「一人でも感染者が出るなら…」錦織圭、東京五輪への胸中吐露に海外メディアも反応「疑問を提起」

イタリア国際2回戦へ駒を進めた錦織圭(2021年5月10日)(C)Getty Images

テニス・イタリア国際は10日、ローマで男子シングルス1回戦が行われ、世界ランク45位の錦織圭が登場。同28位のファビオ・フォニーニ(イタリア)を6-3、6-4のストレートで撃破し、2回戦へ駒を進めた。錦織は試合後の会見で、東京五輪についても言及。言葉を選びながら、苦しい胸の内を吐露した。

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■海外メディアも「開催へ疑問を提起」と報道

クレーコート通算100勝目を達成し、30日に開幕する全仏オープンへ弾みをつけた錦織。ストローク戦で主導権を握り、完勝といえる内容だったが、試合後の会見で東京五輪に話が及ぶと顔を曇らせた。

「安全に開かれるなら開かれるべきだけど、今の状態では何とも言えない」と慎重に言葉を発しつつ、「死人が出てまでも行われるべきではないと思う。究極的には一人でも感染者が出るなら気は進まない」と話した。

昨年8月、自身が新型コロナに感染し、発熱や味覚障害など苦しい経験をしたからこそ、コロナ禍での五輪強行開催に疑問を呈した形だ。その上で、9日に大坂なおみが「予期せぬことが起きており、人々が不安に感じているのなら(開催について)議論をすべきだ」とコメントしたことに賛同し、「早く議論をして判断を」と訴えた。

ESPNなど海外メディアも「錦織、東京五輪開催について疑問を提起」という見出しで、会見の模様をレポート。「彼ら(IOCや東京五輪組織委員会)が何を考えているのか分からないし、彼らがどんなバブル方式を作ろうとしているのかも分からない」という錦織のコメントを紹介し、感染症対策に関する情報が少ないことへの危惧も併せて伝えた。

■女性アスリートは子供との“別れ”に反対

また、女子テニスの有力選手であるセリーナ・ウィリアムズ(米国)の動向も報道。東京五輪が開催されるとしても、3歳の娘を同行させることができない場合、「私も日本に行かない」というセリーナのコメントを掲載し、感染症対策のプロトコルとして、選手関係者の入国制限が家族にも及ぶ場合、参加を断念する意向を示している旨を伝えた。

この件については、女子サッカーの米国代表FWアレックス・モーガンも先日、1歳の娘が同行できない可能性があることに「女性アスリートの乳幼児には適用されるべきではない」と、想定される感染症対策に抗議の声をあげていた。今後、幼い子供を抱える女性アスリートへどういう配慮がなされるのか、あるいは配慮しないのか、重要な課題として浮上してきそうだ。

日本では五輪開催の可否をめぐる議論が激しさを増し、五輪反対の署名サイトには9日までに30万筆以上の賛同が集まり、読売新聞社の世論調査(7~9日実施)でも約6割の人が「反対」と答えている。

■五輪主催者レベルに求められる具体的な方策

そんな中、今回の五輪の象徴的な選手になっている競泳女子の池江璃花子のSNSに「辞退してほしい」「反対に声をあげてほしい」といったコメントが多数寄せられる事態が発生。この動きに対して、池江がツイッターで「とても苦しい」と反応すると、アスリートに直接矛先を向けられるやり方に非難が集中した。

いずれにせよ、開催まであと73日(11日現在)に迫っていながら、「IOCが決めること」「感染症対策を行った上で安全・安心の大会にする」と従来の主張を繰り返すだけで、様々な疑問に答えず、議論を深めない政府首脳や組織委、あるいはIOCの対応が、国民のストレスを生んでいることは間違いない。

緊急事態宣言下で部活動などが中止になる中、五輪のテスト大会や聖火リレーだけは粛々と進む現状に、アスリートもひとりの国民として複雑な思いを抱えていることは容易に想像がつく。アスリートファーストをうたうのであれば、彼らの精神的負担を軽くしてあげることも政府や組織委の仕事だろう。

このコロナ禍でどうやって開催するのか、あるいは開催断念の指標はどこなのか、日本の主催者レベルは、具体的なプランを説明する時に来ているはずだ。

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文・SPREAD編集部


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