■パナソニック戦で光った細かな戦術
―パナソニック戦は雨、風が強いタフなコンディションになりました。
あのような条件下では、ロースコアの試合になることが分かっています。トライはどちらも1つか2つしか取れないと予想していました。そうなると、より反則をしないことが大切になります。できるだけ敵陣で戦うのもセオリーです。ボールを持っているとミスをおかしやすいので、わざと相手にボールを持たせるという戦術もあります。相手陣でボールを持たせれば、PGのチャンスを得られる可能性が高くなりますからね。
ディフェンスの規律を高めて、コミュニケーションもより密にする必要が出てきます。人の距離を狭くしたり、ラインを深めにするなどの微調整も大切です。ウイングとしては、大外で待っているだけではボールタッチが減るので、意識的にスクラムハーフの近くや密集サイドで張るようにしました。
僕は神戸製鋼に入って、まだ一度もパナソニックに勝ったことがないんですよ。引き分けでも2位通過が決まることは分かっていたので、最後は蹴り出して試合を終わらせましたが、個人的にはプレーを継続して、何としても勝ちたかったですね。
■メンバーバランスの良さが目立つ神戸製鋼
―NTTドコモ戦は接戦の末、劇的な逆転勝ちでした。
あの試合のドコモはキックオフから80分間、プレッシャーをかけ続けてきました。とてもキツい試合でした。チームとして勝ち切れたことはとてもよかったんですが、僕自身のパフォーマンスはよくなかったですね。最初のボールタッチでTJペレナラと1対1になって、味方のサポートが3、4人あったのに勝負して、最終的にはノックオンで終わってしまいました。パスしていればトライというシーンでした。どう修正するかは難しいんですけど、結局、試合を通して判断ミスが多くなって、次の試合はメンバーから外されてしまいました。
83分の松岡賢太の逆転トライで勝ったわけですが、あのときぼくもラックの真後ろにいて、左右どこかがあいたら、ボールをもらってやろうと構えていたんですよ。そうしたら、誰も予想しないタイミングで松岡が飛び出して。試合後に「すごかったな」って声をかけたら、「いや、目の前がポッカリあいたんで」って言ってました(笑)。
―神戸製鋼は若手も台頭して、ベテラン、外国人選手とメンバーのバランスがいいですね。
僕自身7年目のシーズンで、実感はないんですけど、もう中堅に差しかかっているんですよね。そのなかで松岡や李承信などの若手が出てきて、どんどん発言しています。みんながリーダーシップを取ろうとしているのは、すごくいいことだと思います。ぼくもチームの中では、積極的に若手とコミュニケーションを取っています。
神戸の外国人選手は、一言でいうと、みんないい人です(笑)。どんなビッグネームでも、チームにフィットしようと努力しているのがよく分かります。レタリック選手にしても、あれだけレベルが高いのに、日本選手をリスペクトしてくれますからね。本当に刺激になります。
◆神戸製鋼・山下楽平が語る「ウイング論」 紙一重の判断に求められる戦術とマインドとは
◆競技愛が導いたプロ選手への道 山下楽平が見据えるラグビー界の今後と普及への思い「恩返しをしたい」
◆パナソニックの優勝で幕を閉じたトップリーグ 日本人の若手スター候補も続々と登場
著者プロフィール
牧野森太郎●フリーライター
ライフスタイル誌、アウトドア誌の編集長を経て、執筆活動を続ける。キャンピングカーでアメリカの国立公園を訪ねるのがライフワーク。著書に「アメリカ国立公園 絶景・大自然の旅」「森の聖人 ソローとミューアの言葉 自分自身を生きるには」(ともに産業編集センター)がある。デルタ航空機内誌「sky」に掲載された「カリフォルニア・ロングトレイル」が、2020年「カリフォルニア・メディア・アンバサダー大賞 スポーツ部門」の最優秀賞を受賞。










