笑顔あふれる“真剣勝負” 女子プロ野球オールスターゲーム2019

2019年7月15日(月・祝)明治神宮野球場にて『女子プロ野球オールスターゲーム2019』が開催された。

リーグ開設10周年となる2019年は初の関東地区での開催となったが……ところで、皆さんは“女子プロ野球”というものを観たことがあるだろうか? 聞いたことはあっても、実際に足を運んだことがないという人も多いのではないかと思う。

今回は女子プロ野球オールスターゲームの内容のほか、ぜひ一度現地で体感すべき女子プロ野球の魅力”をお伝えしたい。

年に一度の晴れ舞台 女子プロ野球夢の球宴”

女子プロ野球リーグは、埼玉アストライア・愛知ディオーネ・京都フローラの3つのプロチーム育成チームのレイアで構成されている。

今回のオールスターゲームはマンガ『花鈴のマウンド』Presentsゲームということで、出場選手たちは、主人公の桐谷花鈴(きりたに・かりん)が通う星桜(せいおう)高校チームと、ライバルである柊木美玲(ひいらぎ・みれい)が通う京都雅(みやび)高校チームに分かれて対戦した。

マンガの世界と実在する選手がクロスオーバーする、斬新な設定だ。

出場選手はプロチームよりトップ選手34名が選出され、チームは星桜・小林雅英(こばやし・まさひで)監督と京都雅・石井義人(いしい・よしひと)監督がドラフト形式で決定した。

女子プロ野球史上初の神宮球場でのオールスター開催ということもあり、当日は多くの観客が駆けつけた。試合当日は時折小雨もパラつく曇り空だったが、選手たちは対照的に晴れやかな表情をしていた。

両軍のシートノックが終わり、試合開始前のセレモニーがスタートする。グラウンドにはオールスターゲーム限定でスタジアムDJを担当する南隼人(みなみ・はやと)さんが登場し、観客とのコールアンドレスポンスでスタジアムを盛り上げた。

南隼人さん

さらにゲストで声優の下地紫野(しもじ・しの)さんも登場。下地さんは『花鈴のマウンド』のアニメCMで、主人公である桐谷花鈴のキャラクターボイスを担当している。

このあと始球式も担当するということで、やや緊張気味のようだった。

下地紫野さん

加藤優の想い 女子プロ野球の未来

チアチームによるパフォーマンスののち、スタメンが発表された。ベンチから飛び出した選手たちがライン上に整列する。

ここで出場選手を代表し、埼玉アストライアの加藤優(かとう・ゆう)選手が挨拶を行った。

加藤選手は、オールスターゲーム開催の感謝の言葉とともに、私たちへ重大なメッセージを投げかけてきた。それは、現在女子プロ野球は存続の危機にあるということだった。

加藤優選手

「女子プロ野球選手になることを目指す子がいるのなら、女子プロ野球は潰してはならない」と率直な意見を述べたときには、客席からも「そうだー!」という同意の声も上がっていた。

そして「今日の試合を観て、女子プロ野球の面白さを周りの人に伝えてほしい」と結んだ。

これから始まる球宴の前に、このような発信をすることは異例かもしれない。しかし、場内の雰囲気は変わらぬままだった。むしろ観客一人ひとりに「今日はしっかり観て楽しんで、伝えよう」という意識を芽生えさせるもののようですらあった。

試合開始前のお約束? 女子プロ野球名物プレイボール体操”

加藤選手の挨拶のあとに行われたのは、女子プロ野球名物とも言える“プレイボール体操”。これは音楽とともに準備体操をパフォーマンスとして見せるものだ。

プレイボール体操で準備はバッチリだ。両軍選手たちはベンチに向かい、試合前の円陣を組む。

星桜高校チーム

星桜・小林監督は「お祭りだけど、メリハリを付けて真剣に。勝ちにこだわりたい」と、全力で勝ちに行く姿勢を見せた。

京都雅高校チーム

一方、京都雅・石井監督は「お客さんに楽しんでもらえるように、女子プロ野球の良さを伝えるようなゲームにしたい」と穏やかな表情だった。

女子野球らしさ”満載! 男子野球にはない醍醐味が詰まった内容に

下地紫野さんによる始球式が行われ、いよいよプレイボール!

試合は初回から動いた。星桜の1番・加藤優選手がライト前ヒットで出塁。二死一塁の場面で4番・岩谷美里選手(いわや・みり:京都フローラ)選手がレフトフェンス直撃の特大ヒットを放ち、5番・中村茜選手(なかむら・あかね:京都フローラ)がライト前タイムリーで1点を先制する。積極的攻撃に、観客席はもちろんベンチも大盛り上がりだ。

