに出走し、イクイノックスに水をあけられての5着。得意な距離でも、世界最強馬には歯が立たなかった。加えて、過去10年の札幌記念で、海外遠征帰りの馬は【0.1.1.9】と、あまり好結果を残せていない点も気がかり。今回は、決して得意とはいえない舞台で、本来の走りを見せることは難しいと考え、シャフリヤールは、思い切って「消し」でいきたい。
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著者プロフィール
石川豊●いしかわゆたか
20代から競馬メディアに寄稿。「ユタカ人気」と言われた時代、武豊が騎乗する過剰人気馬をバッサリと切り捨てる馬券術を駆使し、年間回収率100%超に成功。以来、「1番人気の勝率は3割」を念頭に、残り7割の可能性を模索し、「危険な人気馬」理論を唱え続ける。