小林監督の「ラインを超えたらメリハリ付けて」の言葉通り、インプレー中の選手たちの表情は真剣そのもの。キリッとした表情が、観ている者を惹き付ける。

3回裏のマウンドに上がった星桜・磯崎由加里投手(いそざき・ゆかり:埼玉アストライア)は、得意のスローボールで打者を翻弄する。

女子プロ野球以外では滅多に見られない遅い球を軸にした投球術”は、豪速球に慣れた野球ファンが見たらきっと驚くことだろう。

それにしても選手たちは、どこまでも全力でプレーし、全力で仲間を鼓舞し、全力で野球を楽しんでいる。とにかく、全力。その姿は本当に清々しいものだ。

選手とファンが心をひとつに ラッキー“4”のイベント

女子プロ野球はルールにより、試合は7回で終了する。そのため、NPBでいうところのホームチームのラッキーセブンのイベントは4回裏に行われる。

今回はチアパフォーマンスと、神宮球場のビジョンを使って『花鈴のマウンド』新CMのお披露目が行われた。

下地紫野さんによる花鈴の決め台詞「女の子だって甲子園!」の発声に合わせ、選手と観客は入場時に配布されたペーパーボードを一斉に掲げた。

最終回にまさかの展開 試合の結果は?

星桜チームが4回の表に1点を追加し、2-0で迎えた7回表。星桜の4番・金城妃呂選手(きんじょう・ひろ:愛知ディオーネ)は金色に輝くヘルメットで打席に登場する。

これは女子プロ野球ファンおなじみのアイテムで、ホームの球団が最終回にサヨナラのチャンスを迎えた際にランナー(サヨナランナー”と呼ばれている)が着用するもの。「より分かりやすく、楽しく、ドキドキする女子プロ野球」を掲げ、2018年から始まった制度だ。

場面としてはサヨナラの状況ではなかったが、盛り上げ上手の金城選手はこのヘルメットを被って打席に立ち、ヒットを放った。

そして最終回の7回裏、京都雅の攻撃。3番・三浦伊織選手(みうら・いおり:京都フローラ)が打席へ。打球を右中間へ弾き、三浦由美子選手(みうら・ゆみこ:愛知ディオーネ)がダイビングキャッチを試みたが、わずかに届かない! その隙を見て三浦選手は一気にホームを狙う――

クロスプレーの判定はタッチアウト。しかし京都雅はチーム総出でセーフを猛アピール。ここで石井監督は2019年シーズンから導入された『リクエスト』を要求。

リプレイ検証中、京都雅ベンチからセーフを願うコールとダンスが起きるも……

判定は覆ることなく、ツーアウトに。京都雅ベンチは全員がずっこけた。

そしてゲームセット。2-0で星桜チームが勝利を収めた。

星桜・小林監督は「メリハリをつけて選手みんながしっかりプレーした結果。4番を中心に打線も機能していたし、走塁も積極的に行えたのが良かった」と試合を振り返った。

京都雅・石井監督は「せっかくの晴れ舞台なので選手全員を出そうと思っていた。この神宮で、普段と違った雰囲気の野球を見せられたのではないか」とコメント。また、7回裏のリプレイ検証については「最初から(リプレイ要求を)やるつもりだったが、自分より先に選手たちが飛び出していってしまった」と笑っていた。

最後まで笑顔絶やさず 女子プロ野球らしさがいっぱい詰まった一日に 

女子プロ野球では勝利チームが“勝利のダンス”を踊るのがお約束。この日は星桜チームがダンスを披露した。

白い歯を見せて笑い合う選手たちにつられて、観客の表情も自然と緩んでいくのを感じた。常連のファンも初めて来た人も関係なく、この場にいればきっと誰もがそうなるだろう。

試合後には表彰式が行われ、今大会のMVPとして星桜の4番を担った岩谷選手が表彰された。岩谷選手には“花鈴のマウンドのコミックス内に登場できる権”などが贈呈された。

試合を振り返って

試合後、出場選手からコメントを頂いたので紹介したい。

星桜・龍田美咲(たつた・みさき:京都フローラ)投手

「2イニング登板しましたが、最初は緊張して手も足も震えていました。神宮で投げるのは初めてで、とても気持ちが良かったです! 同じチームの村松珠希選手(むらまつ・たまき:京都フローラ)に打たれたのは悔しかったです」

京都雅・今井志穂(いまい・しほ:埼玉アストライア)捕手 ※DHでの出場

「いつもは敵なのに今日は味方だったり、その逆があったり、普段はない対戦を楽しめました。個人的には水流麻夏投手(つる・あさか:埼玉アストライア)が登板するタイミングで打順が回ってきて、まっすぐを投げるという話だったのに打てなかったのが残念でした」

こうして、夢の球宴は盛況のうちに幕を閉じた。9月からは、秋季リーグが関東地方でスタートする。

華やかな試合の様子をお伝えしたが、加藤選手が言ったように女子プロ野球が存続の危機に瀕していることは事実だ。

日本の女子野球は世界トップクラスで、女子プロ野球リーグの選手は毎年日本代表に選出されており、世界大会でMVPに表彰されることも度々ある。

女子プロ野球は、すべての野球少女たちにとって、夢や憧れ、そして目標として存在している。一人ひとりが球場に足を運べば、普及や振興の一翼を担うことができる。

可憐さと豪胆を持ち合わせた、魅力だらけの女子プロ野球を是非一度観に行ってみてほしい。

女子プロ野球リーグ

写真・文:戸嶋ルミ

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